第58話 中間報告






ーー 森フィールド 国際救済軍 東部方面隊 米欧英連合司令官 ルイス・アンダーソン 中将 ーー






「報告します! 我が軍の南方におよそ1000頭の魔豹の群れを率いる風豹が突然現れ、現在こちらへと向かって来ております! 」


「出たか! 間違いなくボスだろう。前回のジャイアントトレント戦と違い手強いぞ! 直ぐにロシアほか救済軍に応援を要請しろ! 」


一番近くにいるのは南アメリカ連合だが、奴らでは力不足だ。Light mareに殲滅され弱体化したとはいえロシア軍は強力だ。貢献度を判断するあの光魔と呼ばれる者がいるのだ、ロシアは急いでここに来るだろう。先に我々がボスを倒したりなどしたら文句を言ってくるレベルだからな。

俺はグリフォンにまたがり北からこちらへと向かって来る男型の純白の天使の翼に白い肌、そして額から生える白いが妙に禍々しい曲がりくねった二本の角に、同じく白いが細長く蝙蝠のような長い尻尾を生やしている天使とも悪魔とも呼べない存在に目を向けた。


恐ろしい……あの光魔と呼ばれる者もグリフォンもそうだが、その背後にいるあのミスターサトウという魔王が心底恐ろしい……


以前フィリピンからミドルワールドに来て、狂っているとしか思えない数の魔物を狩っていた者であり、中露の最精鋭部隊を雷の魔法で一瞬にして殲滅した者。

そして我が合衆国にドラゴンと共に現れ、現代のあらゆる兵器が通じず戦車部隊を壊滅させた。しかしそれ以前にも中露の街で破壊の限りを尽くしたという……

大統領と共に世界会議に出席していた制服組の者が言っていた。世界はミスターサトウに敗北したと。


しかし幸いなことに世界を滅ぼすつもりはないようだ。それどころかクリキント大統領がニホンにやらせようと画策した、国際救世軍を合衆国主導で作れと言ったらしい。

その話を初めて聞いた時はクーデターを起こそうか一瞬考えたものだ。あの婆さんは前大統領がニホンにちょっかいを出してミスターサトウを怒らせ、首都にまで乗り込まれたあげくに失脚したことを忘れたのかと激しい怒りが湧いたものだ。合衆国を滅ぼすつもりかあのババアは!


結果として、魔王という人類では対抗できない絶対的な存在によって世界はまとまった。いや、まとまらされたと言うべきか。ロシアなど酷い怯えようだ。二度も首都にドラゴンで乗り込まれたのだ。国民からの突き上げも相当なものだったのだろう。

二度目はロシアが攫った東南アジア人を解放するためだったらしいが、あのロシアが素直に言うことを聞いたことに驚いたものだ。

まあ、東南アジア人をミスターサトウが鍛えて送り込まれたら国が滅ぶと思ったのだろう。そういう扱いをしていたということだ。

中華国の国家主席の末路は悲惨だったらしいからな。


魔王コウキ・サトウ……オーストラリア人と東南アジア人を救い、救われた者からは使徒様や救世主などと呼ばれているようだが、我々国に属する軍人から見れば魔王そのものだ。彼は軍属の者には一切の容赦がない。

それは先々週にこの森フィールドを攻略した際に、あの光魔の裁定に不満を持った南アメリカの将軍が容赦なくグリフォンに殺され、それに怒った南アメリカ軍が壊滅させられたことからもわかる。

彼らは我々のことなどどうでもよく思っており、逆らえばなんの躊躇いもなく殺しにくる。

我々はただ精一杯戦い、光魔の裁定に粛々と従うのみ。あんなシールド持ちのグリフォンと光魔を相手に戦うくらいなら、このフィールドの魔物と戦った方が万倍もマシだ。


「司令! 接敵までおよそ5分です! 」


「ロシアはまだか……仕方ない。イギリスの魔法中隊を前に出せ! 防御魔法を張らせ魔豹の突進を食い止めろ! シールド部隊も南側へ集めろ! 」


「イエッサー! 」


「前回は貢献度二位だった! 今回こそは一位になれるよう死に物狂いで戦え! だが援軍の邪魔はするなよ? 評価が落ちるからな。憎きロシアだろうがクソ生意気な南アメリカだろうが協力して戦え! 星条旗のために! 」


「「「「「イエッサー! 星条旗のために! 」」」」」


ボス戦で邪魔が入らないことがこれほど攻略の効率を上げるとはな……人類は今まで何をしていたのだろうか。

世界が協力して方舟に挑む。たったこれだけのことを実現するまでに、いったい何億もの民が飢えて死んでいったのか……












ーー 大島拠点 佐藤 光希 ーー







国際救済軍が攻略を開始して一ヶ月と少しが経過し、俺は恋人たちと水遊びをしたりダークエルフたちと秘密の訓練をしたりして夏のバカンスを満喫していたそんなある日、俺が拠点のガレージ内のソファでくつろいでいると、最近任務や訓練で働きづくめのリムが定期報告をしに俺の元へとやってきた。




「米欧英連合の精鋭部隊が国際救済軍から一時離脱? 」


「ハッ! 連合が所有する草原フィールドの期限が来たとの理由で、国際救済軍には通常部隊を投入したようです」


「あ〜もう9月も終わりだもんな。そうか、初の期限切れフィールドか。3日以内は無理だろうがまあ大丈夫そうだな。あの婆さんは小狡いが政治能力は高いみたいだしな。しかしこれまでの報告を聞いてると、結果的に俺があの婆さんの援護射撃をすることになったのか……なんだかな〜」


もともと米国上院議会の議長なだけあってあの婆さんは調整能力が高く、米国民にもそこそこ人気があったようだ。しかしあの婆さんの政策は策を巡らせ各方面と調整してと時間が掛かり、スピード感のある政治ではないことから前大統領のような浅慮だけど実行力のある人間に大統領の座を取られてしまったらしい。


しかしその前大統領は大ポカをしたあげくに暗殺されてしまい、副大統領である婆さんが臨時の大統領になることになった。しかも次の選挙までの三ヶ月だけの臨時大統領だ。そこで俺たちを刺激しないように日本を抑えそれを功績とする策を考えたが、慎重な婆さんらしからぬ粗だらけの策で俺の登場によりあっさり潰された。

時間が無い中で考えたことって大抵うまくいかないよね。


ところが俺が婆さんの提案した国際救済軍を意趣返しのつもりでやらせたら、これが米国内で大ウケした。

米国民も前大統領のやった制裁で日本が攻略戦に参加をしなくなってから、遅々として攻略が進んでいないことに危機感を持っていたらしい。

国際救済軍が設立されれば、他国の邪魔が入らないので攻略が可能なはずと思ったようだ。分け前は減るがそこは(旧)世界最強軍である自信から、貢献度を稼ぎより多くの分け前を得ればいいと思っみたいだ。

さすが長年世界最強だった国の国民だ、自身に漲っている。


そしてなにより米国が世界をまとめる役であることが自尊心を満足させ、救済軍には期間限定ではあるが魔王軍が審査役に就任するということでこの計画は成功するはずだと各マスコミも報じたようだ。

米国内でも魔王と呼ばれてるのか……まあいいけど。

でも魔王が審査するのに成功するとか考える米国のマスコミは頭大丈夫なのかね?


そして今回とうとう連合が所有していたフィールドが期限切れを迎えたようだ。大統領の婆さんは恐らく3日以内に攻略できなくても他国による侵略は無いと国民に断言したことだろうよ。

そりゃそうだ。いまそんな事をする国があったら国際救済軍結成を提案した俺を敵に回す。


ちっ……俺があの婆さんの再選の手助けをすることになるとはな。

フィールドを再攻略している間に選挙だ。この状態で落とされることは無いだろうな。



「心中お察しします」


「まあいいさ。国際救済軍は海はとりあえず後回しにして、森と山岳と砂漠に集中するというのはまあ賢明だな」


「はい。これまで森を2つと山岳を1つ、海を1つに砂漠を1つ攻略しておりますが、海と砂漠での犠牲者が多いことから海は断念したようです。砂漠は石油に天然ガスなどの資源の関係上諦めきれないようです」


「今まで一年で1つか2つ攻略するのがやっとだったのが、同族での潰し合いが無くなった途端に一ヶ月ちょいで5つか。人間の愚かさを再認識したわ」


「こ、光魔王様は愚かではありません! 我らの光であり希望です! それにあ、愛……す……る……あ……あい……」


「ははは、リムは可愛いな。俺もリムにミラにユリやほかのサキュバスたちを大切に思っているよ。いつもキツイ仕事を文句を言うことなくやってくれてありがとう」


おお〜! あのいつも凛とした顔のリムが顔を真っ赤にして愛という言葉を口ずさむとは……可愛すぎだろ!


「あ……い、いえ! そ、それが我らのし、使命……です……から」


「しかし他の皆が休んでいる時に訓練漬けなのはいただけないな。身体が鈍らないように週に一回か二回程度の訓練ならいいが、最近資源フィールドと山籠りとで全然休んでないじゃないか」


「申し訳ございません。ですが我らは以蔵殿や静音殿の光魔忍軍に比べ弱いのです……たとえ以蔵殿と静音殿がいなくても同数で戦った場合完敗するでしょう。更に我らは寿命がエルフ種に比べ圧倒的に短いのです。早く強くなり光魔王様のお役に立たなければ、我が一族に未来はございません。このことに関しては皆も納得しております」


なるほどな……確かに以蔵たちに比べれば弱いし寿命も5分の1以下だ。しかし……


「リム。お前は勘違いをしている。まず俺は以蔵たちにもリムたちにも戦闘能力は期待していない。お前たちに望んでいるのは、諜報に撹乱に今回のような訓練の指揮など俺の手足となって働くことだ」


「そ、それは承知しております。ですがいざという時に光魔王様をお守りしなければ……」


「俺を守る? そんな事は四天王でさえ不可能だ。実力的に俺を守ることができるのは蘭だけだ。それ以外の者はたとえシルフィーナでも俺に守られる対象だ。リムは俺に守られるのは嫌なのか? 俺はリムを守りたいと思っているぞ? 」


リムだけじゃない。ミラにユリに他のサキュバスもダークエルフの女の子たちだって俺は守りたいと思っている。え? インキュバスに男のダークエルフは守らないのかって? 男なら自分の身は自分で守るんだな。


「え? わ、私を……い、いえ……ま、守られたい……です……」


「そうか、なら守ってやる。それにこれだけは言っておく。俺はリムたちサキュバスを気に入っている。誰も死なすつもりはない。それが寿命でもな。だから覚悟しておけ? もう死にたいと言うまで何度も若返らせ続けてお前たちを手放さないからな」


「あ……ああ……光魔王様……はい。光魔王様がもういいと言うまでお仕えさせていただきます。それが何千年でも永遠でも……」


「ありがとう。ああそうだ、もう一つ俺の役に立っていることがあるぞ? 」


「それはどのような事でしょうか? あっ! 」


俺はソファの隣で跪いているリムの腕を取り隣に座らせ、肩を抱いてその滑らかでしっとりとした長い黒髪を撫でた。


「こうして俺が好きな時に愛でることができることかな」


「……ん……り、理解しました」


「少し胸を触るぞ? 」


「……はい。お好きなだけ……さ、触ってください」


「んじゃ遠慮なく……おお〜相変わらず白くて柔らかい胸だな。ほら、俯いてないでこっち向いて」


「んっ……は、はい……」


「可愛いよリム」


「光魔王様……」


俺はリムの胸を揉みながら、真っ赤になって恥ずかしがりつつも目を潤ませているリムを見つめキスをしようとした……


「ああーーーー! またリム姉さんが抜け駆けしてる! 」


「ええ!? リムお姉様約束が違いますわ! 光魔王様に愛でてもらう時は一緒にって約束したではありませんか! 」


「あっ! ミラにユリ! こ、それは違うのだ! そ、その雰囲気に呑まれて……あ、いえ光魔王様。私はとてもその……う、嬉しかったですしまたしていただきたいので誤解しないでください」


「ははは、わかってるよ」


俺がリムといい感じになっているとテントからミラとユリが出てきて、俺たちがいちゃついているのを見られてしまった。

慌てて言い訳しているリムも可愛いな。


「ズルーーイ! 光魔王様ボクも抱きしめて欲しい! チューもしてー! 」


「そうです! リムお姉様ばかりいつもズルいです。この間もお尻を撫でているのを見ました。光魔王様私も愛でてください」


「ははははは。ミラもユリも隣においで。二人もとても大切に思っているからな。撫でてやろう」


「やったーーー! うへへへ、光魔王様〜ボク毎日訓練頑張ってるんだよ? 桜に負けたのが悔しくてさ〜」


「うふふ、光魔王様。私の胸も触ってください。それからここも……」


「ミラは偉いな〜よしよし。ミラの胸も小尻もプリプリしていて好きだぞ。おいおい、ユリは相変わらずえっちだな。こんなにして……よしよしマッサージしてやろう」


「あっ……光魔王様……ボク……ボク……」


「んんっ……こ、光魔王様にだけですわ……ここがこんなになる……のは……」


ああ〜ミラの小尻も形の良い胸も堪らんな。最近はキスもよく強請ってくるし可愛いやつだ。ユリもいつも通り大胆で自分から下着をずらしてくる。うおっ! 凄いことになってるな……


それから俺はシルフィと蘭がテントから出てくるまで三人にセクハラの限りを尽くした。

三姉妹にはちょこちょこセクハラをしていたが、こんなにじっくり触ったのは初めてだったから危なくお風呂場に連れ込むところだったよ。


もうこのままあと半年くらいゆっくりして帰りたいな……








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