4話




「ご褒美…ですか?」


「ああそうだ」


セルシアの涙を泣きながらハンカチで拭っていたシルフィがその手を止めその涙に濡れる顔を俺に向け、この状況でなんのご褒美がと不思議そうな顔で聞き返してきた。

隣で同じく目に涙を浮かべたセルシアも不思議そうな顔で俺を見つめているがそれに構わず俺は立ち上がり車椅子に座るセルシアの隣へ移動し俺を見上げる彼女を見つめ言った。


「セルシア…辛かったろう絶望しただろう、それでも自分の過ちを認め反省しその絶望を与えた相手に謝罪する勇気ある者に神は再起のチャンスを与えてくれるんだ」


「あたしにチャ…ンス?」


「そうだ、よく頑張ったなご褒美だ…時を司る女神よこの若き勇ある竜人を完全なる姿の時へ戻せ『時戻し』」


俺はセルシアの乱れてボサボサな真っ赤な髪をそっと撫で上級時魔法を発動した。


魔法名を口にしてすぐセルシアの頭上にある俺の手から複数の歪な形をした半透明の時計が現れ彼女の身体全体を覆った後に一斉に時計の針が逆回りをし、ここ数日にセルシアの身に起こった残酷な時を巻き戻していった。

セルシアは突然の事に目を見開いて驚き自身を覆う半透明な歪な時計を見つめその身体を硬直させていた。

隣で事の成り行きを見ていたシルフィは自分の知らない魔法名を聞き更にいきなり俺の手から見たこともない歪な時計が現れ、一体何が起こっているのかと口を開け驚愕の表情でセルシアの身体を覆う歪な時計を見ていた。

蘭と凛はこの後何が起こるのか分かっており、その顔に微笑を浮かべただ事の成り行きを見守っていて夏海は初めて見る魔法に目を見開いていた。


俺のイメージ通りその針をゆっくり逆回りにしていく歪な時計たちはその覆ったセルシアの身体に変化を与えていた。右脚、右腕、角とつい先程までそこに無く失われていた物が1つずつ最初からそこにあったかのように存在していた。涙に濡れテラテラと光っていた頬にあった鱗が消えゴツく凶悪な鉤爪を持つ竜の手や竜の足は白く長い指を持つ綺麗な手足へと変化していた。


「あ…ああ…なんて…こと…セルシア…」


「???」


「なっ!?こ、光希…これは…やっぱり…」


俺と戦う前より更に半日ほど時を遡った所で俺は魔法の発動を止め、セルシアを覆っていた歪な時計が消えた時、セルシアの隣にいたシルフィはその古き友人が自分のよく知る姿形に戻っている事に驚き、セルシア自身は自身を覆っていた歪な時計はもう無くなったのにシルフィがなぜ自分を見て驚いているのか不思議そうな顔をしていた。

夏海は最初驚愕していたが自身の過去に起こった出来事と答え合わせをしたかのように納得した表情で俺を見つめていた。

あの時とは違いもう夏海にこの力を隠す必要も無いしいずれ気付かれる事だ。恩着せがましくなるのが嫌だから今まで言わなかっただけだしな。


俺は未だに自身に起きた変化に気付かずシルフィを不思議そうな顔で見ているセルシアに声を掛けた。


「なんだ随分可愛い表情をするじゃないか、綺麗な顔してたんだな」


「へっ?え?あ、あたしがきれい?…顔?……あれ?顔…鱗が…手が…あ…右…手?」


「あ…ああ…せ、セルシア…う、腕と脚が鱗も…ああ…」


驕りと険が取れたセルシアの顔はとても綺麗な顔立ちをしていた。目と眉は少し吊り上っているが今は弱り切り力なく下がっており、長い睫毛にスッと通った鼻筋、柔らかそうな唇と相まってとても可愛く見えた。

俺が思った事を伝えるとセルシアは顔を真っ赤にして自分の頬をで覆いそこに自分の頬を覆っていた鱗が無い事に気付き、次に自分の左手が竜の手で無くなっている事に気付き更に失ったはずの右手で頬を覆っている事にも気付いて混乱していた。

セルシアの姿の変化が全て見えているシルフィはその変化をセルシアに伝えようとするが上手く言葉にできずセルシアを見つめ泣き崩れていた。


「セルシア、時の女神がやり直しをさせてくれるってさ、良かったな」


俺はそう言ってセルシアの前にアイテムボックスから姿鏡を出して置いた。


「!?…あ…たし?……あたし…だ…角が…ある…腕も!脚も!竜化して二度と元に戻らないと思った鱗が…無い…手足も顔も!太腿も!」


「あっ!セルシア駄目!」


「あっ!おいっ!セルシア!」


姿鏡を見てそこに映るのが自分だと認識したセルシアは自分が失った物が元に戻っている事を確認すると突然立ち上がり来ていたワンピースを一気に脱ぎ捨てた。

竜化の影響から下着を全くつけていない生まれたままの姿になったセルシアは鏡に映る自分の身体を正面から見た後に後ろ向きになりお尻・背中・太腿と確認し始めた。

俺とシルフィの言葉など耳に入っていないのか一通り自分の身体を確認した後に半竜化をし翼と尻尾を出現させその存在を確認するとすぐに半竜化を解きこれは現実なのかそれとも幻なのかと困惑した表情で俺を見つめた。

俺はセルシアが脱ぐのを言葉では止めつつも半竜化を解くと背が小さくなるんだなと皆に聞こえるようにボソッと言い、セルシアのその凛より大きくパンパンに張っている真っ白な爆乳と腹筋で引き締まったくびれや大きく上向きのそのお尻をガン見していた。


「ダーリン!」


「光希…」


「うふふ、主様ったら」


俺は恋人達の呆れの声にやっぱり誤魔化せなかったようだとセルシアの身体を見るのを早々に諦め、アイテムボックスからシーツを取り出し未だ全裸で俺を困惑の表情で見つめるセルシアの身体にその爆乳を見ながらシーツを背中から掛けた。


「??…あっ…きゃっ!……あ、待って!こ、これは…一体何が…あん…あなた様がこれを?」


「あなた様?ああ俺の魔法だ、俺と戦う半日前程まで時間を戻した。後でこの魔法を他言しないと契約してもらう」


「あ…じゃ、じゃあ本当に…元に戻った?…あたし…あたし…うわーーーーん!」


「あ、おい…ははは…参ったなこりゃ…」


俺がセルシアにシーツを掛けるとやっと自分の姿に気付いたのかシーツで前を覆いしゃがみ込んだ。俺は彼女から離れようとするがセルシアは俺を呼び止め未だ信じられない自分の変化への説明を求めているようだったので時を戻す魔法だと簡潔に答えた。時魔法の存在を知っていたのか契約してもらうと言った所で俺の言う言葉を信じたのか、やっと今の自分の状態が現実だと受け入れる事ができたセルシアは俺に抱きついてきて泣き出してしまった。

シーツがはだけ前部分が丸見えになっている全裸美女が俺の腹部に顔を埋め泣いてるとか…耐えろ俺…


「こ、光希様…あれが時魔法…ですか…なんという…途轍も無い力…」


「ああそうさ、アレが上級時魔法の《時戻し》だ」


「上級…確か光希様は最上級を会得されていましたね…もしかして…」


「シルフィーナには契約魔法は必要無いと俺は信じている」


「あ…はい!いらぬ詮索をし申し訳ありません。風精霊に誓い誰にも、決して誰にも他言を致しません」


「そこまでしなくても信じてるよシルフィーナ」


「光希様…」


この力は強大だ、だが俺が信じた者から世間に知れてしまったならそれはそれで別に構わない。姿を変え名前を変え生きていくだけだ。時が過ぎれば死んだと思うだろうし俺を覚えている者もいなくなる。

これから蘭と長い時を生きる俺には大した時間じゃない。

ただ、進んでそうなりたいとは思わないので頭の足りない竜人にはキッチリ契約で縛る。俺の魔法を話そうと思っただけで激痛が襲うくらいにしとかないと必ず誘導尋問に引っ掛かるのが竜人だ、そこは全く信用していない。

竜人が恩知らずとかそういう訳ではない、ただただ馬鹿なんだそれだけなんだ悪気が無いから厄介なんだ。


「ダーリンありがと、あの時を思い出しちゃった。魔法を発動している姿カッコよかったよ」


「光希…薄々気付いていました。私はエリクサーで助けられてたのでは無かったのですね、恐らくこの命も最上級魔法で…」


「あの時は夏海がこれほど大切な存在になるとは思ってなかったけどね、あの時の自分を良くやったと褒めたいよ」


「あ…ああ…光希…やっぱり…あなたは…私はどうやってこと先どう光希に…」


「ん?夏海は既に俺に身も心も捧げたとか言ってなかった?俺は受け取ったつもりだけど?」


「え?あ、はい!捧げてます!この身も心もあの時からずっと!」


「だったら何も恩に感じる必要は無いだろう?既に俺のもんなんだからさ」


「あ…は、はい…わ、私は光希のものです…愛してます」


「俺もだよ夏海」


「羨ましい(ボソッ)……」


「ん?シルフィーナ何か言ったか?」


「はい?いえ何も…さあセルシア!いつまで泣いてるのよ!光希様に言う事あるでしょ!立ちなさい」


「うっ…グスッ…シル…うん…」


夏海が俺の魔法で蘇生され生き返った事に気が付き俺に確認をしてきた。俺は特に否定をせずむしろ蘇生して良かったと思っていると伝えると涙を流しながらどうこの恩に報いていけばとまた真面目に考えてるから既に夏海の全ては俺のものだと押し切り納得させた。そのやり取りを見てシルフィが何か言っていたがどうせ勇者とヒロインの愛の語らいを羨ましいとか思ってるだけだろうと敢えて突っ込まなかった。勇者の物語がシルフィは大好きだからな。


シルフィは俺にしがみついて泣いているセルシアを抱き起こし立たせて俺に2人で頭を下げてきた。


「あ、あなた様…か、身体を元に戻していた、いただきまして…あ、ありがとうございました。このご恩…は生涯わ、忘れません…ぜ…是非あたしとその…つ…つが…なって…その…」


「光希様私の大切な友人を救って頂いた貴方の慈悲深いそのお心に感謝致します。ありがとうございました」


「女の子をいつまでも悲しい顔にさせておくのも寝覚めが悪いと思ったからやっただけだ、特にシルフィーナの泣き顔は俺も蘭も見たくないからな。気にする必要は無い」


「あ…また私の笑顔の為に…ん?蘭、さん?」


「ああ、俺と蘭だ」


「?」


「気にするな」


「そ、そうですか…でもこのお礼は必ず致しますから」


「だったら毎日を楽しく幸せでいてくれればいい。それが俺と蘭の望みだ」


「毎日を楽しく…ですか?それが望み?ですか…」


「失ったエルフの恋人に蘭は懐いていてな、その面影をシルフィーナに重ねている所もあるんだ。迷惑かとは思うがそうしていてくれると俺も蘭も少し救われるんだよ」


「あ…はい、迷惑だなんてとんでもありません。光希様の恋人に重ねて頂けるなんてこ、光栄です。むしろそのまま…こ、こい…恋」


「シルどうしたんだ?」


「ひゃっ!せ、セルシア…な、なんでも無いわ!さ、それ以上ここにいては皆様にご迷惑が掛かります。さ、服を着てもう戻りましょう」


「え?あ…でもあたしは負けた上に助けられて…その…つ、つがいにしてその…もら…お」


「ほらっ!セルシア!準備して!」


「ははは…セルシア帰る前に契約魔法をしてもらう。いいな?」


「あ…は、はい!あなた様」


「ん?まあいいか…それでは…」


俺は熱い眼差しを俺に向け顔を真っ赤にして礼を言うセルシアにデジャヴを感じながらも全て見なかった聞かなかった事にし時魔法を一切他言しないよう制限のかなりキツイ契約魔法を発動しセルシアはこれを了承した。

そして名残惜しそうにシルフィに連れていかれ部屋を出て行くセルシアを皆で見送りもう夜も遅いし皆で寝る事にした。


「こ、光希…今日は私と2人でその…一緒に…そのアレはもう終わりましたので…お、お願いします」


「ああ、今日は一緒に寝よう」


皆で夜着に着替えていたら夏海が熱い眼差しを俺に向け珍しく自分から一緒に寝たいと言葉にして俺に言ってきた。その気持ちや理由が分かる凛や蘭は夏海に微笑んでから静かにベッドルームへ歩いて行き俺は夏海の肩を抱き連れもう1つのベッドルームへ向かった。


「光希…抱いてください。激しくこの貴方に捧げた身体を愛してください。どんなことでも私はしますし受け入れます。ただただ激しく愛してください。私はそれが幸せなんです」


「愛してるよ夏海…どれだけ愛してるからこれから証明する」


「きゃっ!あっ…あああああ」


俺は夏海の夜着を乱暴に脱がしその身体を前も初めてとなる後ろも激しく求め愛した。

夏海は俺の全てを受け入れ夏海からも俺を隅々まで愛してくれ2人は夜が明ける直前までお互いの愛を確認し合い2人で気を失うかのように眠りについた。







  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る