第11話
ピロローン♪
ピロローン♪
「ん……お、朝か……」
俺は目覚ましが鳴り起きようとするが、蘭が生まれたままの姿で俺の腕に抱きついていて動けない。
蘭を起こそうと思ったが、昨夜の事もあるし朝食の時間までもう少し寝かせておいてやるか。
俺は蘭の頭をそっと撫でてからゆっくりと腕を引き抜いた。
その後軽くシャワーを浴びて着替えてからソファに腰掛け、今日はどうしようかと予定を立てることにした。
新宿ダンジョンの周りでも見学してみるか? 温泉に行くのもいな。露天風呂付き客室で浴衣姿の蘭とかメチャメチャ夢が膨らむな!
あ〜こんなにゆっくりできるなんて、現代に戻ってきて本当に良かったわ。パラレルワールドだけど!
そう言えば蘭は中華料理を楽しそうに食べてたっけ。あんなに楽しそうに食事してる蘭を見るのは初めてかも。濃い味好きだから味覚が合ったのかもな。
横浜中華街とかこの世界にもあるのかな? あるなら連れて行ってやるか。
そんな予定ともつかない予定をつらつらと考えていたら蘭が起きたようだ。
「主様おはようこざいます」
「おはよう、朝食まで時間はまだあるからゆっくりシャワーでも浴びておいで」
「はいそうしますね」
蘭がシャワーを浴びている間にスマホで横浜中華街を検索し存在を確認できたので、シャワーを浴び終わって出てきた蘭の髪にドライヤーをかけてやりながら横浜中華街の話をしてやると
「昨日食べた中華料理のお店がいっぱい並んでる場所があるんですか!?」
「そうそう店に入らなくても買えて食べ歩きとかもできたと思うよ」
「行きたいです!」
ガバッという感じで後ろで髪を乾かしている俺に振り向き、目をキラキラさせて言うものだから少し笑ってしまった。
蘭がほっぺたを膨らませなんで笑うんですか〜と言うものだから更に笑ってしまった。
「あはは、いいよ中華街に行こう」
「もう!子供扱いしないでください」
そんな事言いながらも寝ている間に幻術が解かれて見えるようになった尻尾がフリフリしてるのを見て、楽しみにしてるんだな分かりやすいなとまた少し笑ってしまった。
そんな朝からほっこりする出来事をこなしてから朝食を食べ、チェックアウトしてタクシーに乗り俺達は横浜中華街へと向かった。
中華街に着くとその賑やかな入口に蘭は目をキラキラさせ、心なしか歩くスピードも速かった。俺はやや引っ張られる形で店前で売っている豚まん(オーク肉)や小籠包を買い、近くのベンチで2人で食べたり雑貨屋でよく分からないキーホルダーを買ったりした。蘭がパンダのぬいぐるみを見て欲しがったのは可愛かったな。
それからまたタクシーを捕まえて近くの小さな遊園地に行き、ジェットコースターに乗ってはしゃいだり、観覧車に乗って旧横浜駅とその周辺を丸々囲っている横浜ダンジョンの壁の大きさにビックリしたりしてるうちに夕方になった。その後は東京湾が見えるレストランで夕食を食べた。
「主様。今日は凄く楽しかったです。蘭はこの街をとても気に入りました」
「俺も楽しかったよ。食べ物はウマイし遊べる所もたくさんあるし、海を見ながらのんびりできるし良いとこだよな。しばらくこの街に滞在しようか」
「はい! 蘭は賛成です」
今日は終始蘭がニコニコしてて、こんな顔を毎日見れるならしばらくここを拠点にしてもいいかな。
異世界では辛い事が多かったもんな。
その後食事を終え少しお酒が入りながらも東京湾を一望できる高級ホテルに部屋を取り、2人でシャワーを浴びてスッキリしてからベッドに入った。ベッドの上では蘭と今日行った場所の事や、今度行ってみたい場所の事をスマホで検索しながら話をして眠りにつくのだった。
翌朝少しホテルでゆっくりしてから横浜ダンジョンを見学しにタクシーで向かうことにした。
やはり観覧車から見た壁の迫力に興味が湧いたのだ。
「おお〜これはデカイし武装が凄いな」
「なんだか王都みたいですね」
「ははは。確かに王都の壁みたいだよな。魔獣を防ぐ為に作った訳だから、やはりこのいう形になるんだろう」
前方には5階建マンション位の高さの壁がぐるっと横浜ダンジョンを囲んでいて、その壁の上には銃火器が内向きにかなりの数設置されていた。壁は王都のそれよりも威圧感があった。
壁の入口は南側に一ヶ所のみだ。周辺の建物の並びを見ると万が一突破された時は入口付近で食い止め、失敗したとしても海に誘導するような配置になっているのが見て取れた。
しっかり入口で時間を稼げれば、最悪でも東京湾から海上自衛隊艦船からの砲撃で殲滅ってとこかな。
巨人種でも出てこない限りは大丈夫だろう。
そんな事を考えながら壁の入口を眺めていたら、迷彩服の上から鎧を着て大きな盾を持っている大柄な男性と、同じく迷彩服の上から革鎧と剣や弓を持っている女性3人が入口で誰かを待っているかのように入口と反対側を向いて立ち止まっていた。
少しすると背が高く黒髪のショートカットで右目に眼帯をしている革鎧に剣装備の女性と、成人には珍しくプラチナブロンドの髪に少しキツめの顔立ちだけど、とても顔立ちの綺麗な女性がローブの下に革鎧を着て自衛隊の人達と合流して挨拶をしていた。
少し気になったので鑑定をしてみた。
職業: 魔法使い
体力:D
魔力:B
物攻撃:D
魔攻撃:B
物防御:D
魔防御:C
素早さ:D
器用さ:B
運:C
取得魔法:中級火魔法
プラチナブロンド子は皇グループの縁戚者かな? 八王子ショッピングモールのあの老紳士は副社長だったしな。副社長が現場にいるとかもはやパワハラだよな。
あの人の孫とかだったりして……家業を助けている感じなのかな?
あの独眼竜みたいなカッコイイ女性はどうなんだろ
多田 夏海
職業: 剣豪
体力:A
魔力:E
物攻撃:A
魔攻撃:E
物防御:B
魔防御:D
素早さ:A
器用さ:C
運:D
取得魔法:
おお〜剣士ではなくその上の剣豪か。今まで見た中では一番の高ステータスだ。
素早い動きで敵を翻弄し一撃で離脱スタイルって感じかな? なかなか強いな。
自衛隊の人もと思ったが、挨拶が終わったのか壁の中に入ってしまった。あの盾の人も見たかったな。
まいっか。お昼も回ったしそろそろご飯でも食べようかな。
俺は昨日蘭と調べて2人とも気になった、横浜ダンジョンと中華街の間にある公園近くのレストランに向かうのだった。
そのレストランではシーフード系の料理がおいしいらしく、お昼時という事もあってか結構混んでいたが30分程待ったら入ることができた。
連日美味しい物をたくさん食べて俺も蘭もニッコニコで過ごすのだった。
フツメンの俺に美女と美食でリア充生活!
あーこんな毎日なんて幸せだな〜もうダンジョン探索なんてしないで、こうやって悠々自適に過ごそう。うんそうしよう!
お金が無くなったらまた素材やら魔道具売って稼げばいいしな。娼館位しか遊ぶ所の無い異世界で、あんなに苦労したんだ。これは当然のご褒美だ!
そんなフラグ成立など気にもせず、俺は明るい未来を考え充実した気持ちで美味しいシーフード料理に舌鼓をうつのだった。
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