第45話 DVD
作者より……いつも話の最後にある♡のクリックありがとうございます。♡のクリック数でこの章は良かったのかこの話は良かったのかと判断できてありがたいです。今後も面白いと思ってもらえたお話には♡クリックお願いします。なろうと違い一話一話でわかるのでとてもありがたいです。
それと今さら気付いたのですが、この章は長編になりそうです。書いてて気付かなかったのかよというツッコミはご遠慮くださいw
ーー 東京都 四ッ谷記念病院 特殊警察隊 新井 啓司 巡査長 ーー
「う……ん……んん? ここは? 」
「新井! よかった! 」
「森田? あれ? お前死んだんじゃなかったのか? 」
あれ? 俺も確か死んだはず……確かあの拉致集団を森田と他の隊員と追って途中交戦して……確かあのやたら強い奴らに腹を刺されたんだよな……森田も胸を刺されて倒れてたのに……なんで俺たち生きてんだ?
「ああ、俺も死んだと思ったんだけどな。どうやら後から追ってきた軍に助けられたみたいだ。貴重な中級ポーションを使ってくれたみたいでさ。それでも俺たちは生死の境を彷徨ってたみたいなんだけど、今朝Light mareを名乗るダークエルフが上級ポーションってのを届けてくれたらしい。『今回の拉致事件で追跡に加わって勇敢に戦った者にお屋形様からのお慈悲だ』という伝言を残してな」
「お屋形様? Light mareって確かあのドラゴンに乗ってた集団だよな? ダークエルフが来たなら間違いないか……そこのボスが特警の俺たちに? 上級て言うくらいだから中級より効果の高いポーションなんだろうが……」
どう言うことだ? 俺たち特警はそのLight mareを襲って全滅させられたんだぞ? その特警に恐らく相当貴重な上級ポーションをくれた?
「俺もよくわからん。が、恐らく特警だとかなんとか関係ないんじゃないか? 敵対したから潰した。そんな認識なんだと思う。しかしこの上級ポーションは凄い! 俺も飲んだら直ぐに動けるようになった。ほかの生き残りにもいま医者が飲ませに行ってる。アイツもすぐに動けるようになるだろう」
「アイツ? 」
「ああ、追跡組では新潟方面に行っていた中山が生き残っている。ほかの奴らは皆……」
「そうか……追跡組は13人死んだか……」
ほかの方面に行った奴らも交戦したってことか。Cランクの俺と森田でもまったく敵わなかったんだ。Dランクの巡査たちじゃ無理だろうな。距離をとって追跡していたが、奴らは積極的に追跡者を排除しにきていたからな。
「ああ……生き残ったのは守衛所に残した二人と追跡組の三人だけだ。25人が奴らにやられた」
「弱かったな俺たち……」
「……ああ、手も足も出なかった」
「それで拉致された職人はどうなったんだ? 」
「それがさっぱり……あとで署に電話して聞いてみるさ。あっ、そうだった。そのダークエルフにポーションと一緒にダンボールを渡されたらしくてさ、中にDVDが入ってたから一式持ってきてたんだった」
「DVD? なんだそれ? 」
「わからん。ただ盤面にAvengerって書いてある」
「はあ? Avenger? 復讐者だったか? 昔あった映画のDVDか? 」
「さあな。高価なポータブルプレイヤーも入ってたから皆で観ろってことじゃないか? 」
「プレイヤーもくれたのか!? 豪勢だな。なんとなく気になるしちょっと観てみようぜ」
「そうだな。ちょっと箱から出してみる……これ新品だな。というか画面が大きいし充電もされてる……よしっ、これで大丈夫だろ。観てみよう」
「すげー高そうだなこれ……ん? なんだ? 真っ暗だな……海か? 空から撮ってるのか? 」
「映画とかじゃなさそうだな。手ブレもあるし個人撮影だろ……って、え? 竜? お、おい! これドラゴンの背から撮ってるぞ! 」
「うおっ! 怖え! ドラゴン超怖え! てことはLight mareのリーダー的な奴が撮ったのを持ってきてくれたのか? 」
でも海の上を飛んでいったいどこへ向かってるんだ? ん? 島? 明かりが見える……お? ドラゴンが岩陰に入って待機してるのか? 明かりがある所を監視してるみたいだが遠くてよくわからんな。
そう思って見ていたらいきなり明るいところへ出て、撮影者の男が何か言ったと思ったら目の前に大勢の人間が這いつくばっていた。
「なっ!? 何が起こったんだ!? 森田わかるか? 」
「いや……さっぱりだ……しかし這いつくばっている男たちの服装……」
「あっ! 拉致集団! てことはLight mareは拉致集団を追跡してたのか! 」
「そうみたいだな。そしてその様子を恐らく胸の位置に固定した小型カメラか何かで撮っているみたいだ。
ん? いつの間に救出したんだ? 」
「おいおい……まったくわからなかったぞ……でも無事職人とその家族は救出されたみたいだ。よかった……」
一瞬の出来事だった。突然視界が変わったと思ったら全てが終わっていた。俺たちが追っていた男たちは制圧され、拉致された職人たちはいつの間にかドラゴンの背にいた。俺たちがまったく敵わなかった奴らをいとも簡単に……
「げっ! 容赦ねーな……首チョンパかよ……うおっ! 次は両腕!? いいぞもっとやれ! 」
「見せしめの後に拷問して誰に命令されたか吐かせてるみたいだ。さすがの特警も軍もここまではしない。だが同僚を殺した奴らだ。とことん痛めつけて欲しいもんだ」
「Avengerか……確かに俺たちに代わって復讐してくれてるな。ん? なんか首輪付けられた奴がペラペラ喋りはじめたぞ? こいつドMか何かか? 気持ち悪りぃな」
「何かの魔道具的なこと言ってなかったか? うっ……後ろで騒いでた奴の首をチャイナ服着た犬耳の美人が掻っ切る光景はトラウマになりそうだ……」
「うわ〜酷薄な笑みを浮かべて首を掻き切ってるよ……やべっ! ゾクゾクしてきた! なんだこの怪しい魅力を持つ美人は……」
さっきから見ているとこの撮影者の男の命令に忠実に従っているところから、部下的な立場の女性なのかもしれない。それにしてもあの人を殺す時の表情は堪らなく美しかったな……
その後は急に場面が変わり遠くにどこかの海岸が映ったと思ったら、戦闘機がドラゴンに向かってきてミサイルを放った。俺も森田も思わず危ない! と叫んでしまったが、ミサイルはドラゴンにあたる手前で何かにぶつかったように爆発した。なるほど、これが軍の奴らが言っていたバリアーみたいなものか。
そしてどこかの土地の上空を対空砲火とミサイルを受けながらもドラゴンはその全てを無視して進み、次に画面が変わった時に映ったのはペンタゴンだった……
「おいっ! ここはアメリカだったのかよ! 道理で見たことある戦闘機だと思ったよ! 」
「ドラゴンでアメリカに乗り込んだのか……おいおい……ペンタゴンにブレス吐いたぞ……」
「なんだこのLight mareのリーダー! メチクチャだ! 頭おかしい! アレはホワイトハウスだぞ! まさか!? マジかよ! やり過ぎだ! 」
駄目だ……このLight mareのリーダーは頭がおかしい。職人を拉致されたからってその報復にアメリカの首都まで乗り込むやつがいるか? これは戦争になる。やばい! 病院で寝てる場合じゃねー!
俺が着替えて早く病院を出なくちゃと思っていたら、撮影者が一万はいる米兵に向かって何かを話していた。なんだ? 聞こえるわけないのに米兵たちは聞こえてる風な感じだな……これも魔法ってやつか?
このリーダーは警告をしてるな……あっ、そんなの関係ないって戦車が砲撃しやがった。
まさか……まさか……
「げっ!? やっぱりやりやがった……」
「せ、戦車が溶けて……なんだこのブレス……こんなの食らったら人間なんか骨も残らないぞ……」
「アメリカの首都で戦車部隊を全滅させやがったよ……こりゃ間違いなく戦争になるな……」
「いや、攻撃が止んだみたいだ。アメリカは完全にビビったな。あらゆる攻撃が通じないんだ。負ける戦争はしないだろう」
「あ〜まあそうだな……いや〜なんかアメリカが可哀想に思えてきたわ……こんな反則的なドラゴンに乗り込まれてよ、生きた心地がしてないだろうな」
「拉致は大統領直々の命令だったようだな。あの合衆国大統領に謝罪と賠償を求めてるよ……アメリカが謝るわけないよな。しかし警告と言っておきながら要求を呑まないなら滅ぼすとか……このLight mareのリーダーは魔王かなにかか? 」
「光の悪魔って意味らしいからな……これどうすんだろアメリカ……え? はあ? マジかよ! 」
おいおいおいおい! 攻略したフィールドに期限があるなんね聞いたことないぞ! え? マジで? 借地なの?
「そんな……本当なのか? いや、ここで嘘を言うメリットは無い……なら本当に? 」
「あ〜中世界は50年もあるのか……それなら日本は余裕あるな。しかし借地だったとはな……ん? なんだ? 拉致集団を解放するのかよ……」
「うおっ! 雷! 」
「…………ヤバイわ……この人マジでヤバイわ……慈悲とかまったく無いわ。いや、同僚の仇を討ってもらって感謝はしてるよ? でもこの佐藤って人ヤバ過ぎるわ……」
拉致集団をドラゴンから下ろして解放するのかと少しつまらない気持ちで見ていたら、急に目の前にぶっとい雷が数十本落ちた。そして雷が落ちた後には、黒焦げとなり崩れ落ちチリとなっていく拉致集団だったものがあった。
ヤバイ……オーバキルだろとかそういう問題じゃないくてこの佐藤って人はヤバ過ぎる! 圧倒的な力を持っているうえに、人を殺すことに躊躇いも容赦も一切ない。人を大量に殺し慣れてるとしか思えない。これは関わったらダメだ。
「お、俺は絶対敵対しないぞ……い、命を助けられたからな。俺はLight mareに恩がある。同期の奴らはまあ運が無かったんだ。新宿での出来事は不幸な出来事だった。うん、仕方ないことだったんだ」
「オイッ! ……気持ちはわかる……とりあえずポーションのお礼と仇をとってくれたお礼は署長から伝えてもらおう。俺たちはこのLight mareに近付かないようにしよう。コレは関わったらダメな人たちだからな」
「ああ……そうする」
俺たちはDVDを見終わり、感謝をしつつも絶対にこの人たちに関わらないと誓った。
この数日後に会うことになるとも知らずに……
ーー 方舟特別エリア アメリカ合衆国 方舟内官邸 合衆国大統領 ミッキー・ローランド ーー
「ジ、ジャン……ド、ドラゴンはどうなった? 倒せたか? 」
「……たった今ホワイトハウス南の楕円公園に着陸し戦車部隊をブレスで全滅させたそうです」
「なっ!? が、合衆国相手に攻撃をしたのか! ニ、ニホンは戦争をしたいのか!? 」
合衆国の首都で合衆国軍を壊滅させただと!? ニホンの奴らは気が狂ったのか!?
「カリフォルニア州に現れた時点でニホンに真っ先に問い合わせさせましたが、ドラゴンに乗るLight mareという集団のリーダーであるミスターサトウはニホン国籍を有していないので、その行動を制限できないとのことです。今回は教え子の職人が攫われたことに対しての私的な報復行動だそうです」
「なんだそれは……異世界とはいえニホン人なのだろ? ニホンと協力関係にあるのは間違いないのだ。異世界人などとは信用できないと言って、ニホン人がやったことだと抗議をしニホン政府にドラゴンを帰すように圧力をかけろ! 」
ここは異世界人や神の使いなどとは信じず、ニホン人だということで押し通しニホンの責任にしなければ国民に説明のしようがない。
「大統領……我々がニホンにしてきた事をお忘れですか? 制裁もそうですが、今回のことでサナダ外務大臣は烈火のごとく我が国を批判してます。それに先日のトウドウ総理の戦争なら受けて立つとも言える態度……この状態でどうしてニホンに圧力を掛けれましょうか……」
「グッ……だいたい何故我が国の仕業だと発覚したのだ! 特殊部隊が捕まるなどありえん! 潜水艦に乗り込んだと報告があったのではないのか!? 潜水艦に乗り込めば我が国の軍事衛星を使えないニホンの索敵能力では見つかるはずがないのだ! それがなぜ捕捉されたんだ! 」
「はい。間違いなく拉致は成功し潜水艦に乗り込みました。そして小笠原諸島で追跡してくる駆逐艦を航行不能にしましたが……グアムでドラゴンに捕捉されたそうです。先ほどグアム基地が破壊されているのを衛星で確認したそうです」
「グアム基地を!? いったいどうやって100m近く海に潜って移動している潜水艦を……グアム基地はニホンもその存在を知らないはずではなかったのか? クソッ! よりにもよって一番敵にしてはならない者を敵にしてしまうとは! 」
慎重に作戦を立て原子力潜水艦まで使わせたというのになぜ見つかったのだ? 外洋に出れば今のニホンでは捕捉することは不可能だと言ってたではないか! グアム基地にしてもニホンには一切極秘にしていた存在なのに……ニホンの諜報力を見くびっていたか……
それにしてもまずい……一番警戒していた相手に見つかってしまうとは……このままでは合衆国の都市が滅ぼされてしまう。
「我々は賭けに失敗したようです。もう首都は破壊されるでしょう。軍も責任を追及されるはずです。ここは特殊部隊の独断ということにし、ニホンへ謝罪をして今回の被害を請求しないことで相殺してもらうしかありません。ニホンも本当のところは我が国と戦争はしたくは無いでしょう。ニホンが受け入れればミスターサトウも矛を収めてくれるはずです」
「そ、そうだな! 幸い一部の者しかこの作戦は知らない。特殊部隊の連中が話すことは無いだろうから、彼らに泥をかぶってもらおう。もしも生き残っていたなら手厚い報酬の生活の保護に保護区への移住を取引材料にすればいい。決して私が命令したとバレないようにな。あくまでも特殊部隊クロウの独断で行ったことにしてくれ」
そうだ。これは特殊部隊の愛国心からなる独断でやったことなのだ。どうせ彼らはもう殺されているだろう。彼らには悪いが泥を被ってもらうしか私が大統領を続ける道も党の未来も無い。遺族を手厚く扱えばわかってくれるだろう。
まずはニホンに一部の軍属の者が暴走したと謝罪文を書くか……クソッ! 私が東洋の猿に詫びなければならないとは! この屈辱忘れんぞ! 再選した後はニホン以外のすべての国と連携して追い詰めてやる! フィールドの攻略をニホン以外のすべての国で邪魔をすればニホンもおとなしくなるはずだ。そうやってなんとかあのドラゴンを抑えねば……
特殊部隊員が生きており、守秘義務を無視して今回の作戦の概要とその発案者と命令者を都市全体に伝わる音量で話したうえに、方舟の秘密までLight mareにより公表されたと聞いたのはその数十分後だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます