魔王を倒して現代に帰って来たらパラレルワールドだった!

黒江 ロフスキー

1章 横浜上級ダンジョン氾濫

第1話

 



 ――魔王城――




「いい加減これで終われよ! 雷龍円殺陣!」


  俺は残りの全魔力を聖剣に注ぎ込み、威力が増幅された極大魔法を魔王へと放った。


「グッ……ググッ……お……おのれ勇者……まだ……ま……ガァァァァァ!!」


  ふう〜やっと倒れたか、いや〜しぶとかった。


「主様お疲れ様でした」


「おうっ蘭もお疲れさん!」


  共に戦った神狐である蘭が人化した状態でその豊満な胸をゆっさゆっさと揺らし駆け寄ってきて、俺の腕をその胸に押し付けながら労いの言葉を掛けてくれた。うん、長い付き合いなだけあって分かってるな。


「主様。これでやっと元の世界に戻れますね」


「ああそうだな」


  15年前。大学からの帰宅途中に突然足元が光ったと思ったら意識を失い、気が付いたら石畳の上で倒れていた。周囲を見渡したら神官ぽい服装をした爺さんに囲まれており混乱してるうちに何だか謁見の間みたいなとこに連れていかれ、いかにも王様って格好した偉そうなおっさんに『ここは貴殿がいた世界ではない、魔王軍に侵略を受けこの国が大陸最後の国となってしまい魔王を倒さないと貴殿も我らも死ぬこととなる。魔王を倒し魔王の体内にあるSSS級の魔石があれば元の世界に帰すことができる』とかとんでもない脅迫を受け、渋々魔王討伐を了承し途中寄り道しながらも苦難の末にやっと魔王を倒すことができた。


「主様、約束通り蘭も付いていきますからね?」


「当たり前だ。これからもずっと一緒だ」


「主様……嬉しいです」


  俺がこの世界に来て2年目の時に魔獣に追いかけられていた当時火狐の子供だった蘭を助け、帰る場所が無さそうだったのでそのまま従魔契約をした。そしてレベルを上げていったらあれよあれよと進化して人化を覚えるまでになり、5歳くらいの幼女だったのが今では絶世の美女になってしまった。


  俺と契約したからか、人化した蘭の姿は長く艶のある黒髪を結いその黒い瞳は妙に色っぽく、俺よりは少し低いが170はある身長と胸元を押し広げ深い谷間を見せている豊満な胸に細い腰。そして歩く度に左右に揺れるムチっとしたお尻に、透き通るような白い肌が魔力で作られた花魁のような着物からチラチラと見える。

 

  5年前蘭に誘惑された時は鼻で笑ってやり、3年前から理性が怪しくなり2年前にとうとう……それから神狐に進化して寿命が数千年単位になってしまった蘭を独りにしないよう、時魔法の魔法書があるというこの大陸で最大の難易度の古代ダンジョンに潜った。元々魔力の高い者は老化が遅くなることもあって、俺の見た目は20代半ばほどの状態で止めている。


  寿命を延ばすために手に入れた時魔法だが、副産物というか俺が使えなかった回復魔法の代わりにもなる。死後魂が肉体から離れる前なら蘇生だってできる。どちらもかなり集中しないとできないので戦闘中の使用は難しいが、今までポーションしか回復手段が無かった俺には嬉しい魔法だ。

  まあ日本に帰ったら寿命やら戸籍やら色々問題が出てくるだろうけど、その時はどこかの無人島で蘭と2人でひっそりと暮らせばいいかなと思ってる。


  あっちの世界にもこちらの世界程では無いにしろ魔力はあるだろうしな。でなきゃ召喚拉致なんてできるはずないし、魔力があるなら魔法が使える。魔法が使えるならどうとでもなる。空間魔法があるから無人島からでも転移使って買い出しできるし、アイテムボックスには大量の金アクセサリーを用意してあるから換金すれば生活には困らないだろう。


「さて、宝物庫は来る途中で回収したし、とっとと魔王の魔石取って帰るか。大丈夫だと思うが蘭は周囲の警戒を頼む」


「はい主様」


  俺は魔王の骸から魔石を取り出した。


「これがSSS級の魔石か。四天王とか言ってた奴らの魔石よりも、これは比較にならないほど凄い魔力だ」


  パァァ


  俺が魔王の魔石を見ていると突然左手の甲に描かれている勇者の紋章と足元が光りだした。


「は? え? 魔法陣!? これは召喚……いやこの状況だと送還か!」


  「主様!」


  「やられた! 城に帰ってからだと思ってたが、召喚された時に既に送還魔法陣を組み込まれていたのか!」


  どうやら魔王の魔石クラスを手に入れたら自動で発動するように、この世界に来た時から紋章に組み込まれていたようだ。別に帰れるならいいんだけど、今まで散々扱き使っておいて魔王倒しましたハイもう用無しサヨナラとかそれは無いんじゃないか? あのクソ王国め!


「蘭! 来い! これは送還陣だ!」


「はい! 主様!」


  蘭が必死に半泣き状態で駆け寄ってきて俺に抱きつく。俺もしっかりと抱き寄せ送還が始まるのを待つ。


 パァァァァァ


  魔法陣が謁見の間全体を眩い光を発して照らすと同時に俺たちは意識を失った。



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