第82話 新たな魔法
「人の手? それに小石に魔物? なんだこりゃ? 」
俺は金色の空間に突如現れた銀の扉の前に立ち、扉に彫られている絵を見ていた。
そこには天から二本の人の手が地上にいる者を包み込もうとしており、地上には多くの石が転がっていてその隣にゴブリンやオーク、狼系の魔物にハーピーやラミアが天を見上げて立っていた。
「この中に範囲攻撃系の魔法か何かがあると示唆しているのか? まあ入ってみればわかるか」
何かを示唆しているような扉の絵だったが、サッパリわからないのでそのまま銀の扉を押し開いた。
そして扉の中に入ってみるとそこは方舟の
ぽいと思ったのはその部屋の3面には大きな窓があり、そこから方舟の外が見えてはいたがそこには船を操縦する操舵や計器が無く、中央に2mほどの金色のクリスタルがあるだけだったからだ。
あの面舵いっぱーいとか言ってクルクル回す操舵ってやつか? あれがあれば操縦室と呼べるんだけどな。
中央のクリスタルはまあ賢者の塔と同じだろ。
俺はそう思い初めて見る金色のクリスタルに手を当てた。
「ぐっ……ちょ、待て……一気に……ちょっ! ぐうぅぅ……」
俺がクリスタルに手を当てると一気に魔法とその情報が頭の中に入ってきた。そして頭の中を焼くような熱さと痛みが襲った。俺は堪らずその場に膝をつきじっと耐えるしかなかった。
だって手が離れないんだよ!
「くっ……ハァハァハァ……おわ……り? うっ……痛てえ……なんて雑な……ヴリエーミアやリアラの優しさが身に染みる……」
訳もわからず一気に魔法と知識を詰め込まれたことで俺はかなり疲弊していた。
ヴリエーミアやリアラはゆっくりと時間を掛けて魔法をくれたってのに……創造神はせっかちなのか?
それにしても頭の中がグチャグチャで入ってきた知識を整理する余裕がないな。
俺はクリスタルから離れ窓のところまでフラつきながらも辿り着き、そこで窓に背を預ける形で座り込んだ。そしてアイテムボックスから蘭が淹れてくれたコーヒーが入っている水筒を取り出し、カップに注ぎひと休みすることにした。
「ふう……蘭の淹れてくれたコーヒーは美味いな。あ〜頭痛え……ルシファーと戦った時よりダメージ受けるとかどんだけだよ……」
コーヒーを飲みながら俺にダメージを与えたクリスタルから目を背け、横の窓から見える景色を眺めていた。すると眼下に見覚えのある大陸があった。
「ん? 中華大陸の上あたりか?あちこちで爆発してるのは内戦中かな? 確か三つの国ができたんだったな。方舟が攻略されて自分たちではもう手が届かないから、元々持っている残ったパイを奪い合ってるのか」
確か南朝鮮と一緒に国際救済連合へ加盟したいって言ってた国もあったようだけど、ロシア以上に信用できないから断られたんだよな。価値観がかけ離れてるから数十年して落ち着いたら裏切りそうだしな。
光一に言って孤児の子供だけでも回収させに行かせるか……
「ふう……落ち着いた。さて、どんな権能? 魔法? まあどっちでもいいが確認してみるか」
俺は頭痛も治まり少し落ち着いたので、早速得た情報を少しづつ思い出しながら整理することにした。
「『魔創造』? ラノベとかである創造魔法ってやつか? いや、なんか違う……魔石の持ち主を復活させる魔法か……元の能力よりランクが落ちるし、魔石の魔力が無くなったら消滅する? 代わりにその魔物は絶対服従するのか……ん? 熟練度とイメージによっては多少能力を変えられるのか……これは凄いな。確かに創造と言えば創造だ」
どうやら創造神の創造魔法の超劣化版のようだ。この魔創造のほかにも空間創造とか物質創造とか色々あるらしい。確かに権能の一部だな。
結局のところこの魔法は、魔石があれば魔物を創り出すことができるという魔法だ。
創り出す条件やルールはまとめるとこんな感じかな?
・魔石を持っていた魔物しか創造できない
・創り出された魔物は仮初めの命を得る
・魔石の魔力が無くなれば消滅する
・創り出された魔物は元の能力より1ランク劣る
・創り出された魔物は術者に絶対服従する
・イメージによって多少能力の変更ができる
・熟練度が上がれば魔物を変質させることができる
まずゴブリンから得た魔石からはゴブリンしか創造できない。しかも能力は元のゴブリンより劣る。うん、超絶雑魚だな、使い道が無い。でも仮初めの命があるなら経験値は得られるから子供の訓練用かな。
んで魔物は俺に絶対服従する……これはリムが歓喜しそうだな。また魔王となって世界征服をとか言い出しそうだ。夏美を連れてきた時に先に帰らせておいて正解だったな。
気になるのはイメージによっての能力変更だ。大気から魔力を吸収できるようにイメージすれば長持ちするのかね? 要は実験が必要だな。そして熟練度が上がれば魔物を変質させることができるってのはなんだ? 亜種を創り出せる? 体格を大きくできるとかそんなもんかね?
う〜ん……微妙な魔法だ。物質創造の方が俺としては欲しかったな。魔道具造りまくれるからな。なんかの漫画みたいに剣を次々と生み出して戦うのもカッコイイよな。
魔物かぁ……魔王がこの魔法を手に入れたら嬉しいだろうな。少ない魔力で一度死んだ配下の魔物を復活させられるとなれば軍団を作るにはいいよな。能力は劣化するが、実質戦力は1.5倍になる。
しかし俺には不要……ん? 使い道があったな。これ過去に討伐した竜とかグリフォンとかいくらでも復活させられるな。ランクが落ちても元が高いから十分使い物になるんじゃないか?
SSランクの魔石はもったいないから使わないけど、Sランクのだったら蘭が大量に整理して持ってるしな。
なんかますます世界征服をとか言われそうだけど、竜は足として便利だしちょっと練習するか。
「紋章魔法ほど嬉しくはないけどこれはこれでアリかな。よっこらせっと、とりあえず帰ったら練習してみるか。というか出口はどこだ? 入ってきた扉から出ればいいのか? 」
俺は魔創造魔法のだいたいの能力を把握したところで立ち上がり、心配しているであろう恋人たちの元へ帰ることにした。
とりあえず出口らしき物も魔法陣も無いので、入ってきた扉を開けて外に出ることにした。
「んじゃ、創造神さん魔法をありがとな。もう来ることもないし来たくもないから女神たちに俺を呼ばないように言っておいてよ。せっかくの罰を邪魔したら悪いしね。フリじゃないからな? 本当にもう呼ばないように言っておいてくれよ? 」
俺は創造神が聞いてないことを承知で、それでも切実に訴えたかったのでクリスタルに向かって願いを伝え、扉を開けて操舵室から出た。
「ダーリン! おかえり! 早かったわね」
「主様! お帰りなさいませ」
「コウお帰りなさい。さすが勇者よね。2時間も待ってないわよ? 」
「旦那さま! あたしは信じて旦那さまの帰りを待ってたぞ! 」
「光希、皆信じてましたが心配もしてました。無事でよかったです」
「光希! あの強力な圧力を持つやつを倒したのか!? やっぱスゲーな! 」
「私たちじゃ束になっても敵いそうもなかったのに、光希さんは流石ですね」
「教官ですからね。圧勝してくると思ってました」
「んお!? いきなり外に繋がってたのか! みんなただいま。魔王クラスがいてさ、まあそこそこ強かったよ」
「「「「「 ま、魔王!? 」」」」」
「ほらっ! SSSランクの魔石。ルシファーってやつがラスボスだったよ」
俺は驚く皆にこの支配の門のシステムを説明した。
「なるほどね。各世界のボスと連戦かぁ……ん〜できなくもない……かな? 」
「そうね、ギリギリいけそうね。でもそのルシファーは無理ね」
「旦那さまはまた魔王を倒したのか!? すげー! あたしの旦那さますげー! 」
「まさかこんな所に魔王がいるとは……それなのにこの短時間で倒して戻ってきた光希が誇らしいです。さすが私の勇者様です」
「う〜……やっぱり蘭も戦いたかったです。きっと全力を出せました」
「そうだな。蘭なら勝てたかもな。でも蘭を一人で行かせるなんて俺が耐えられないんだ。その代わり蘭好みの魔法を手に入れたぞ? 」
「蘭の好みの魔法ですか? 」
「そうだ。なんと魔石から魔物を創れちゃう魔法だ! 」
「魔石からですか!? な、なんでも創れるのですか? 」
「その魔石の元の持ち主だけだ。あ〜先に言っておくがSSの魔石は駄目たろからな? 古代竜とか復活はさせないからな? 」
「ええー!? シル姉さんと一緒にリベンジしたかったです……」
やっぱりか。そんなもったいない使い方するかよ。能力も落ちてるんだしSSランクの魔石の無駄遣いになる。
「ダーリン、でもその魔法凄くない? 魔王軍作れちゃうじゃない。リムがまた発狂するわよ? 」
「ふふっ、勇者様の能力じゃないですよね。光希はどこを目指してるんでしょう? 」
「ふふふ、コウは勇者からどんどん離れていくわね。魔物を操る勇者とか魔王ノブナガの再来ね」
「すげー! 旦那さまは勇者なのに魔王になっちゃったよ! あたしはなんでもいいけどな! 旦那さまが魔王でもなんでも離れる気ないしな! 」
「光希が魔物使いになったって事か? まさに魔王だな」
「ちょっと待ておかしい。 魔王にはならないからな? 俺もちょっとこれは無いなとは思ってるんだ。リムは……まあ適当にあしらうよ。そんなことよりさあ、みんな帰ろう。戦闘より魔法を得る作業が疲れたよ。とっとと帰って細かいことは明日考えよう」
俺は新たな魔法に驚く皆を連れ資源フィールドから出て帰ることにした。
光一は夏美を連れてお袋に合わせるらしい。お袋も共犯だと知ったらどんな顔をするか楽しみだ。みんなして騙しやがってーって怒ったあとにお袋にボコられそうだな。
光一たちは俺に礼を言った後に3人で寄り添いながら代々木公園から去っていった。
ったく、幸せそうな顔をしやがって。
そんな3人を見送った俺は、恋人たちを連れてゲートを開き拠点へと戻ったのだった。
拠点に戻るとサキュバスもダークエルフたちも全員が出迎えてくれ、俺は方舟の完全攻略を宣言して全員に元の世界に戻れるまで休暇を与え、その日は早めに休むことにした。
かなり身体が疲れているんだよな。それだけ特殊な魔法だったんだろう。
それでも蘭とお風呂に入り天にも昇るマッサージを受け、そのあとはセルシアとシルフィと勇者の鎧を着ながらベッドで楽しんだ。
もうシルフィは興奮して獣だったね。シルフィが失神した後はモジモジするセルシアを可愛がり、蘭から教わったという様々なテクニックをお披露目してくれた。
昼間はイケイケで夜はおとなしくも献身的なこのギャップがイイ。
俺は大きな鏡を取り出してセルシアが恥ずかしがることを色々として楽しんだ。
え? 疲れてたんじゃないのかって? 男って疲れれば疲れるほど夜は元気になるもんなんだよ。
こうして俺は方舟を完全攻略し、SSSランクの魔石と特殊な魔法を入手することに成功したのだった。
ずっと出費が続いたからこれは嬉しい。
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