第81話 堕天使
支配の門の扉を開け中に入るとそこには草原が広がっていた。
ふと入ってきた扉があった場所をみると既にその存在は消えており、この試練は攻略するか死ぬまで出ることができないタイプのものだということがわかった。
「やっぱりな。一応試しておくか『エスケープ』…………駄目か……という事は方舟のフィールドとは違う異界か」
雷神や女神が作った系のダンジョンと同じだな。
破壊神が作ったダンジョンはボス部屋から出れるのに、創造神や雷神や女神が作ったダンジョンは脱出不能とか……
破壊神の方が良心的な事実。
ああ、リアラの塔は死ななかったな。もしかしてリアラってかなり良い女神だったとか? 何もしない女神だと思っていたが、アマテラス様から聞いた地上へ干渉できないことや、創造神による罰や並行世界の存在を知った今はリアラってかなりよくやってくれてるんじゃないかと思えてしまう。
戻ったら凛たちを連れて賢者の塔を再攻略でもして、感謝の気持ちでも天使とクリスタルに伝えとこうかな。
「お? 突然現れたな。オーガキングか」
俺がリアラに対しての評価を上げていると、100mほど離れた先にオーガキングが現れた。
「一体だけか? 『雷矢』 」
《 ウガァァ! 》
「うおっ! いきなり山岳に変わった! しかもドロップ無しかよ! 」
俺がオーガキングを瞬殺すると同時に、辺りの風景が草原から山岳へと突然変わった。
そしてまた100m前方に今度はアイアンゴーレムが現れた。
これはランダムで現れる小世界のボスを1対1で倒していけってことか?
「そういうことか。なら全部倒せばいいんだなっと! 『プレッシャー』 」
俺はアイアンゴーレムに対してプレッシャーを放ちサクッとスクラップにした。
すると今度は海のフィールドとなり俺は橋の上に立っていた。そして現れたクラーケンを天雷で倒すと今度は森のフィールドとなり、そこで現れたのは中世界フィールドのボスの
《 ヒョーヒョー 》
「ん? 小世界モードはもう終わりか? なら……『プレッシャー』 『雷竜牙』 」
《 グヒョー…… 》
「はいはい、次は砂漠ね。雑魚雑魚 うりゃ! 」
100m先に現れるのはいいんだけど、鵺にしてもこと地獄蜘蛛にしても現れるタイミングがわかっていれば何もさせずに倒せる。創造神と話すことがあれば現れる場所をせめてランダムにするように進言しておこう。
《 ギギッ!? 》
「ハイハイ次はまた砂漠ね。で、デビルスコーピオンってことは大世界ボスか……だから近いんだよな〜『プレッシャー』 『轟雷』 はい終了〜…………ん? 次は? 終わり? ならこの強い気配の持ち主はいつ現れるんだ? 」
どうやら小世界、中世界、大世界と3.2.1体とボスを倒す試練らしい。確かに普通のSランク戦士だと、中世界辺りで力尽きてる可能性があるから試練としては妥当かもしれないが……俺にはヌルゲー過ぎる。
それにこの気配の持ち主は現れないのか?
俺がデビルスコーピオンを倒しても周囲が次のフィールドに変化もしなければ新たな魔物も現れないことを疑問に思っていると、砂漠だった空間が突然変化して何もない金色の壁に包まれた空間へと変わった。
「うおっ! びっくりした! 」
突然周囲が金色の空間になったことに驚いていると、目の前に金色の台座とその上に金色の石板が現れた。
「なんという落ち着かない空間……それにこの悪趣味な金色の石板……つまり全てのボスを倒したから合格ってことか? これなら光一でも攻略できたな……まあこれで終わりって訳じゃないだろうけど」
この空間全体から感じる強い気配の答えがまだなんだよな。この金色の空間では探知が無効化されていてさっぱりわからない。とりあえず石板に触れてみるか。
俺はどこにいるかはわからないが、強い気配を発する存在を警戒しつつも石板に手を当てた。
「ああ、これで方舟の支配者になれたのか。ん〜まあ寿命で死ねば権利が無くなるんだし妥当と言えば妥当な難易度かな? 」
なるほど、やっぱり支配者というのは管理者の上位互換だな。未攻略のフィールドはいじれないが、攻略済みのフィールドなら誰が管理者であろうが条件を上書きできる。しかも支配者が設定した条件は管理者では変更できない。まさに支配者だな。生きているうちだけだけど。
まあいいか、とりあえず支配者になってこの部屋に続く門はそうだな……代々木の資源フィールド内と方舟の特別エリアでいいか。設定っと……次は……
「あ〜そういうことね。神の権能が欲しいならもう一戦戦えと? それがこの気配の主か……」
俺が門の支配の設置の設定をし終えると、脳裏に支配者になった者だけが受けることのできる試練がある。それを受けるか? という問いかけが浮かんだ。
俺は最初に門の前にあった石板で言っていた、望むなら神の権能の一部を手に入れることができるという内容を思い出し、それがこのことなのだと理解した。
「というかそれが目的だし当然YES! 」
俺が脳裏でYESと答えるとまた周囲の景色が変わり、今度は星一つない闇に包まれた景色となった。
俺は暗視の魔法を直ぐに掛け、探知で周囲を警戒した。
結構広いな……魔物やボスらしき反応は無しか。
俺は飛翔の魔法で上空へと飛び周囲を見渡した。
眼下には数多くの山々があり、そのどの山も噴火中らしくマグマが俺がいた場所の直ぐ側まで流れこんでいた。
「う〜ん……ここは地獄か? 」
俺が大量のマグマが至る所で流れている地上を見てまるで地獄のようだと思っていると、俺が飛んでいるさらに上空に突然大きな魔力が現れた。
「ラスボスか! このフィールドじゃ天使や聖獣じゃなさそうだがどんなのがラスボ……ってなんだありゃ? 」
俺が魔力反応があった上空を見上げると、そこには8枚の黒い翼を広げ額から角を生やした上半身裸の男が、雷を纏った槍を持ち俺を見下ろしていた。
俺は初めて見る存在にすぐさま鑑定を掛けてその能力を確認した。
ルシファー
種族:堕天使
体力:SS
神力:SSS
物攻撃:SS
神攻撃:SSS
物防御:SS
魔防御:SS
素早さ:SS
器用さ:SS
種族魔法: 神罰
ぶっ! 魔王クラスじゃねーか! ルシファーって何個か前の古代文明時に現れた魔王だろ!? 確か最上位の
『神罰』
「おわっ! いきなり攻撃かよ! 『雷鳥』」
俺が鑑定結果を見て驚いていると突然雷を纏った数十の槍が飛んできた。
それを俺は3体の雷鳥を操作し全ての雷槍を相殺した。
ルシファーはその結果を見ても眉ひとつ動かさず俺を見下ろしていた。
「おいっ! ルシファー! お前は肉入りか? 」
『…………』
「肉無しか。まあいいや、せめて魔石は落としていってくれよ? SSSランクの魔石なんてそうそう手に入らないからな。『天雷』 」
どうやら賢者の塔のセラフィムと同じくアバターっぽいな。まあ一度滅んでるからな。確か勇者を2人倒してるんだよなコイツ。勇者と相性の良い何かがあるのかね?
俺はまずは小手調べとして天雷を放ってみた。
『神盾』
「あ〜そうですか。結界持ちね。なら肉弾戦でいくかな『転移』 おらっ! 」
なるほどね。このランクで結界持ちとかこりゃやり難いわ。
天雷を弾かれた俺は聖剣を抜いて転移で間合いを詰め、飛翔しつつ斬りつけた。
『神罰』
「くっ……『転移』 」
しかし突然頭上に雷が降り注ぎ、俺は一旦後方へ退くことになってしまった。
まあでも収穫はあった。あの神盾ってやつは魔法のみ防ぐ結界だな。剣は素通りしたからな。
それにしても……
「こりゃ転移持ちじゃないとキツイ相手だな。それに空中戦だと不利だ。ちょっと顔貸してもらうぞ? 堕ちろ! 鳥人間! 『プレッシャー』 」
『!? 』
パリーン
「女神の護りクラスの耐久か……神盾なんていう名前の割には大したことないんだな」
俺が魔力を大量に込めたプレッシャーを放つとルシファーは自らの結界に押され地上へ落ちていき、地上に着地した後に俺の魔法に耐えられなくなった結界が弾けた。
そしてそのままルシファーはプレッシャーの圧力を受け、片膝を地面に付けて耐えていた。
『……神罰』
「ギア上げていくぞ!? 『女神の護り』 『スロー』 『ヘイスト』『転移』 魔石置いてけっ! 」
ルシファーはプレッシャーに耐えつつ、千にも及ぶ雷槍を頭上に発動し俺へと一斉に斉射した。
俺はプレッシャーを解除して結界を張り、雷槍を受けつつ立て続けに補助魔法を発動した。
そして雷槍により結界が破られる寸前にルシファーの背後へ転移をし、そのまま斬りつけ翼の片翼を斬り飛ばした。
「!? 『神罰』」
「くっ……そんなのもできるのかよ。まあいいや、これでもう飛べないだろ」
俺がルシファーの左側の翼4枚を斬り飛ばすと同時に、突然足元から黒い炎が吹き出した。そのおかげで剥き出しになったルシファーの背に剣を突き刺すことができなかった。
『神罰』
「次は剣山かよ! 『転移』」
『神盾』
「無駄無駄無駄ー! 全力『プレッシャー』 念のために『聖影縛り』 」
パリーン
『!? 』
俺は足元から突き出す無数の槍を斬り飛ばしながら転移で距離を取り、結界を張るルシファーに構わず全力のプレッシャーを放ち結界を破壊してルシファーを地面に縫い付けた。そして念のために聖剣を通して影縛りを発動し、地面から湧き出る無数の光の手でルシファーを拘束した。
「いやぁこの古代人が作った魔法凄いわ。ゴーストには効かないけどな。んじゃ、まあまあ楽しかったよ。創造神には難易度高すぎだと伝えておいてくれな」
地面にキスをしながら身動きの取れないルシファーに俺はそう言って聖剣を掲げ、魔力を極限まで込めた魔法を聖剣へと流した。
『…………神……盾……』
「残念、お前じゃ力不足だ。勇者によってまた討たれろ! 『雷龍円殺陣』 」
ルシファーが苦し紛れに張った結界を無視し、俺は聖剣に込めた魔法を放った。
聖剣を通して現れた三体の雷龍は、地に伏せるルシファーを囲んだ後に一斉に襲い掛かった。
『………………』
ルシファーが展開した結界は呆気なく破られ、その身を三体の雷龍の顎門に咥えられ燃やされ、そして消滅していった。
ルシファーがいた場所には深く抉れた地面の中心に、灰色の魔石が残されていた。
「くぅ〜キツッ!プレッシャーと影縛り維持しながらだと三体が限界か……もっと練習しないと駄目だな。五体は出せるようになりたいな。お? 魔石ゲット! って灰色!? 無属性ってことか? 黒の闇属性を期待したんだけどな。これじゃ魔力を取り出す以外使い道ないな。四属性の方がよほど汎用性があるという……」
天使の聖属性やその他の無属性の魔石は、今のところ魔力をエネルギーとして取り出す以外は使い道がない。
四属性は研究が進んでいてそのまま魔道具に使えるんだけどな。闇属性は俺の魔法と相性がいいから色々使い道があるし。
まあなんにせよSSSランクの魔石だ。これ一つで最上級ダンジョンのコアを超える魔力がある。
これがあればウッカリまた異世界に召喚されても、送還陣を聞き出してから召喚した奴らを皆殺しにして帰ってこれる。保険として持っておくと安心だ。
「眩しい! また金色の部屋かよ……ん? 扉? ああ、クリスタル部屋か」
俺がSSSランクの魔石を手に取り色々と考えていると、溶岩が側を流れていたフィールドがまた金色の部屋へと変わっていった。
しかし先程と違いそこには台座も石板も無く、代わりに金色の壁に銀でできた扉が現れていた。
俺は恐らくクリスタル部屋に繋がっている扉だの思い、その扉へと歩いていった。
さて、神の権能の一部だっけか? どんな魔法が手に入るか楽しみだな!
透視の魔法とか千里眼的な魔法とかだったらいいな。毎日を幸せに過ごせそうだ。
俺は誰も知らない新たな魔法がどんなものなのか、煩悩全開で期待するのだった。
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