第68話 仕入れ






「シルフィ声を」


「ええ。シルフ、コウの声をフィールド全体にお願い! 」


「……あーあー草原フィールドにいる国際救済連合に告ぐ! こちらLight mare CO. LTD.方舟支社 不動産部仕入れ課の佐藤 光希だ。これよりこのフィールドは我が社が占有する。国際救済連合軍は直ちに退出せよ。一時間やる。一時間後にこのフィールドに残っている者は全員敵とみなす。蘭! 」


「はい!……『 隕石落下メテオ』……『隕石落下メテオ』……『隕石落下メテオ』 」


ヒュゥゥゥゥ


ドーン ドーン ドーン


「これは警告だ。無駄死にしたくなかったら即刻退出しろ」


「うひゃーー! 三連発とか凄いな! 」


「す、凄い……あれが最上級火魔法のメテオ……」


「玲さん凄いでしょ? 私も同じ火魔法使いとしていつかあの魔法を手に入れたいわ」


「お? 一斉に撤退していくな。それじゃあ各自装備とアイテムの最終チェックをしてくれ! 誘導係は魔誘香をいくら使っても構わないからな? 今回は皆のレベリングをしつつ、迅速に攻略するのが目的だ。日帰りで2フィールド攻略するぞ! 」


「「「「「 はっ! 」」」」」


「「「「「ハッ! 」」」」」


「「「へい! サトウさん! 」」」


「「「「「は、はい! 」」」」」


うんうん、みんな気合い入ってるな。ホビットたちだけは不安そうだけど。


今日俺たちは拠点にいる全員を連れて中世界草原フィールドへやってきている。

三日前に会社設立の申請をしたら、どういうわけか役人やら政府やらがやたら協力的であっという間に会社登記が済んでしまった。しかも大島の住所で登記しようと思ってたのに、ニューワールド日本国東京都霞ヶ関うんぬんっていう聞いたこともない住所で登記されていた。

恐らく方舟の土地の名前なんだろうけど、建物も事務所もないのに登記が完了って……しかも不動産業をやる資格もなんだか特例で免除してくれたりと至れり尽くせりだった。まあ日本国内の土地や建物を扱うわけじゃないからな。資格がなくても迷惑は掛けないだろう。


しかしここまで政府が積極的に関与するって事は、これは日本政府が他国からの防波堤になってくれるということか? さすがにそれは悪いと思うけど、そこまでして俺たちに恩返しをしたいのならさせておくかな。相当各国から叩かれると思うけど。


そういう訳で無事登記が済んだので、不動産業をやるにはまず仕入れだろと思い拠点の全員を連れて攻略フィールドへやってきたというわけだ。

ドワーフたちやホビットたちがいるのは魔力関係のランクを上げるためだ。以前に女神の島で全員Cランクにはしたが、ランクが上がれば魔力量も上がる。つまりより多くの装備やポーションを作れるからな。スクロールをありったけ持たせて結界を二重に張り、固定砲台になってもらうつもりだ。

マリーたちは念のための護衛としてホビットたちに張り付いている。オートマタはランクが上がらないのが残念だよ。


「準備はいいな。それじゃあ誘導係は出発! 全方向から一斉に誘導してきても構わない! 交代で絶え間なく魔物を連れてきてくれ! その他の者はハマーに乗り込め! 中央付近まで移動する! 」


「「「「「はっ! 」」」」」


「ニーチェ大丈夫だって! コウキが守ってくれるんだからさ! 久々にスクロール撃ちまくろうぜ! 」


「……イスラ……私は心配してない。ランクを上げてもっと光希様のお役に立ちたいだけ」


イスラもニーチェも大丈夫そうだな。リアラの塔と違ってここでは本当に死んでしまうからな。防具は良い革鎧を用意して着せたが、ニーチェは革鎧に着られてる感じでものすっごく歩きにくそうだ。これは手伝ってやらないと。


「ニーチェ、歩きにくそうだな。本当はローブだけでも大丈夫なんだが念のためだ。よし! 俺がハマーまで抱っこしていってやろう」


「あっ! ……こ、光希様……あっ……そ、そこは……みんなが……恥ずかしい……」


「お尻をしっかり支えないと落ちちゃうからな。うんうん、ニーチェのお尻は小さくて柔らかくて可愛いなぁ」


俺はニーチェを抱っこして、両手でお尻を揉みしだきながらハマーのある場所まで大回りして向かった。


「あーー! いーなーいーなー! ニーチェいーなー! 」


「なんだ? イスラも抱っこして欲しいのか? 」


「え? あ、いや……オレは……あひゃっ! ちょ、こ、コウキ……尻をそんなに強く……んっ……」


「おお〜イスラのお尻は意外と大きいんだな。これは安産型だな。うんうん、二人ともいいお尻だ」


俺は左腕にニーチェ、右腕にイスラと抱き抱えながら二人のささやかな胸に顔を埋め尻を揉みしだいた。

二人ともちっこいのになかなかどうして……イスラよりニーチェの胸の方が大きいな。うんうん、ロリもなかなかいいな。


「ダーリン、みんな乗り込んだわよ? セクハラしてないで早く乗って」


「セクハラじゃないスキンシップだ。セクハラってのは嫌がる相手にやるもんだ。二人とも嫌じゃないよな? 」


「……は、はい」


「あっ……そ、そこはお尻じゃな……フゥフゥ……」


「イスラとニーチェの顔が真っ赤じゃない! 女の子で遊ばないの! 早く乗ってよもうっ! 」


ちょっと大回りし過ぎたか。蘭たちは既にもう乗り込んでいるようで、助手席に座る予定の凛が早く魔法をぶっ放したいのかおかんむりだ。


「へーい……凛に怒られちゃったから乗ろうか。二人ともリラックスしてな。必ず俺が守るから」


「……嬉しい……はい……光希様……」


「うん……ま、守ってくれよな……」


俺は顔を真っ赤にしてうつむく二人をハマーの後部ドアに展開した魔導テントの中に入れた。


「もうっ! 隙あらばセクハラしてるんだから! 」


「ははは、助手席は凛が座るんだろ? それじゃあ凛のお尻を揉みながら運転するかな」


「もうっ! ダーリンはホントえっちなんだから! 」


そう言って凛は白竜の革鎧の腰当てを外してスカート姿になった。

おっけーってことね。


「腰当てがあるとシートに座りにくいのよ」


「うんうん、そうだよね。わかるよ。さあ、乗ろうか! 」


「あんっ! もうっ! 急に急ぎ出して……えっち」


俺は凛のお尻に手を当てながら助手席のドアを開けて座らせ、運転席に移動してハマーを出発させた。

そして運転しながら凛を招き寄せ、そのお尻を思う存分揉みしだいた。途中興奮して凛を膝枕してあげながら揉んだりしてとても楽しい時間を過ごせた。

単調で代わり映えしない景色でもこれなら退屈しないよね。




それから小一時間ほど車を走らせ、そこそこ大きな川の手前で車を止めて皆を降ろした。

俺は地形操作の魔法で腰ほどの高さの壁を三方向に等間隔に築き、防衛陣地を構築してドワーフとホビットを一ヶ所にまとめた。そしてそれぞれが持つ結界のブレスレットを発動させ、俺と蘭で二重の女神の護りを展開した。

これで例え万単位の魔物が来ても大丈夫だろう。


「マリー! ドワーフとホビットたちのスクロールが無くなったら補充してやってくれ! 魔力回復薬も頼む! 」


「了解です、マスター」


「神崎は凛から、夏美さんは夏海から離れるなよ? 」


「「はい! 」」


「それじゃあもうすぐ魔物の群れが来る! アイテムの使用をケチるな! 今回の仕入れ兼社員研修ではCランクの者はBランクに、Bランクの者はAランクになるのが目標だ! 経験値を得るために十分引きつけてから魔法は撃つように! 」


「「「「「 はっ! 」」」」」


「「「「「 ハッ! 」」」」」


「「「おうよ! 」」」


「「「「「はい! 」」」」」


ニーチェと母親のキリルは気合い入ってるのに父親のヨセフは震えてるな。女は強しだな。

俺が手に持つスクロールを開いては閉じを繰り返し、落ちつかない様子のホビットの男たちと女性陣を比べていると探知に反応があった。

これは初っ端から大量に来たな。直前まで国際救済軍がいたからフィールドには魔物が多そうだ。


「西からオーク800! 東から黒狼700! 北から夜魔切鳥500!たかが20倍の数だ! 返り討ちにしてやれ! 」


「「「「「はっ! 」」」」」


「「「ひえっ! 」」」


「蘭、シルフィ、セルシア! ホビットたちを空から守れ! 夜魔切鳥から来るぞ! 」


「「「はい! 」」」


俺は蘭たちを空に上げると、北からやって来るグリフォンを猛追する黒死鳥率がいる群れを見据えた。そしてグリフォンが頭上を通り過ぎたタイミングで号令を掛けた。


「スクロール隊撃てーー! 」


「「スクロール 『天雷』」 」


「「スクロール『竜巻刃』 」」


「 「スクロール『火龍爪』 」」


俺が射程に入った黒死鳥の群れを攻撃するよう号令を掛けると、ドワーフとホビット計9名が構えるスクロールから一斉に魔法が放たれた。


「撃ち方やめー! 『プレッシャー』 掃討しろ! 」


「「「「「はっ! 」」」」」


スクロールの魔法で半分近くの夜魔切鳥は殲滅したが、どうしてもスクロールだと狙いが甘くなるので撃ち漏らしが大量に出てしまう。まあそこは俺の魔法で地上に落とせばヌルゲーとなる。俺はダークエルフたちに指示をし、地上に落ちてのたうち回る黒死鳥と夜魔切鳥を処分させた。


「続けて西からオークと東から黒狼が同時に来るぞ! スクロール隊はオークを! 凛たちほか魔法担当とリムたちは黒狼を! 」


「「「「「 はい! 」」」」」


「「「「「ハッ! 」」」」」


「わかったわ! 玲さん派手に行くわよ! 」


「はい! 」


「夏美、私たちも剣に付与された魔法を撃つわよ」


「ええ、光希さんに新たに頂いたこのミスリルの刀に恥じない戦いをしてみせるわ! 」




「来たぞ! 魔法隊は黒狼を各自の判断で撃て! スクロール隊はもう少し引きつけてからだ! 」


「シルフ! 黒狼の足を止めて! 『シルフの暴風』 」


「うふふ、シル姉さんありがとうございます。行きます! 『豪炎』 」


「あら、狙いやすくなったわね。それなら私はあの大きい亜種をもらうわ! 『火龍爪』 」


「私も続きます!『炎槍』 」


「夏美! いくわよ! 天津青雷刀よ……異形の者へ神の裁きを! 絶無『天雷』 」


「ええ! 雷刀白鷺……舞え! 『雷鳥』 」


くっ…………二人に増えた……よせっ! 夏美! そこは見習わなくていいんだ!


「コウ! オークが射程に入ったわよ? 」


「おっと! 足を止める! その後にスクロール隊は魔法を放て! 『プレッシャー』 」


いかんいかん。厨二戦士二人の破壊力にトラウマを刺激されて軽くダメージを受けてしまった。落ち着け俺。ああなることはわかっていたはずだ。

俺はシルフィに言われとっくに射程に入っていたオークにプレッシャーを放ち、地面に張り付けた後にドワーフとホビットに攻撃するように指示した。


「「「行きます! スクロール 『天雷』」 」」


「「「スクロール 『豪炎』 」」」


「「「スクロール 『空気圧壊』 」」」


スクロール隊が放った魔法はオークの群れのあちこちに命中し、半分ほどを削った。

俺はダークエルフとサキュバスたちに掃討に行かせ、凛たちが相手をしている黒狼は放置した。

あっちは大丈夫だろう。夏美と夏海に蘭が掃討を始めてるしな。

さて、次はオーガとバイコーンの群れか。余裕だな。



こうして俺たちLight mare CO. LTD. 不動産部の仕入れが始まったのだった。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る