第23話 ドッペルゲンガー





「この先の分岐の一つに丁度良い行き止まりの道がある。今日はそこで休もう」


「ハアハア……ちょっとこのダンジョン嘗めてたわ。魔物の数多過ぎよ……」


「ハァフゥ……まさかここまで数が多いとは……」


「……やはり普通では無いな」


「ええ、氾濫後なのにダンジョン内に死霊が溢れてるわ。まるでこれから氾濫が起こるかのようね」


「上級ダンジョンになって凡そ320年。攻略者が誰もいない理由はこの死霊の数なのやもしれぬな」


「レイドでも組まないと私達では厳しかったわね」


俺達は25階層の分岐の多い洞窟を進み、丁度良い行き止まりの道があったのでそこで野営をする事にした。探知を常に掛け最短距離を進んで来たつもりだったが、それでも魔物とのエンカウントが多く凛達は疲れ切っていた。途中小休止を何度か入れてもこの疲労具合だ。明日からは俺と蘭も前に出ないと厳しそうだな。

俺はそんな事を考えながら洞窟の行き止まりまで進み、来た道に魔道具を設置した。


「ダーリンそれが死霊避けの魔道具?」


「それがですか? 大きなお皿に筒?」


「ああ、と言うかただの噴水なんだけどね。これを等間隔で道幅いっぱいに置いてここに魔力を通すと……」


「わぁ〜確かに噴水ね。なるほどね〜聖水の噴水なのね。流れた聖水は大きなお皿で受けて、循環してまた噴水として出てくるのね。これなら死霊系の魔物は近付かないわね」


「聖水の噴水でしたか! これなら確かに。なるほどですね」


「そう言う事。更にメイをテントの前に置いて結界も掛けておけば完璧だ」


「まあ! お屋形様素晴らしいわ。こんな方法があったなんて」


「流石お屋形様だ。我等とは戦いの経験数が違う」


アトランでも聖水を置いてテントで休んでいたが、ただ置くだけだと避けたり飛び越えてくる死霊も多くて結界の耐久度が結構減っていた。その経験を生かし複数の噴水を置いて死霊を近付けないようにしようと考え、ドワーフ達に作ってもらった。3メートルの高さまで吹き上がる上に霧状にもなるし、これなら流石に大丈夫だろう。


「これならゆっくり休めるわ。ありがとダーリン♪ 頼りになる恋人で良かったわ」


「休息はダンジョン攻略に一番重要な事だからね。さあ、お風呂に入って疲れを取ってまた明日頑張ろう!」


「そうね。暗いしジメジメしてるし汗が気持ち悪いわ。早くお風呂に入ってサッパリしたいわ」


「そうそう、以蔵にはこのテントを貸しておく。そのテントは俺とドワーフの手作りで風呂とトイレとキッチンが付いてるし、ベッドルームもある。ゆっくり疲れを癒してまた明日頑張ってくれ」


「なんと!? 風呂とトイレがあるのですか!? そのような古代魔道具のテントに匹敵する設備がある物を我々に!?」


「まあ! ありがとうございます。とても嬉しいですお屋形様。 ああ以蔵!お風呂よ! ダンジョン攻略中にお風呂よ!」


「そうだな。濡れタオルで過ごすのを覚悟していたからな。聖水の噴水にメイ殿に結界と、これ以上ない程安全な野営な上に風呂付のテントまで……お屋形様ありがとうございます」


「気にするな。静音の為だからな。女性にはこのダンジョンはキツイだろう」


「お屋形様……以蔵がいなければ惚れてましたわ」


「ははは。ありがとう。さあみんな入ってくれ。結界を掛ける」


「は〜い! いちば〜ん!」


「ふふふ。凛ちゃんたら早くお風呂入りたいのね」


「うふふ。みんなで入りましょう」


「お屋形様それではお借り致します」


「お屋形様ありがとうございます。お先に失礼致します」


俺は以蔵達が喜ぶ姿を見て作って良かったと思いつつ皆をテントに入れ上級結界を掛け、一人留守番のメイ用に暖かい敷物を何枚も床に敷きオークの肉と果物を置いてメイに門番を頼んだ。

メイはガウガウと尻尾をブンブン振って嬉しそうに肉に齧り付き、ここは任せてくれと念話を送って来た。

頼りになる奴だ。


そしてテントに入り凛達と一緒にお風呂でサッパリした後に遅い夕食を食べ、その日は凛と夏海は疲れたのか早々に寝室へと入っていった。俺も蘭と寝室に行き、少しいちゃいちゃしてから眠りについた。


翌朝、朝食を食べテントの外に出ると死霊が聖水を越えてきた形跡も無く、メイも暇だったと言っていた。これなら下層まで大丈夫そうだ。

少しすると以蔵達もテントから出てきて、静音にそのシルバーグレイの綺麗な髪が全て前に垂れるほど頭を下げられもの凄く感謝された。その時見えた褐色の胸の谷間が凄かった。Fクラスはある上に、なんと言うかパンパンに張ってるんだよ。エルフの手に収まる大きさのプリンプリンの柔らかい胸もいいけど、ダークエルフのもまた……はぁ〜この世界の何処かにダークエルフいないかな。今のところダークエルフは以蔵夫婦だけなんだよな。オーストラリア大陸とかでひっそりと隠れていないかな? 褐色の水着美女達と夏の海水浴とか是非してみたい。アトランじゃお殿様扱いで手を出せる雰囲気じゃ無かったんだよな。

俺は真顔で静音に気にするなと言いながらそんな事を考えていた。


「あの顔をしている時のダーリンは高確率でえっちな事考えてるわね」


「そうね。昨日私達が早くに寝てしまったから欲求不満なのかもしれないわね。今夜は一緒に寝ないと」


「そうね、人妻に手を出さないように搾り取っておかないと。えっちな彼氏を持つと大変だわ」


どうやら恋人達にはバレバレのようだった……


「さあ! それじゃあ行こうか! 今日は中層の40階層には行けるようにしよう! 俺と蘭が前に出るから援護を頼む」


「「「はい! 」」」


「「はっ! 承知! 」」


俺は皆に出発の合図をして野営地から出た。26階層から30階層は相変わらずスケルトンにスケルトンナイト、そしてゾンビにグールのオンパレードで片っ端から蘭と凛が燃やして前に進んだ。俺はたまに聖剣を通して雷矢を撃つ位しかやる事が無かった。


そして31層からはCランクのゴーストが待ち構えていた。


「バンシーだな。前方の三叉路から6体づつ来るぞ! 精神魔法の錯乱を放って来るから念の為結界を張れ!」


「「「はい! 」」


「「はっ!」」


キエアァァァァ!

キエアァァァァ!


「うるさいな〜『天雷』 」


アアァァァァ……


「喰らいなさい! 聖ウォーターガン! 」


「この聖水に浸した白雷を受けて見よ! 『聖雷斬り』 」


「そこだ! 忍法『聖手裏剣乱舞』 」


「残りは私が!忍法『聖クナイ乱れ撃ち』 」


前方の三叉路から来た苦痛に満ちた顔の女性の霊体であるバンシーに対し、俺達は一斉に攻撃をした。魔法防御がCランク以上あればそうそう精神魔法には掛からないが、念の為結界を掛けるように言い俺と蘭は一番左の道から来るバンシー6体を瞬殺した。凛と夏海は霊体に効果の高い聖水を利用した攻撃を中央から来るバンシーに当て倒し、以蔵達も右の通路から来るバンシーに聖水に浸した武器で攻撃をし倒していた。


「このウォーターガン強力だけど倒すまでに時間が掛かるわね。これなら竜巻刃に聖水を混ぜた方が早そうだわ」


「確かに聖水だけだとCランクの死霊は少し耐えるわね。魔法攻撃と同時が良さそうね」


「まあ色々試してみればいいさ。聖水は売るほどあるしな」


「聖水は貴重なアイテムなはずなのだが、お屋形様といると価値観が狂ってしまうな」


「そんなの100トンもの聖水を送ってもらった時に気付きなさいよ。今更だわ」


まあ、毎日泉から湧いてるからな。アトランにあった聖なる泉は聖地として教会が囲って、市場に流す量をコントロールしていたしな。それで魔王軍に滅ぼされる寸前までいってりゃ世話ないよ。ホント馬鹿な連中だったな。

それから35階層迄はひたすらバンシーの相手をし、36階層から全身を包帯で巻いたミイラのマミーが参戦してきた。バンシーで錯乱させてマミーの剛力で攻撃してくるコンボなのだろうが、俺達には効果が無くサクサクと倒していった。メイなんて飼い主の蘭に似たのか、空からその爪でマミーの首を次々と刎ねていってたよ。

その後39階層で五叉路からワラワラと50体近く出てきた時は皆一瞬狼狽えていたが、俺が元の道に戻るように言って結界を張り、五叉路から現れたマミーとバンシーを交差する広場で纏めて天雷で消滅させたら納得していた。洞窟タイプのダンジョンは迷宮タイプや地下鉄タイプと違い、天井や隠し通路からの襲撃が無いから楽だよね。


そして上級ダンジョンなら中層のボスがいる40階層に降りると、そこは洞窟の中でありながらも大きな空間となっていた。そして少し進むと中央にBランクのデスナイトとマミーが20体程待ち構えていた。

デスナイトは強力な死霊が黒い鎧を身に纏った魔物だ。その手には両手剣を持ち、動きも速いしパワーもある。


「以蔵達は蘭とメイと共にマミーを! 夏海はデスナイト! 凛は夏海を聖水で援護! 」


「「はっ! 」」


「「「はい!」」」


「お姉ちゃん先ずは私が弱らせるわ! 紋章『竜巻刃』 聖水付き! 」


「ありがとう凛ちゃん!……雷鳥よ貫け!『雷鳥の舞』 」


「蘭殿! 我等が動きを封じますっ!ネルよ彼の敵の動きを封じよ!忍法『影縫い』」


「私も封じますっ! ネルよマミーの足を串刺しに!忍法『影剣山』」


「動いてる魔物に……うふふ、以蔵さん達は凄いですね。後は蘭にお任せください」


以蔵達は大丈夫そうだな。流石闇の精霊と契約しているだけある。俺よりも闇を扱うのが上手い。以蔵と静音の精霊魔法は次々と動き回るマミーを拘束し、そして串刺しにした。そこへ蘭が魔鉄扇を振り下ろしマミーを真っ二つに切断していった。


夏海の方は凛の放った聖水付きの竜巻刃がデスナイトに当たり、動きを止めた所へ雷鳥が当たりデスナイトは膝をついていた。が、しかし思ったよりもダメージを受けていないようだ。

ん? あれ? 黒く塗った鉄の装備かと思ったがもしかして……『鑑定』……ゲッ! 黒鉄の鎧と剣じゃねーか!しかも硬化の付与付きかよ! たかが中層のボスのたかがデスナイトが!?


「倒せると思ったのですが詰めが甘かったようですね。ならばこの剣で叩き斬るまで! 」


「夏海!デスナイトの装備は黒鉄だ! その上硬化の魔法も付与されてるっ!刀に全力で魔力を込めろ! 援護する!『スロー』 『ヘイスト』 」


「ええ!? なんで中層のボスでそんな贅沢な装備してんのよ! お姉ちゃん私も援護するわ! 『豪炎』 」


「道理でダメージが少なかった訳ですね。光希ありがとうございます。魔力を全力で込めます! ハアァァァァア! 『白雷一閃』 」


俺は夏海に注意をするよう言った後にスローをデスナイトに、ヘイストを夏海に掛け援護した。その結果剣を振りかぶろうとしていたデスナイトの動きが鈍り、そこへ凛の豪炎が当たり完全に動きを止めたデスナイトに夏海が疾風の如く駆け寄った。そして居合い斬りの如く抜刀と同時に斜め横に振り抜いた刀が、デスナイトの鎧を両断した。聖銀とも言われるミスリルの刀で脇腹から左肩を斬られたデスナイトは、鎧と剣を残し消滅した。


「おお〜硬化付きで魔力が通っていた黒鉄を両断したか。腕を上げたな」


「いえ、援護の魔法と光希に頂いたこのミスリルの刀のお陰です。凛ちゃんもありがとう。助かったわ」


「お疲れ様。なかなかしぶとかったわね。それにしてもデスナイトが黒鉄装備とか聞いた事が無いわ。確か氾濫の時にいたダーリンの魔法で消滅したデスナイトはただの黒い鉄鎧だったわよね?」


「ああ、片付けをした者から黒鉄装備が手に入ったとは聞いてないな。そんな物があれば騒ぎになってるだろうしな。恐らく過去の冒険者の遺品かな。まあ、黒鉄素材ゲットで儲かったな」


「その可能性は高いわね。でもお姉ちゃんの斬撃以外の傷が無いのよね。死霊系にやられて死んだのかしら?」


「下層にはグリムリーパーもいるしな。特殊魔法で死神の鎌は魂を斬るから、きっとそれにやられたんだろう」


「うげっ! 私戦った事無いのよね。魂を斬るとかゾッとするわ」


「巨大な鎌を振りかぶるから動きは読みやすいし大丈夫だよ。凛は魔法防御が高いから当たっても苦しいだけで死にはしないよ」


「うへぇ〜当たりたく無いわ。結界張って魔法撃ちまくってるわ」


「ふふふ。私は戦うのが楽しみですね。グリムリーパーは一体どの様な動きをするのか……」


「基本的に宙に浮いて背後からだな。動きがわかれば大した敵じゃない。さて、蘭達も終わったようだし今日はここで野営するか」


そう言ってダンジョンで唯一の安全地帯であるボス部屋にテントを張り2日目の夜を過ごした。ちなみに宝箱の中身は初級聖魔法書と中級ポーションと中級解毒薬だった。ショボイ。


そして夜。全員でお風呂に入り身体の隅々までお互いに洗いっこして、蘭の口を使ったマッサージでスッキリして身体が軽くなった。流石蘭だな上手い。

そして幻術で肌の色を褐色にし、髪の色をシルバーにした蘭と凛と夏海が黒いレースの下着姿でベッドルームに現れた。俺はその瞬間服を脱ぎ捨てながら襲いかかり、最後は三人のお尻を並べて一人づつ順番に愛した。限界まで愛してスッキリした俺は、恋人達と抱き合いながら幸せな眠りについた。サキュバスの時といい、俺の恋人達はホントよく見てるよなぁ。


翌日。朝についもう一回戦づつしてしまった俺は凛に怒られながら朝食を食べ、テントを出て下層を目指した。

41階層からはマミーとマミーの上位種のキングマミーが現れるようになった。しかしキングマミーと言っても耐久力と力が上がった位の違いしかないので、俺の魔法とメイと蘭の攻撃によりサクサクと首をはね飛ばし凛が焼却していった。

そして50階層からキングマミーとデスナイトがセットで現れるようになった。ここからはBランク以上の魔物ばかりになるので、流石の以蔵達も苦戦していた。


「このデスナイトは鉄の鎧なんですね。脆いです」


「黒鉄だったらボーナス階層だったんだけどね。そう旨い話は無いらしい」


「黒鉄はあればあるだけ自衛隊が高値で買い取ってくれるから残念だわ。また現れないかしら?」


「やっぱり過去の冒険者の遺品だったんだろうね。そうそうそんな装備は無いよ」


現れるデスナイトの装備は見慣れた、ただ黒く塗った鉄の鎧だった。たまに黒鉄混じりの剣を持っているのもいたけど、中層ボスのような純黒鉄装備の者はいなかった。

俺達は少し残念な気持ちで次々と襲って来るデスナイト1体とキングマミー6体の集団を殲滅していった。

55層に辿り着くとデスナイトの数が増え、以蔵達の小太刀や手裏剣の損耗も激しくなって来た。

黒鉄じゃこの辺が限界かな。まあ、今までの動きを見ていたが十分使いこなせるだろう。俺はそう判断して以蔵夫婦を呼んだ。


「以蔵に静音。その武器ではここから先は厳しいだろう。黒鉄より扱いが難しいからここまで動きを見させて貰ったが、大丈夫そうなのでこれをやる」


「こ、これはミスリルの短剣……これを私にですか?」


「ミスリル……しかもかなり出来の良い短剣。お屋形様本当によろしいのでしょうか? 」


「問題無い。うちのドワーフに作らせたものだ。使いこなして見せてくれ」


「はっ! 必ずや使いこなして見せまする!」


「有難き幸せにございます。必ずや使いこなして見せます!」


「期待しているよ。それとミスリルの武器を持つならここからは魔力も厳しくなるだろう。これをいくつか渡しておくから飲んでおいてくれ」


「これは上級魔力回復促進剤! このような貴重な物まで……必ずや期待に応える働きをお見せします」


「無理矢理ついてきた足手まといの私達にここまで気を掛けて頂けるなんて……(以蔵と別れようかしら)」


「死なない事が条件だからな。俺に出来る事はするさ、次はお前達が約束を守る番だ。死ぬな」


「は、はっ! 必ずや生きてお役に立ちまする!」


「はいっ! この命、お屋形様の為に!」


暑苦しい……死なれると寝覚めが悪いしミスリルの短剣はゾルが片手間に作ったやつだし、魔力回復促進剤は売るほど余ってるからあげただけだから。グレーの髪をオールバックにしているイケメン以蔵が目を潤ませているのは気持ち悪いが、シルバーグレーの長い髪を片耳にかけて頬を赤く染めている静音はとてもイイから黙っておくか。


以蔵達にアイテムと武器を渡してから更に進み、60階層に辿り着いた時にドッペルゲンガーが現れた。


「え? なにあれ! ダーリンと私? お姉ちゃんも!? え? 鏡? 違う!」


「惑わされるな! 姿形と動きは似ているが魔法は真似できない。落ち着いて魔法を撃てっ!」


「これがドッペルゲンガーですか! クッ……付け焼き刃の刀術など! ハアッ! 」


「ああ……自分に撃つなんて凄く嫌な気分だわ! もうっ! 紋章『氷河期』 」


「俺だって大好きな凛と夏海を攻撃したくないよ。本当に嫌な魔物だ 『天雷』 」


「蘭もこの子達は嫌いです……『豪炎』 」


「お、お屋形様に剣を向けるなど……」


「以蔵! 偽物よ! しっかりなさい!」


俺達の前には5人の俺達ソックリのドッペルゲンガーが待ち受けていた。その表情はどれもニヤついていて、とても腹立たしい顔付きだった。

ドッペルゲンガーの装備は全て魔力で作られている。見た目は似ているが性能は段違いだ。ただ、どうしてか声も話し方も動きもかなり似ている。それに動揺すれば奴らの思うツボだ。

現に事前に話しておいたにも関わらず凛は動揺して動きが鈍っていた。


俺は無心で俺に化けたドッペルゲンガーに天雷を放ち、蘭も嫌そうに蘭に化けたドッペルゲンガーに攻撃していた。できれば凛に似たドッペルゲンガーとか相手したくないもんな。

皆同じ気持ちなのか、それぞれが自分に似たドッペルゲンガーを相手に戦いこれを倒した。

倒されたドッペルゲンガーは、真っ白な身体に顔には目も口も何も無いただののっぺらぼうとなった。


「自分が凍って苦痛の表情で砕け散る姿を見るとかすっごく嫌な気分……」


「似ているだけで大して強くなかったですね。デスナイトの方が戦い甲斐がありました」


「すまぬ静音。狼狽えた」


「以蔵気持ちはわかるわ。でも所詮偽物よ」


「まだまだ序の口だ。この先はグリムリーパーと一緒に現れる。動揺している相手をグリムリーパーが狩る連携をしてくる。そうなれば自分のドッペルゲンガーだけの相手をするだけでは対応できなくなる。今の内に覚悟をしておけ」


「わ、わかったわ……次はひと思いに行くわ」


「偽物は偽物よ。私は愛する光希に化けたドッペルゲンガーが憎いわ」


「蘭も凛ちゃんとなっちゃんの首をはねます!」


「ちょ、ドッペルゲンガーのよ? 間違えて私の首をはねないでよ?」


「蘭ちゃんの前に出るのが怖いわ……」


「大丈夫です! 蘭は凛ちゃんとなっちゃんを間違えません! ……多分」


「多分て言った! 今多分て!」


「蘭ちゃん冗談よね? ちょっと笑えないかなその冗談は……はは」


「うふふふ……」


「念の為結界を張っておこうな?」


俺達は最大の強敵はドッペルゲンガーでもグリムリーパーでも無く、蘭の天然さだと気付いたのだった。



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