第7話





「なるほどね〜この世界の日本も苦労してきたんだな、戦後より酷い状態から復活とかほんと日本人て打たれ強いよな」


 さて、一通り書籍を読んだ所でこの世界で生きていく方法を模索しなければならないな。


 この国はダンジョンによって成り立っていると言っても過言じゃないんだよな。つまりステータスが高い探索者は優遇される制度が確立されてる。そりゃそうだ、上級ダンジョンの中からいずれ最上級ダンジョンが現れたらこの国は滅ぶ。


 そんな事は異世界人から聞いてるはずだ。40年掛けて上級ダンジョンが2つしか潰せてないレベルで、この逃げ場の無い島国で最上級ダンジョンの氾濫とか悪夢でしかない。

 現在日本にはダンジョンが108ヶ所。そのうち認定を受けた上級ダンジョンが23ヶ所。しかもダンジョンは日々成長し増えていく。


 アメリカでさえ全ダンジョン数は45ヶ所なのに日本だけ何故こんなに多いのか?

 異世界召喚されやすいとかも関係あるのかもな。魔素が多い土地だとかか?


 いずれにしろ政府は上級ダンジョンで間引きをできる人材が、喉から手が出る程欲しいはずだ。

 ならばそこを利用するか?

 ステータスをいじり魔力値が突出してるように見せれば、戸籍が無くても高ランク探索者の孤児として最低でも身分証明書となるものを発行してくれるかもしれない。


「よしっ! やってみるか」


 俺はステータスを偽装しながら、同じ階にある新規探索者受付窓口へと向かった。


「いらっしゃいませ本日は新規登録でよろしいですか?」


 窓口に着いたら20代半ば程の綺麗な女性が声をかけてくれる。この辺は異世界も地球も変わらないな。


「はい。探索者に興味がありまして……登録は可能でしょうか?」


「はい可能ですよ。ですが大変失礼ではございますが、最低限の登録資格というのがございまして、登録の意志のある方には能力測定を先に受けて頂く決まりとなっております」


 受付のお姉さんが申し訳なさそうな表情で頭を下げながら言うが、確かに強制的に探索者にさせてた時代と比べ今は探索者になると一攫千金が狙える事もあり人気がある。黙っていても探索者になりたい奴は沢山来るから、その中から才能のある人間をみつけて育てないといけない。

 そして将来的に上級ダンジョンの間引きをさせなきゃいけないから足切りは必要だよな。

 まあさっき話した探索者のステータス見たら、軒並みDだったから大丈夫だろ。

 職業もあの探索者の真似して勝手に付けたけど、違和感は無いはず、。魔力値だけ突出させれば上手くいくと思う。


「はい結構ですよ。是非確認お願いします」


「ありがとうございます。そうしましたら、こちらの鑑定羊皮紙を手に取り『鑑定』と言って頂けますか?」


「はいわかりました……鑑定」



 倉木 光希くらき こうき


 国籍:日本


 職種: 魔法使い


 体力:D


 魔力:B


 物攻撃:D


 魔攻撃:C


 物防御:D


 魔防御:C


 素早さ:D


 器用さ:C


 運:E


 取得魔法:中級雷魔法、初級闇魔法


 お? 国籍が出るの? なんだ?どういう事だ? 鑑定魔法では国籍なんか表示されないのに。

 まあいいか、不利な事は無いどころかラッキーだな。初めて運Bが働いた気がする。

 名前もこの世界の俺に気を使って変えたし、これでもう行くか。


「はい、出ましたどうぞ」


「ありがとうございます。拝見させていただきます」


 俺が渡した鑑定結果が書かれた羊皮紙をお姉さんが受け取り、上から流し見て……固まった

 まあそうだよな中堅探索者でDだもんな。国籍表示されるなんて知らなかったから、ちょっとやり過ぎたわ。

 さて、どうするかな。まあ押し切るしか無いか


「あの〜お姉さん?」


「はっ! 倉木さん失礼しました。非常に才能がお有りなんですね。是非探索者協会へのご登録をお願い致します」


 そう言って頭を下げたお姉さんにこちらこそよろしくお願いしますと言い、諸々の手続きと説明を聞いた。

 探索者には探索者ランクがあり、そのランクにより入れるダンジョンが決まる。

 ランクはF〜Sまであり、装備の無い状態で前衛職なら体力・物攻・物防・素早さで、後衛職なら魔力・魔攻・魔防・器用によってランクが決まる。

 補助職の盗賊や、レア職の魔法剣士などはまたそれぞれ違うランクアップ基準があるそうだ。


 E.Fランクは初級ダンジョン。C.Dランクは中級ダンジョン。S.A.Bランクは上級ダンジョン(基本的に初級ダンジョンには入れない)となり、俺の場合はCランクスタート。ちなみにSランクは現在2名で共に異世界人だそうだ。

 うん。いいね実力主義なのは。


 他はダンジョンで得た魔石は全て探索者協会に売らなければならないという事と、Bランク以上になると指名依頼があるので極力受けて欲しいという事。半年以上魔石の販売がない場合は除名されるという事がある。ただ事前に怪我や海外遠征など、長期戦線復帰できないなど相応の理由があればその限りではないとの事。


「それではこちらが探索者証明書兼身分証。そしてこちらが探索者専用タブレットとなります」


 そうして渡されたのは免許証サイズの何も書かれていない真っ黒なカードと、スマホをひと回り大きくしたサイズのタブレットだった。


「そちらのカードの中央部分と、タブレットの右側面にある突起を5秒ほど触れてください」


「んーとこうかな」


「はい結構です」


 そう言われて手を離したら真っ黒だったカードの表面に、俺の名前とその下にCという文字が書かれており、タブレットの方は画面が起動した。


「おお〜個人認証だったんですね」


「はいその通りです。悪用されない為に倉木様の魔力を登録致しました。これで倉木様以外には使えません」


 確かに身分証とするには最適だよな。偽造できないし探索者協会が後ろ盾になってるしな。


「そちらのタブレットには探索者協会からの依頼状況がリアルタイムで見れ、アプリから依頼を受注する事ができます。ダンジョンにただ入るより、依頼を受けた方が報酬が良いので是非受けてくださいね」


 更に探索者協会にお金を預けるとこのタブレットで余程田舎の商店でない限り、どこの店でも支払いができるそうだ。いいねキャッシュレス。


「そちらのタブレットは衝撃や水に強い特別製となっておりますので、くれぐれもダンジョン内に持ち込み紛失しないようお気をつけ下さい。再配布には30万円必要となります。ダンジョンの外でしたら追跡機能が付いておりますので見つかりやすいです」


「わかりました。気を付けます」


「では最後に、探索者による犯罪は一般人が犯す同様の犯罪に比べ刑が重くなります。強い力を得た時にはくれぐれも自制心を強くお持ち頂けますようお願いします」


「はい。ありがとうございました」


 まあそりゃそうだよね。異世界のギルドと同じように、重犯罪を犯した探索者に対して捕縛又は討伐依頼とか高ランク探索者には出るんだろうな。


 こうして俺は並行世界の地球ではあるが、魔獣を狩るお仕事に付いたのだった。







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