第18話

 



 ――探索者協会 横浜上級ダンジョン支店長 大須賀 実――





  コンコン


「入れ」


「失礼します。支店長報告があります」


「なんだ?」


「はい。本日15層まで間引きを行なっていた探索者から、魔獣の数が少ないとの報告を受けました」


「魔獣の数が少ない……どれくらいだ?」


「いつもの半分以下らしいです」


「半分以下か。確か一昨日までは普通だったはず。それが急にか……まさか……いやまさかな」


「念のため、今地上にいるCランク以上の盗賊職の者を臨時依頼として集めてくれ。自衛隊にも協力を要請してくれ」


「はい、ではそのように手配します」


  俺はそう受付エリアの責任者に指示をし、中級ダンジョンであった氾濫の原因究明勉強会のことを思い出していた。そのダンジョンはコボルトや狼系の魔獣が多く素材も宝箱から出るアイテムも人気が無かった。自衛隊も上級ダンジョンの間引きに手を取られそれほど多くの人員を送れなかったようだ。

  それはそうだ。自衛隊の任務はまず第一に他国からの侵略から日本を守るのが仕事だ。国内ダンジョンの間引き攻略のために1個師団設立しただけでもありがたいものだ。中級よりも氾濫したら対処が難しい上級ダンジョンに力を入れるのも理解できる。


  そして間引きが間に合わず、その中級ダンジョンの支店長が戦々恐々としていた時に氾濫が発生した。

  兆候としてはダンジョンでの魔獣との接敵回数が大幅に減ったとのことだった。そういった兆候が現れ翌日には氾濫が起こったそうだ。

  表に出てきたのは中層までのコボルトと狼系魔獣だけだったので壁で封殺できた。だがそのタイミングで間引きを行なっていた探索者は全滅した。逃げ切れなかったのだろう。どのダンジョンにも安全地帯があるが絶対に安全というわけではない。

  魔獣が入りにくい作りだったり、小部屋の扉が頑丈であったりとかその程度だ。逃げ込んでも全滅する時は全滅する。相性が良い安全地帯もある。そう、この横浜ダンジョンは相性が良い。出現する魔獣の大きさより小部屋の入口が小さいのだ。その代わり部屋も狭くパーティ全員は入れない。最低でもパーティを割らなければならないから、パーティが壊滅的打撃を受け人数が減った時の緊急避難的な場所だ。それでもゴブリンやコボルトがいる他のダンジョンの安全地帯よりは良い。だから横浜ダンジョンに入る探索者には、全員にこの安全地帯の情報を端末から見られるようにしている。


「今回の魔獣が減ったという情報……まさか氾濫の兆候でないだろうな……念のため斥候を複数放つ手配はしたが」


  このダンジョンは最近上級ダンジョンに進化したばかりだ。そのうえ間引きも最低限は行なっている。この組み合わせで氾濫が起きたことなど過去一度もない。だが、もしもということもある。

  今は自衛隊と探索者が合同パーティで35層まで潜っている。他にも探索者パーティが複数15層までの間引きをしている。何事も無ければいいが……










 ――陸上自衛隊 第一ダンジョン攻略連隊 第一中隊 横浜分屯地 中隊長 玉田 学 一等陸尉――






 プルルルル


「はい玉田です……なっ! それは本当ですか?……そうですか……分かりました。第一戦闘配備を命令します……よろしい」


 ピッ


 《 はい。こちら通信室 》


「玉田です。非常呼集を掛けてください。第一戦闘配備を発令します」


 《ハッ!非常呼集を掛け第一戦闘配備を実施します!》


  まさか横浜ダンジョンが氾濫するとは……私は横浜ダンジョンに常駐している小隊長からの報告を受け、一瞬呼吸が止まった。昨夜探索者協会から要請があり斥候職、つまり盗賊の適性のあるものを一時的に派遣した。

  その結果、先に間引きを行うために35層まで行っていた西条3尉の自衛隊と探索者の合同パーティが、魔獣の氾濫により戸田二曹以外全滅した恐れがあるというものだった。

  戸田二曹は昨夜探索者協会と合同で放った斥候が見つけ、その斥候達も魔獣の大群に追われ命からがら逃げ出してきたそうだ。一番身軽で地上まで情報を持ち帰れる確率が高い戸田二曹をパーティの仲間達は逃がすために、その身を犠牲にして魔獣の足を止め囮となったようだ。

  戸田二曹は憔悴した顔で、24層の緊急避難場所に探索者がいるので救援をお願いしますと言い続けているようだ。


  私は彼らの犠牲を無にしないため、他部隊への応援の要請を行い兵士たちを連れ横浜ダンジョンへ向かうのだった。




  横浜ダンジョンへ到着した頃には既に砲撃が始まっていた。

  壁の上に設置しているカメラとドローンにより壁の内側は全て見える。内側には多くのオーガとその3倍の数はいるオークがひしめいていた。


「状況を報告せよ」


「ハッ!本日12時15分にダンジョン入口が内側から破壊され、入口が凡そ3倍ほどの大きさとなり多くの魔獣が現れました。付近住民には避難命令を発布済みです。現在確認できている数はオーガ325、オーク863内オークウィザードは100となります。砲撃にて攻撃しておりますが効果小。ダンジョン入口からまだ魔獣が出てきており、数は増えていく一方となっております! 以上です」


「オークやオーガクラスが千体超えですか。しかも低火力とは言えウィザードも100体も」


  確かに壁が無ければ街は滅びますね。しかし現在の火力では足らない。


「攻撃ヘリ部隊を投入してください。高度を取りナパーム弾でオークウィザードを集中攻撃」


「ハッ! 攻撃ヘリ部隊を投入します。弾種ナパーム弾。高度を取りオークウィザードを集中攻撃」


  私はオーガには恐らく効果が低いが、数が多いオークウィザードをまず殲滅するためにナパーム弾での攻撃を指示した。

  しばらくすると2機の攻撃ヘリが到着し、壁の内側に向かいナパーム弾を放った。その結果、壁の内側は炎で包まれオークがパニックを起こしている様子が見える。が、それほど効果は無かったようだ。


「報告します! ナパーム弾効果小! オークウィザード残90」


「分かりました。次に魔法処理した特殊炸裂弾を撃ち込んでください」


「ハッ! 弾種特殊炸裂弾で攻撃します」


  次に旋回して戻ってきた攻撃ヘリから特殊炸裂弾が連続して発射された。

  この弾には付与魔法で火魔法の火矢の魔法が付与されている。火矢の効果で魔力で硬化された皮膚に穴を開け、中で炸裂させる弾だ。強力だが数を作れないことから使い所が難しい。

  ですが今は魔獣の数を減らさなければ門を破られてしまうので、温存して使うタイミングを逃すよりはと使うよう命令をした。


「報告します。特殊炸裂弾オークウィザード効果大残60」


「次に1機がオーガへも撃ち込んでください。もう1機はウィザードへ」


「ハッ! 1機はオーガへ! もう1機はウィザードへ!」


  そして旋回してきた攻撃ヘリが再度攻撃を行った。


「報告します。特殊炸裂弾オーガ効果中! オークウィザード効果大! 残40」


「攻撃ヘリは補給に戻してください。もうすぐ第2陣のヘリが来ます」


「ハッ! 攻撃ヘリ補給のため帰還させます!」


  オーガの皮膚は貫ききれませんでしたか……せめて炎槍の魔法を付与できれば……まあそんな付与術師はこの国にはいませんからね。無い物ねだりしても仕方ありませんね。あるものでやるしかありません。


「魔法使いを壁の上に。探索者協会の魔法使いと協力して攻撃してください」


「ハッ! 魔法使いを壁の上に配置。探索者協会の魔法使いと協力し攻撃します!」


  登る用意をしていた魔法使い5人がすぐに配置を完了し、火矢、水刃、土槍などあらゆる魔法を放っていった。


「報告します! 魔法使いによる攻撃オーガ効果中! オーク効果大! オークウィザード残20」


「残り魔力が半分になったら下がってもらってください。魔力回復促進剤もすぐ飲むよう伝えてください」


  魔法使いを投入する前にオークウィザードをかなり削ったので、反撃はありましたが全て壁上に設置された防壁で対応できてますね。オーガの投石も問題無さそうです。

  魔法は効果がある、しかし魔法使いの数もそうですが中級魔法を撃てる数が少ない。それでも損害なく魔獣の数を減らせる。魔法使いの応援が到着すれば長期戦にはなりますが勝てます。

  そう私が勝利への道筋を見ていた時に突然周囲がざわめいた。


「報告します! トロールです! トロールがダンジョンより現れました数は3体です!」


  トロール!? なぜ下層の魔獣が? これはまずいですね。オークの3倍ほどある体長に怪力。これは壁が破壊される可能性も考えないといけませんね。


「急ぎ2陣の攻撃ヘリ部隊に全ての特殊炸裂弾をトロールへ! 魔法使いにも攻撃は全てトロールへと伝えてください!」


「ハッ!」


  私は急ぎと言い復唱を省略させ命令を出した。


「万が一のために壁の入口扉前を開け西側に集結してください。南側の建物ももしかしたら盾にできないかもしれません。その際は南に通し、その先で近接職にて包囲できるように配置してください。壁が破られた際は東の東京湾へ追い込む作戦に変わりません」


「ハッ!」


  画面を見ると攻撃ヘリと魔法使いによるトロールへの集中攻撃が始まった。唯一壁の出入口を短時間で破壊できるトロールだけは壁に到達させてはいけません。

  第二陣の攻撃ヘリ部隊も到着し4機による集中攻撃と、魔法使いによる攻撃でトロール3体は足を失い胴体も穴だらけになり倒れた。


「報告します! トロール3体共に殲滅完了しました」


「魔法使いには下がってもらい、攻撃ヘリ部隊には補給に戻ってもらってください」


「ハッ!」


  上手くいきました。魔法使いはもう魔力が無いでしょう。攻撃ヘリも残弾が無いはず。このまま時間を稼げば……


「報告します! トロールが新たに2体現れました!」


  周囲の者たちが騒めく……このタイミングで新手とは……航空機は万が一の事を考えればこの人口の多い地域では使いにくい。壁も損傷するかもしれない。


「ほ、報告します! と、トロールが! 先程倒れた3体のトロールがさ、再生してます!」


「それは本当ですか!?」


  トロールが再生? 聞いたことが無い!そんな馬鹿な! 不死身……

 

  まずいですね。皆動揺している。しかしどうすれば……


「探索者協会に連絡! トロールには再生能力あり! 壁を破壊されることを視野に行動をされたし! 作戦はプランDへ変更とする!」


「ハッ!」


  私が指示をしている間に再生したトロールが新手のトロールと合流し、壁をもの凄い勢いで殴り始めた。


 ドーン ドーン ドーン ドーン


  壁上の銃火器より扉を殴るトロールへ集中攻撃を行なっているが、効果は薄そうですね。もうこちらには手が無い……


 ドーン ドーン ドーン ドーン


 ドゴォォォン


  「報告します! 車両用の壁がトロールにより破壊されました」


  自衛隊ではこれが限界。せめて人壁となり応援が来る時間と住民が避難する時間を稼がなければ。

  私は覚悟を決め立てかけておいた剣を持ち立ち上がった。


「諸君! 武器を持て! 一匹足りとも魔獣を市街地に行かせてはならない! オークは女性を襲う! 我らが守るべき国民にそんな地獄を見せてはならない! 戦え! 盾となれ! 我らは精強第一ダンジョン攻略連隊第一中隊! 我らが連隊の一番であることを証明してみせよ!」


「「「オオーーーーッ!」」」


  恐らく生き残るものはいないだろう。妻や子を残し逝く者も多いだろう。だが我らの犠牲は無駄にはならない。今回の事で政府も政財界も国民も、より一層ダンジョン攻略に取り組むことになるだろう。我らは国の礎となるのだ。無駄死にはさせない。第一ダンジョン攻略連隊第一中隊に栄光あれ!









 ――横浜上級ダンジョン東通り 倉木(佐藤) 光希――



  俺と蘭は迫りくるオーガとオークを剣と扇で軽く斬り伏せ、ダンジョン南側へ建物を壊し進んでいくトロールを追いかけた。

  追いついた時にはトロールは自衛隊と交戦していた。

  トロールは6メートルほどある体格で踏みつけ、腕を振り回して自衛隊員に攻撃を行っていた。

  自衛隊員たちは足を狙いなんとか動きを鈍らせようとしているが、おかしなことに傷付けた場所が再生している。

  彼らはそのことに絶望した顔で剣を振るっていた。何人か吹き飛ばされ倒れており全滅も時間の問題に見えた。


「ん? 再生トロール? んー? あーいたな昔……なるほどね、今回の氾濫の原因はこれか『鑑定』」



 種族:吸血トロール



 体力:S


 魔力:E


 物攻撃:B


 魔攻撃:F


 物防御:B


 魔防御:E


 素早さ:F


 器用さ:F


 種族魔法:再生


 備考:吸血鬼の眷属



  やっぱりな……俺は鑑定結果を見て再生の原因を確認した。


「おーい! 自衛隊の人たち! ちょっと下がっててくれ! 蘭行くぞ!」


  俺は大きな声で自衛隊員に下がるように言い、蘭と共にトロールに向かって駆け出しその左足を断ち切った。その反対側で蘭も魔鉄扇を振るい右足を断ち切っていた。


 ドーーーン!


「「「おおーーー!」」」


 トロールが倒れ下がっていた自衛隊員から驚きと喜びを含んだ叫び声が聞こえた。


「蘭、燃やしてくれ」


「はい! 『豪炎』」


  俺は倒れたトロールの元に行き切断した足を見たら、切断されたもの同士が磁石のように引き合って元に戻ろうとしていたので蘭に燃やしてもらうことにした。

  範囲を絞った上級火魔法の豪炎の火力は強力で、トロールが一瞬で骨も残さずチリとなった。


「「「………」」」


  自衛隊の人たちが唖然とした顔で見ているが、ちょっと聞きたいことがあったので一番階級が高そうな人に聞いてみる。


「ちょっとすいません」


「ハッ……な、なんでしょうか?」


「横浜ダンジョンに潜っていた方は全員無事だったんでしょうか? 取り残された方とかはいませんか?」


  俺は先日助けた皇さんと多田さんが以前このダンジョンに自衛隊の人と潜っていくのを見たので、まさかとは思うが少し気になったので聞いてみた。


「残念ながら氾濫が起きた時間に間引きを行なっていた隊員と、同じパーティだった探索者が未帰還となっています」


  自衛隊の人は沈痛な面持ちでそう答えてくれた。自衛隊員と同じパーティか…


「もしかしてその未帰還の探索者って皇さんや多田さんて名前ですか?」


「すみません、探索者の方のお名前までは私には……」


「二曹! 私知ってます! 西条一尉と同じパーティの子が同じ名前です」


「そうなのか……」


「あ、はい! ありがとうこざいました。では他のトロールも殲滅してきますのでこれで」


「あ、ああ……なんと言っていいのか……ここは助けてくれてありがとうございました」


  俺が尋ねた男性は知らなかったが、一緒にいた女性隊員が皇さんたちのことを知っていた。

  なんというか……これはほっとけないよな。

  俺は先ずは厄介なトロールを探し殲滅することを優先し、探知に映る他のトロールを追いかけた。





  『豪炎』


「よしっ! これで最後だな。蘭はこのまま西の自衛隊員の手伝いをしながら、南に抜けそうな魔獣がいたら殲滅してくれ」


「はい! 主様行くのですね?」


「ん? ああ、まあ顔見知りっちゃ顔見知りだしな。知ってる人が危機と聞いて何もしなかったら寝覚めが悪いだろ? それに心が綺麗で美人なんて死なすにはもったいない」


「ふふふ、そうですね。さすが私が愛する主様です。ここは任せてください! 蘭が中華街を守ります!」


「いや、その他のとこも守ってやれよ」


「ふふふ。冗談です」


  そんなことを言いながら蘭は舌をペロッと出す……あざとい……でも可愛い。


「じゃあ後は任せた。入口付近のと壁中の奴らは殲滅して外に出られないようにしておく」


「はい! いってらっしゃいませ主様」


  俺は蘭にしばしの別れを告げ壁の入口に向かった。入口には自衛隊員と探索者たちが必死に魔獣を東に東にと追いやろうとしていた。ん? あのちっこいお団子頭の子。名前は知らないけど確か皇さんのパーティにいた子だよな。

  俺は以前壁の入口で皇さんたちと待ち合わせをしている自衛隊員の中に、彼女がいたことを思い出した。

  特徴ある子だったから間違いないと思う。色々聞いてみるか。


「さて、その前に……『闇刃』」


「「「ゴァァァア!」」」


「「「ブギーーーー!」」」


  俺は10枚の闇刃を出し操作して、壁入口前にいるオーガとオーク、オークウィザード凡そ50体の首を次々と刈っていった。


「「「!?」」」


  壁入口前にいた人たちが一斉に俺を見る。俺は団子頭の子の所に瓦礫を飛び越え向かっていき話しかけた。


「すいませーん! 皇さんと同じパーティの人ですよね? あ、俺探索者の倉木と言います」


「ひゃっ! ひゃ、ひゃいそうでふ」


「皇さんがダンジョンの中にまだいるって本当ですか?」


「は、は、はい! そうなんです! 魔獣に囲まれて皇さんが吹き飛ばされて、後ろから大群が迫って24層の小部屋に行くって……先に行って助けを呼んでと。他の皆も私に助けを呼んでもらうためにと囮になって西条さんは……西条さんは盾になって……だから私、助けに行こうと。でも入れなくてうっ……うっ……」


  なんだか最初はびっくりして噛みまくってたのに、いきなりマシンガントークになって訳分からないけど取り敢えずこの子も大変だったんだな。


「分かりました24層ですね、大丈夫助けますよ」


「え? え? でも壁の中は……」


「まあ見ててください」


  そう言って話してる間も壁の中から出てくるオーガやオークを闇刃で切り刻みつつ、俺は入口から壁の中を見た。そこは自衛隊の銃火器の砲撃を浴びながら、壁の出入口に向かおうとひしめき合っているオーガやオークが大量にいた。扉の残骸や自衛隊や探索者による攻撃で、入口で倒れているオークやオーガたちが邪魔で一斉には出られなくなっているようだ。でもちょっと邪魔だな……


『雷鳥』


『大津波』


  俺は中級雷魔法を壁から外に出ようとする塊に放った。雷でできた鳥が次々とオーガたちを貫通し道を作った。

  そして黒焦げになり倒れたオーガたちを踏み歩き、上級水魔法の大津波を壁の中に放った。壁から出ようとして入口に殺到していたオーガやオークたちは、俺の背後から現れる大量の水によって中央にあるダンジョン入口の更に奥まで押し流された。


『天雷』


  俺は最後に上級雷魔法の天雷を放った。

  水に濡れ奥に押し流されある程度まとまったオーガやオークは、夕焼けに染まろうとしている空を塗り潰す暗雲から大量に降り注ぐ雷に打たれ黒焦げになり絶命した。


「まあオーガやオークなんてこんなもんだろ」


  それどころかオーバーキルだったな。なんかキングっぽいのもいたようないなかったような? ま、いっか。俺はそんなことを考えながらダンジョン入口に辿り着き、後ろを振り返ってこちらを顎が外れんばかりに口を開けてヨダレまで垂らしつつ凝視しているお団子頭の子に向かって親指を立てた。


「ちょっと白馬の王子様してくるよ」


  自分で言っておいて白馬の王子様はイケメン限定だよな。なんて思って笑ってしまった。

  そんな自虐ネタを披露しつつ、ダンジョンの入口を潜り内側から結界を掛け魔獣が外に出られないようにした。


  「さて、急ぐか」


  俺は24層目掛けて全力で走り出した。

 








 

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