第22話 リスタート






「それで? 正統オーストラリアとクイーンズランドから独立した都市として各国から承認は得られたのか? 」


「ええ、それが……ニホンとアメリカだけでなくロシア・中華広東共和国・台湾・イギリス・ドイツ・インドが独立都市と認め今後は貿易をしたいと……」


「よかったじゃないか、冒険者連合加盟国の全てに承認されて。これなら次に独立国家として承認してもらう時もスムーズにいくだろう。なのになんでそんなに浮かない顔をしてんだ? 」


「い、いえ……今まで見向きもされなかった大国がなぜこれほど素直に承認してくれたのか不思議でして……」


「ああ、それは俺たちLight mareが加担したからだ」


恐らく衛星で俺が所有する竜の数を確認でもしたんだろう。魔道具に魔法付与兵器、そしてドラゴンという生体兵器を持つうちの会社に、どこも印象良くしようとしてるんだろうな。なにせオーストラリア大陸の窓口として小都市の存在を認めるだけで一銭も掛からないしな。

中華広東共和国とロシアに関しては下心が見え見えだけどな。まあ野心さえ抱かなければ本当に困った時くらいは助けてやるさ。為政者のためではなく国民のためにな。


「やはり……我々のために御尽力いただきありがとうございます。このご恩は一生忘れません」


「別に俺はなにも口添えなんてしてない。各国が勝手に深読みして動いただけだ。それでも礼を言いたいなら俺たちを動かしたキャロルさんに言うんだな。彼女が身体を張って俺たちに依頼をしに来なければここに俺はいなかった」


「正直これほどまで世界に影響のある方だとは思っておりませんでした。そうですね。キャロルにも感謝をしなければいけませんね。芯の強い良い子に育ってくれました」


「それでうちのドラゴン事業部との細かい取り決めは凛としていると思うが、今後やってくるであろう移民の受け入れはどうするんだ? 」


ロットネスト島の大掃除をしてからこの一週間ほどは、凛と夏海は精力的に働いていた。実家に連絡して早速島に皇グループの人を呼んでいたし、市長とはドラゴン輸送に関しての運賃の取り決めだけではなく、有事の際にドラゴンを防衛戦に参戦させる傭兵契約までしていた。その頃俺はロットネスト島のプライベートエリアの境界線として、壁をせっせと作っていた。あとビーチの清掃も。


まあ商売のことは俺はノータッチなので凛と夏海に任せているが、問題は今後景気が確実に悪くなる各都市から流れてくる移民対策だ。自国で直接貿易ができなくなれば、これまで港で働いていた者や船乗り、その他の既得権益者など多くの失業者が出る。国が儲かっていたことで手厚かった社会保障などそれらの恩恵も今後無くなるだろうし、仕事もかなり減るはずだ。


そうなれば今まで国から保障を受けてきた社会的弱者や失業者は、都市から離れてこのパース市へやってくるだろう。

ここなら世界と繋がっているし、仕事はこれから山ほどある。まず間違いなく港で働いていた者は真っ先にここへくる。


パース市はこれら移民を全て受け入れていかないといけない。そうしないと将来統一をした時に人口差で他の都市に喰われるからだ。他の都市との連合は論外だ。また分裂するだけだからな。

パース市を最低100万都市にしてパース市主導でオーストラリア大陸を闊歩する魔物を駆逐し、最低でもダンジョンを壁で囲わないといけない。それをして初めて統一ができるだろう。


まあ統一はまだ先だとしても、まずパース市が国家として独立をするには人口を増やしある程度国土を奪還しないと難しい。ライフラインを輸入に頼っているうちは無理だ。せめて食糧だけは自分たちで自給しなければならない。


「移民に関してはこの街ではもう受け入れ不可能ですので、南の穀倉地帯の魔物を駆逐し都市を広げようと計画しています。幸いパース市近郊にある上級ダンジョンは、ダーリントン鉱床の山のかなり先にある一つだけです。ほかは初級が2つに中級が1つですので外にいる魔物を駆逐し、壁を建設すれば居住可能エリアを広げることもできます」


「南か……」


確かに北よりは平地が多いしダンジョンも中級を一つ潰したそうだから初級しかない。しかし魔物が溜まりやすい森があるんだよな。都市の天然の防壁である川を越えて土地を確保しても、壁を作るまでに相当犠牲が出るだろうな。それは北も似たようなものか……


仕方ない。乗りかかった船だし方舟待機組もいるしな。


「市長、一週間後にうちの会社で狩りをして間引きをしておいてやる。その際に魔物の魔石以外の素材はやるから、剥ぎ取りの人員を用意してくれ」


「ほ、本当ですか!? それは食糧面でも財政面でも助かります! 防衛隊と市民をできるだけ集めます! 」


「街はうちの水竜に守らせるから安心していい 」


なんか大勢参加しそうだし、それならいっちょ魔物祭りでもやろうかな。

そうだ! 英作たちはあと一週間もすればもう夏休みに入るんじゃないか? Hero of the Dungeonは来月に魔法職と魔王を実装するから今は暇してそうだな。あのパーティメンバーの女の子の大月さんだったか? 彼女の魔力の扱いの上達度もチェックもしてやる約束だったしちょうどいいな。


この際だから米国のリチャードたちも呼び出すか。アイツらはライオネルから頑張ってると聞いていたしな。どうやら俺に言われた通り上級ダンジョンに頻繁にアタックして上級ポーションをいくつか手に入れ、うちが定期的に冒険者連合内のオークションに流している上級ポーションも買い漁ったりもしているらしい。常に金欠状態なのに楽しそうだとか言ってたな。

あれから一年か……俺の体感では方舟に行ってたから二年になるな。そろそろ解放してやるか。

女神の島で欠損した冒険者の残り人数分の上級ポーションをやると言ったら飛んでくるだろう。


それにしてもこのオーストラリア大陸は40年近く氾濫を放置してたんだ。集めれば相当な数がいそうだな。方舟ほどじゃないが良い訓練になりそうだ。

俺は喜ぶ市長に一週間後までにクイーンズランド都市連合と正統オーストラリアとの賠償交渉や貿易交渉を終わらせておくことと、交渉は強気でいくようにと念を押してから市庁舎をあとにして家へと戻った。


そしてライオネルに連絡をしてリチャードを横浜に来させるように言い、Hero of the Dungeonの受付に行って英作の母親の冬美さんに英作たちに実戦訓練をさせてやりたい旨を伝えた。

冬美さんはリアラの塔と違い死ぬ可能性があることに少し悩んでいたが、英作たちも来年卒業だからいずれ経験することだと俺が言うとよろしくお願いしますと頭を下げてくれた。

自衛隊に入隊するにしろ探索者になるにしろ、俺たちが付き添うほど安全な実戦訓練は無いことに気付いてくれたようだ。命を懸けて戦った経験があるのと無いのとじゃ大違いだからな。





そして二日後の昼頃に俺が蘭と二人で昼ご飯を食べていると、警備の宇佐美さんから俺に呼ばれたという客が来ていると連絡があった。

俺は誰も呼んでないし会う約束もしてないんだけどなと、客の名前を聞いたらよく知る人間だったので一階のラウンジに通すように伝えた。


早いよリチャード……ほぼライオネルから話を聞いてすぐ来たんじゃないか?


俺は蘭を連れて一階へと行きラウンジに入ると、そこには随分と変わり果て見すぼらしい格好のリチャードたちが立って待っていた。


「サトウさん! お久しぶりです! 」


「ミ、ミスターサトウ。ご無沙汰しておりますブリアンナです」


「……久しぶりです」


「ヒッ! ま、前にあった時よりさらに強くなってるにゃ! ば、化物が大化物になってるにゃ! 」


「ミリー! ランさんになんてこと言いやがる! あっ、ラ、ランの姐御……ご無沙汰してます」


「うふふ、虎ちゃんお久しぶりです」


俺と蘭がラウンジに入ると、リチャードを皮切りにブリアンナと確か盾の無口男のケビンだったか? それから相変わらず人を化物呼ばわりしているミリーに虎公のガイルが挨拶をしてきた。


「来るの早すぎだろお前ら……まあいい、久しぶりだな。しかし随分とまあ変わったな。装備はランクダウンしている上に補修跡だらけだし、リチャードの目とブリアンナの顔の傷にケビンだったか?かなり酷い火傷の痕だな。ガイルも耳が片方無いな。火竜と白狼……いや、お前たちの実力なら白狼王とやったか? 」


俺はやる気満々なのか装備を身につけている五人の姿をひと通り見たあとに、リチャードの左目が無いことと、ブリアンナの恐らく聖魔法のミドルヒールを使ったけど治癒しきれなかった頬の傷痕に、同じく治癒しきれず火傷の痕が残ったケビン、そして耳を欠損しているガイルに理由を予想して聞いてみた。


「ハハハ、その通りです。南アメリカからの救援依頼で街を襲う火竜に挑んで私とブリアンナとケビンがやられました。レイドを組んで挑んだんですけどね。やはりまだまだでした。白狼王にはパーティで挑みました。ガイルの耳を喰われはしましたが、これはなんとか倒すことができてなんと上級ポーションを手に入れたんですよ! 」


「いや、そんな嬉しそうに言われても……まあ火竜はまだお前たちには早かったな。女神の島でやられたばかりなのに挑むとはな。街が襲われてたなら仕方ないが……生き残れてよかったな」


「はい。追い払うのがやっとでした。いずれ必ず討伐します」


「次は負けないわ」


「……ブリアンナは俺が守る」


「ケビン……」


「にゃー! また二人の世界に入ってるにゃ! 婚約したからっていちゃいちゃし過ぎにゃ! 」


「チッ! 」


え? マジ? ケビンてブリアンナを守るとしか喋ってなかったけど、報われた感じ? 無口で一途な男が報われるとかそんなことあんの? 勇者パーティのテンプレらしく、てっきりブリアンナはリチャードとくっつくと思ってたよ。


「そうか、しかしその装備じゃ次も負けるだろう。ライオネルからかなり頻繁に上級ダンジョンに潜ってると聞いていたが、それならパーティで割っても年収は億近くはあるだろ? 上級ポーションを買い漁ってるのは聞いているが、装備のグレードまで落としたら本末転倒になるんじゃないか? 」


「ええ、おっしゃる通りです。ですがこの一年で13人の欠損を治して謝罪して許してもらえました。その度に心が軽くなっていって……そのうえ女神の島の件で私たちに対する風当たりが強い中、治療した彼らはずっと私たちを支えてくれました。残りの17人もまだ治してないのに許してくれて……だから早く治してやらなきゃって」


「だからって女の子の顔の傷をそのままにするのは駄目だろ……ったく、久しぶりに顔を見りゃ世話ばかり掛けさせやがって。お前らじっとしてろ……『完全再生』 」


俺は練習がてら四人同時に完全再生の魔法を発動した。

ん〜……欠損部位の再生だけは一人づつになるな……なかなか難しい。


「え? 」


「こ、この光は……聖……魔法? 」


「…………」


「にゃーー! リチャードの目! ブリアンナの顔もケビンの火傷もガイルの耳も!? にゃーー!? 」


「な、なんだこれは……ん? 耳? あ……ある……俺の耳が! 」


「み、見える! 左目がある! 」


「え?え? あ……傷痕が……で、でも欠損部位が再生する聖魔法なんて聞いたことがないわ……」


「この世界にはまだ無いからな。これは最上級聖魔法だ」


この世界には死霊系の最上級ダンジョンはまだ無いからな。


「さ、最上級!? そ、そんな階級の魔法が存在するなんて……まるで噂に聞いたエリクサー……」


「これは病気は治せないからエリクサーには及ばないさ。よしっ! これで元に戻ったな。お前らちょっと付いてこい! 」


「は、はい! サ、サトウさん……なんとお礼を言っていいか……」


「ったく、この間大統領と話した時はお前がそんなんなってるなんて言ってなかったぞ? 口止めなんかしてカッコつけやがって! まあ、色々と焚きつけた俺にも多少責任はある。気にするな」


「あ、ありがとう……ございます……わ、私は……私は……」


「泣いてんじゃねえよ。男の涙とか見ていてもウザいだけだ。いいから付いてこい! 」


「……はい」


「うふふ、主様はツンデレなのです」


ちげーよ!


俺はニコニコして俺の顔を覗き見ながら歩く蘭をスルーして、ガンゾの工房へと五人を連れて行った。

そこで作り置きしてあったミスリルの剣をリチャードに渡し、黒鉄の剣と盾をケビンに、ミスリルの短剣をミリーに、黒鉄の大剣を虎公に渡した。五人は目を白黒させていたが、ミリーだけは飛び上がってミスリルにゃーとか言って喜んでいた。


俺は呆然とするリチャードたちの尻を蹴って工房から退出させ、次にホビットたちの工房へと連れていって適当に装備をこしらえてやってくれと言って置いてきた。


その間俺と蘭は、ガンゾの工房でドグとゾルとイスラとお茶をして雑談をして待っていた。

イスラにミスリルを打つのがだいぶ上手くなったなと褒めたら、ガンゾが希少素材であるミスリルを毎日打てるんだからそりゃ上達も早いぜ旦那とか言って喜ぶイスラに水を差していた。イスラは喜びから一転ムッとした表情になった。


イスラが調子に乗らないようになんだろうが、俺はイスラのお尻をまた揉みたいから才能がなきゃいくら数を打っても上達はしないさとフォローを入れた。するとイスラの機嫌がよくなって俺に抱きついてきたので、俺はそっとお尻を撫でた。経験上相手から抱きついてきた時はたいていのことはしても許されるんだ。


イスラの兄であるドグにやれやれって顔をされながらもイスラにセクハラをしていると、工房の入口に中位水竜の薄い水色の革鎧を身に付けたリチャードたちが立っていた。ブリアンナは魔法使いなので、デビルスパイダーの糸で作った白いローブを革鎧の上から羽織っている。

横でスーちゃん……とか蘭が言ってるがこれはスーの皮じゃないからな? 昔二人で狩った水竜だからな? ボケただけだよな? ツッコまないからな?


まあしかし方舟の日本軍の奴らより外人の方がこういう装備は絵になるよな。


「お? できたか。よく似合ってるよ。ブリアンナのそのローブには中級結界魔法が付与されてるからな。肩の魔石が無くなったら交換するんだぞ? ケビンのその盾も内側にある魔石に魔力を込めると中級結界を張れる。惚れた女をそれで守れよ? 」


「え? ええー!? 」


「……結界を……ありがとう……ございます……ブリアンナを守る」


「サ、サトウさん! こ、これはドラゴンの革ですよね!? け、剣もミスリルですし、私たちはとてもこんな装備を買えるお金は……」


「ハッ!? そ、そうにゃ!こ、こんな装備、億は超えるにゃ! というか市場に出回らないからオークションものにゃ! 」


「サ、サトウさんよう……出世払いでいいか? 」


「ははは、うちが冒険者連合オークションに出した上級ポーションを高値で買ってもらってるからな。まあ差額分は投資だ。俺にとってはそこまでたいした装備じゃないから気にせず受け取っておけ。あとブリアンナ」


「は、はい! 」


「これは今回の報酬の先払いと婚約祝いだ。受け取っておけ」


俺はそう言ってアイテムボックスから魔法書を取り出してブリアンナに渡した。


「え? これは魔法書……は? じょ、上級聖魔法!? 」


「残りの欠損者はそれで治してやれ。正直お前らがオークションで買い占めるから、ほかの冒険者に上級ポーションが出回らなくて迷惑してんだ。それを覚えればラージヒールが使えるようになる。中級まで覚えてるんだからすぐモノにできるだろう」


「うふふ、主様はツンデレです」


だからちげーよ!

もっと困ってる人に上級ポーションが出回るようにしないと、イギリスやドイツの冒険者連合がうるさいんだよ。

月に一本オークションに出してるのにそれを買い占められたら迷惑なだけだ。


「わ、私が上級聖魔法を……死霊系の上級ダンジョンを攻略しても手に入らないという伝説の魔法を私が……」


いやいや、いくらレア魔法でも上級ダンジョン20回くらい攻略周回すれば手に入るよ。俺は聖属性なかったからそこまでしなかっただけだし。最上級ダンジョン攻略すれば余裕で手に入るものだしな。あ、コイツらには無理だったわ。

まあ在庫はまだあるしうちの人間に俺以外の聖属性保持者はいないからな。このままアイテムボックスの肥やしにしていても仕方ない。

ちなみにリム姉妹の聖魔人は種族魔法に回復はあるけど、聖属性魔法を使えるわけじゃない。


「驕るなよ? 治療費をボッタくるなよ? ライオネルを通して冒険者のお前たちの行動は見てるからな」


「は、はい! サトウさんありがとうございます。あんなことをした私たちにこんなにも……こんな……希少な魔法書まで……今日は最高の日です! ……あら? 冒険者として? 」


「サ、サトウさん……も、もしかして 」


「にゃ? あたし以外は探索者として特例で上級ダンジョンに入れてるだけにゃ! 探索者としての間違いにゃ! 」


「理事長のライオネルには言っておく。国に帰ったらライオネルのとこに顔を出せ。冒険者に復帰だ。お前らはもう十分に反省し、自分たちの犯した罪をその身をもって償った。もういいよ。これからは冒険者として自分のために、そして大切な人のために戦え」


「ぼ、冒険者に戻れる……うっ……はい……もう二度と驕りません。サトウさんのようになれるように、サトウさんを目標に頑張ります……くうっ……」


「サトウさん……グスッ……この一年頑張ってよかった……私たちを導いていただきありがとうございました。そしてケビン、ずっと支えてくれてありがとう」


「……ブリアンナの心を守っただけだ」


「にゃーーー!? みんな冒険者に復活にゃ! 嬉しいにゃ! ガイルもお礼言うにゃ! お前は虚勢を張るのはやめるにゃ! 腹を見せて寝転がるにゃ! 」


「う、うるせーぞミリー! そ、そのなんだ……サトウさんありがとうよ。ライオネルのおっさんから聞いた通りの人間だ。もっと早く知ってれば歯向かうことなんてしなかったのによ。一族の恩人に本当に申し訳ねえ」


「何言ってんだ。強くなる近道は挫折を繰り返すことだ。虎公、お前は一年前より遥かに強くなってるぞ。ランクとかそういうのじゃない。死線を乗り越え挫折を経験し、それでも前に進むことができる奴は強くなれるんだよ。また挫折したくなったら蘭を差し向けてやるから存分に驕っていいんだぞ? 」


「うふふ、また目をくり貫いてあげます♪ 」


「ヒッ!? も、もうあんな地獄はごめんだぜランの姐御……俺より強い奴はたくさんいる! そう思って生きていくって! 」


「ガイルいまにゃ! ランさんにお腹を見せるにゃ! 服従のポーズにゃ! 」


「だからしねーって! 俺は犬じゃねえ! 虎だ! 」


「似たようなものにゃ! 」


「全然ちげえだろ! ワンコロと一緒にすんな! 」


「じゃあワンって鳴いてみるにゃ! 」


「だから犬扱いすんじゃねえ! 」





「うふふ、虎ちゃん面白いです」


「あはは、ミリーとの掛け合いが面白いな。さすが幼馴染同士だな」


俺はずっと泣いてるリチャードと、魔法書を両手に持って泣きながらケビンと見つめ合っているブリアンナ。そしてミリーにいじられてギャーギャー騒いでいる虎公を蘭と二人で笑って見ていた。


失敗して反省して償って、そして一段階強くなってリスタートをする。

この将来間違いなくSランクになるであろう有望な若者たちが、目を潰され顔を焼かれても腐ることなく他人のために前に向かって進んでいたことを知り、俺は少し嬉しくなったのだった。




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