第11話 ドラゴン警備員
「あそこだな。蘭! 寝ぐらから叩き出してやれ! 」
「はい! 『
俺は目の前を塞がるヴェール大陸一の山岳地帯の一角に向けて蘭にメテオを放たせた。
蘭はピンポイントで黒竜の巣のある場所に隕石を一つ落下させ、その出入口を崩落させた。
《 ヴオォォォォォオ! 》
「おーおー激おこだな。ドーラ突っ込んで障壁を破壊しろ! 」
「 ルオォォォン! 」
メテオにより巣を壊された黒竜は崩落した瓦礫を黒いブレスで吹き飛ばし、怒りの咆哮をあげながら巣から飛び出してきた。
そこへ俺はドーラに突っ込むように言い、ドーラは全力で黒竜との間合いを詰めながら黒竜の足もとに巨大な竜巻刃を発生させた。
『ルオン! 』
そして竜巻刃に揉まれ魔法障壁を削られる黒竜に対し、ミスリルの兜に俺が付与した天雷を放った。
「いいぞドーラ! これで終わりだ! 『セイクリッドクロス』 」
俺は魔法障壁の無くなった闇属性の黒竜に、最上級聖魔法のセイクリッドクロスを聖剣を通さず威力も抑え気味に放った。
すると黒竜の周囲を3つの光る十字架が現れ、体勢を立て直そうと躍起になっている黒竜を囲んだ。
闇属性の黒竜はそれだけで苦しみもがいていたが、その十字架が一気に黒竜に襲い掛かると断末魔の叫び声をあげた後に元いた巣へと力なく落下していった。
「やべっ! これでもまだ強いのかよ! ドーラ! 黒竜のもとへ急げ! 」
俺はドーラを黒竜の落ちた場所に急行させ、急いで降りて瀕死の黒竜にミドルヒール を発動し一命を取り留めた。
「ふう……危なかった。うっかりやり過ぎて殺しちゃったから蘇生お願いとか言ったら、ヴリエーミアに呆れられるからな。かといって魔石から創造したら弱くなるし馬鹿になるし。とても数百年この大陸は任せられない」
そう、俺と蘭とドーラは魔王城の北にある大山脈地帯を縄張りとする上位黒竜を従えに来ていた。
この黒竜はたびたびアトラン大陸に侵入しようとして、その都度ドーラに追い返されていたらしい。
そしてそのうちドーラに求婚するようになり、毎年ドーラに会いにアトラン大陸に来るようになったらしい。でもドーラは黒竜は粗野でタイプじゃないそうだ。そしてしつこい黒竜を毎回殺しきれなくて悔しい思いをしていたらしく、今回狩りに行くと言ったら大喜びしていた。
「主様、契約ですか? 蘭はドラちゃんのストーカーをペットにするのは心配です」
「ん? コイツは隷属させる。魔王の騎竜だったし破壊神の影響が強いからな。能力はどうだろ『鑑定』……まあまあだな。ドーラが追い払うのが面倒と言っていただけはあるか」
ヴリトラ
種族:竜種
体力:S
魔力:SS
物攻撃:S
魔攻撃:SS
物防御:S
魔防御:SS
素早さ:S
器用さ:S
種族魔法:竜魔法(障壁・ブレス)
備考: 上位黒竜
まあ黒竜である以上、聖属性に弱いという弱点があるから俺とは相性がいい。かなり手加減したのに瀕死だしな。上級聖魔法の『聖雨』でもよかったかもしれないな。
このヴリトラは魔王の遠征用の騎竜だったため、俺と蘭が乗り込んだ時にはいなかったんだよな。
その魔王が倒されたあとは、魔王による隷属魔法が解けてこの山にずっと引きこもっていたそうだ。
そして時折魔族や魔物を襲って餌にして、アトラン大陸に散歩に行ったりしていたらしい。
その魔族たちも恐れるヴリトラが毎回ボロボロになって帰ってくることから、ドーラはより恐れられていたそうだ。
当然だな。うちのドーラは黒竜のような雑魚とは違うのだよ雑魚とは。
「ようヴリトラ、これから門番としてよろしくな『隷属』 」
《 ヴオオォォォォ……》
「無駄だ。魔王ごときに隷属させられてたお前程度が抵抗できるわけないだろ。頭はやっぱ良くなさそうだな。まあいいか。痛みを持って学習していけばいいさ」
俺が隷属の魔法をヴリトラに放つと、ヴリトラは抵抗しようと必死に悶えていた。
恐らく過去に魔王にやられたのを思い出したんだろう。
しかしその抵抗虚しく黒い霧はヴリトラの魂をしっかりと縛っていった。
コイツはやっぱりドーラには相応しくないな。あんまり近付けさせないようにしよう。
「ヴェール大陸にいる者を餌にすることを禁ずる。餌は海の魔物を狩れ。そしてほかの大陸に行くことも禁ずる。例外としてアトラン大陸から人族が攻めてきたら撃退し、人族の一番大きな街を一つ滅ぼせ。魔族が獣人のいる土地に攻めてきたら撃退しろ。獣人が魔族の土地を攻めようとした時は獣人たちを止めろ。最後に俺と蘭のドーラには近付くな。命令だ」
《 ヴ……ヴォォ…… 》
『ルオォォォン! ルオッ! ルオッ! 』
コイツ……ドーラのくだりで抵抗しようとしやがった。お前程度のやつにドーラはやらん!
うちのお転婆娘の番は強くないとな。ドーラも大喜びで出直してこいって言ってるしな。
俺たちは落ち込むヴリトラを無視してその場を離れた。
そして次にヴェール大陸の東の海に巣食う上位水竜がいるところへと向かった。
ここではドーラと蘭に全てを任せ、全身傷だらけで黒焦げになった水竜を俺が治して蘭が契約魔法で従えた。
この水竜にはヴェール大陸に近付く大物の海の魔物を撃退することと、しばらく狩った海の魔物や魚を獣人の街に持って行って欲しいと頼んでおいた。
ちなみに蘭がこの水竜に付けた名前はシーちゃんだそうだ。海にいる水竜だからシー……いつも通りだ。
こうして俺たちはヴェール大陸の警備員を手に入れたのだった。
♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢
そして翌日。
昨晩は蘭と2人で懐かしのこの世界の夜景を見ながら寝室でとことん愛し合った。
生まれたままの姿で窓に手をついて尻尾をフリフリして誘う蘭に、俺は後ろから襲いかかり大発奮して頑張りまくった。
その結果、朝起きたらベッドがもの凄い惨状になっていたので時戻しで元に戻し、一晩中覗いていたマリーたちと紫音と桜のお尻を叩いてお仕置きしてからみんなで食事をした。
まったく……10人以上に覗かれてするなんて、えっちなビデオの男優になった気分だったよ。
そして朝食を食べ終わり、今日の予定を皆で話し合った。
凛と夏海はマリーたちと農作物を植えるのを手伝いながら、この世界の言葉を少しずつ覚えていくそうだ。
これは以蔵たちも協力してくれるらしく、みんなで畑づくりをするとやる気満々だったよ。
セルシアはガンゾのところへ行き竜人族の女性たちに合う装備を作ってもらうと言っていた。
完全に世話焼き姐御と化しているな。でも、世話が焼けるとかなんとかニヤケた顔で文句を言うセルシアも可愛いな。やっぱり地球に同胞がいなくて寂しかったんだろうな。
よし、帰ったら男の竜人たちはオーストラリアに放し飼いにして、女の竜人だけセルシアの側に置くかな。あの土地は戦いたがりの奴には丁度いい土地だからな。
いらない脳筋はどんどんあそこに放り込むか。世界のためにもなるしな。
それからシルフィと蘭はリムたちの手伝いで、四天王として光魔王軍の編成を手伝うそうだ。
勇者の仲間になり、一緒に冒険をすることを長年夢見ていたシルフィが魔族を従える軍の四天王だってさ。
人生なにが起こるかわからないよな。
蘭は……まああの子はなんでもいいんだ。俺が隣にいさえすればなんでもいいんだと思う。四天王も大好きなシルフィや凛たちと一緒にできるから楽しくてやるんだと思う。蘭がそれで幸せならいいさ。
恋人たちがそれぞれ自分の仕事に向かうのを見送ったあと、俺はというとヴェール大陸の南の獣人たちの移転予定地へ行き、地形操作の魔法で広範囲の土地を陥没させた。
そしてエフィルとゼルムのいる集落へと一人で向かい、ゲートの魔法で移転予定地の近くに住民たちを移動させ、残された住居の土台ごと転移で次々と移転予定地へ配置していった。
長屋なんかが多かったから数はそれほどでもなかったが、それでも100往復はして建物を配置していき、最後に地形操作と硬化の魔法で地面を固めた。
次にエルフ、ダークエルフ、竜人、ドワーフ、ホビットの集落を同じように移設して午前中は終わった。
さすがに疲れたよ。ずっと周囲で見ていたエフィルもララノアもゼルムも、呆気にとられた顔をしたままだったしな。
一からまた家を建てるなんて大変だし、当面はこの住居に住みつつ街を作っていけばいいだろう。
そして午後はそれぞれに移設した住居に一時避難させた家財を戻す作業をしてもらい、俺は再度アトラン大陸に転移して今度は畑を土壌ごとくり抜いて転移し、移設先の近くの川の周辺に配置していった。
かなり深く土ごと持ってきたから当面は大丈夫だと思う。
アトランやムーアン大陸に比べれば、ヴェール大陸の方が土地の魔力は残っているからな。
まだしばらくはこの世界の作物は育つだろう。
それから獣人たちに粉状にした屑魔石と七日神麦を渡し、畑とは違う場所に植えるように言った。
七日で麦が育つなんてと半信半疑だったが、数日経てばわかることだと言って全て植えさせた。
これは世界中の獣人たちを受け入れる時のために、急いで育成して種もみを回収して増やしていかなければならない。
こうしてヴェール大陸への移住を完了させ、作物の栽培を開始させたのだった。
そしてこの翌日から数日間俺は山にこもり、昼はリムとミラとユリが交代で様子を見に来てくれたのでキスをしたり触りっこしたりしてイチャイチャし、夜は日替わりでベッドを共にしに来てくれる恋人たちとイチャイチャしながら創造魔法で魔物の量産をしたのだった。
俺は勇者時代に貯めた魔石と横浜に移住してから貯まった魔石、そして方舟世界で手に入れた魔石を大放出するつもりでいた。
さあ、楽しい地獄の特訓の始まりだ。
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