第34話 壊滅
「ちょうどいいタイミングだったな。ロシア空軍機が4機編成で来たぞ! さらに後方からもう4機こっちに向かって来ている! リム! グリ子たちと殲滅してこい! 」
札幌の門から日本海に出ると日本艦隊が迎撃準備をしており、そこへちょうどロシア空軍機が対艦攻撃をしに来ているところだった。日本軍の航空機も背後から迎撃に来ているがたったの3機だ。俺たちがいなかったら対応しきれなかっただろう。
俺はグリフォン隊にロシア空軍機を殲滅するよう指示をした。
「ハッ! 光魔王軍行くぞ! まずは先頭の4機を包囲殲滅する! 」
「「「「「 ハッ! 光魔王様の為に! 」」」」」
「ひゃっほーい! ボクが一番乗りだー! 」
「ミラ! 速度を合わせろ! 」
「リム姉さんさん無駄ですよ。いっそ囮にしてミラ姉さんを攻撃しているところを包囲しましょう」
「ふむ……そうだな。ミラなら多少の誤爆は耐えられるだろう。よしっ! 総員ミラもろとも敵機を包囲殲滅せよ! 」
「「「「「 ハッ! 光魔王様の為に! 」」」」」
ひでえ……実の姉妹を囮にしたあげくに一緒に殲滅するとか……巻き込まれるグーリーはツイてないな。
しかし敵機の速度はそれほどでもないな。燃料が少ないのかもしれない。無理矢理8機飛ばしたって感じかな?
俺は空軍機はリムたちに任せて暗くなってきた海面に探知と暗視を使いながら索敵し、日本海を北西へと進んだ。
そしてしばらく飛んでいると前方に15隻ほどの船の反応があった。さらにその後方には30隻ほどの大型の船の反応があり、その船に曳航されている船が同じ数だけあった。
先頭の10隻が軍艦でその後方のが輸送船て感じかな? 恐らく上陸部隊と戦車や装甲車を積載しているのだろう。ここが勝負所と見たのか結構奮発したな。
「お? さっそく対空ミサイルで挨拶してきたな。ミサイルには魔力は感じない。クオン突っ込め! 」
クォォォォン!
「ちょ、クオン! なんでそんなに無駄に首を振るのよ! 揺れるじゃない! 」
「あははは! クオンが狂ってるよ! 」
「あ〜アレじゃない? キングギ○ラが登場するシーンを真似してるのよ」
「なるほど。頭が一つしかないから他の頭の分も余分に振ってるのね」
「なんだかクオンちゃん、頭の弱い子みたいです」
俺がクオンに艦隊に突っ込むように指示をすると、クオンは狂ったように頭を振り回して降下していった。しかしそのおかげでクオンの背は大きく揺れて凛が文句を言っている。どうやらクオンは宇宙怪獣になりきっているようだ。多分クオンは今リアルタイムで黒歴史を作ってるところなんだろう。恋人たちには結構厳しいこと言われてるけど、そんなの耳に入らないよな。うんわかるよ。
そんな絶賛厨二病全開中のクオンは自分より弱い敵には超強気なこともあり、迫り来るミサイルを全て防ぎつつ勇猛果敢に降下をし、ロシア艦隊の中央にいる巡洋艦へと狙いを定めブレスを吐いた。
グォォォォォ!
クオンのブレスを真上からモロに受けた巡洋艦は甲板を一瞬で溶かされ、爆発をしながら真っ二つに折れ沈没した。そしてクオンは再び上空には飛ばず、沈没した巡洋艦があった位置で滞空しながら周囲の駆逐艦へブレスを吐いていた。当然周囲の駆逐艦や巡洋艦からミサイルや対艦砲が発射されクオンに当たるが、その全てが魔法障壁に防がれていた。
「おい! クオン! 遊ぶな! 上空に飛べ! 映画のワンシーンなんか真似してんじゃねえ! 」
ク、クォォン
「今いいところだったのにじゃねえよ! 無駄に被弾してんじゃねーか!視界が悪くてなんも見えねえんだよ! 余裕かましてんな! 俺が魔法障壁消し飛ばすぞ! 」
クォンクォン!
「ったく! 一撃離脱だって言っただろ。あと10隻だ、ヒットアンドアウェイでいくぞ! 」
クォォォォン!
「クオンたらもうっ! いくら魔法障壁があるからってこんなに集中砲火を受けると怖いわよ」
「あははは! クオンのやつ旦那さまに怒られてやんの! 」
「こんな予感がしてたのよね〜。コウに怒られると思わなかったのかしら? 」
「こうやって相手が弱いからって余裕出していつも負けてるのに学習しない子よね」
「うふふ。そんなクオンちゃんも可愛いです」
まったくクオンのやつ調子に乗りやがって。こんな艦隊とっとと殲滅して九州に行かなきゃなんないってのに。
俺に怒られたクオンは再び上昇して降下と共にブレスを吐き、それと同時に放たれた俺の雷龍牙と蘭の狐月炎弾で周囲の軍艦は駆逐艦一隻を残し壊滅した。艦隊の後方にいた60隻の輸送船は、前方の艦隊に襲い掛かるクオンを確認した途端に反転して退却をしていった。
俺はその輸送船団を後方から追撃し、三隻ほどを残して全て海の藻屑とした。
「人様の土地を侵略しようとしたんだ。一割程度の生き証人は残すが他は生きて返すつもりはない。さて、ここはこんなもんかな。『リム! そっちは終わったか? 』 」
俺はインカムでリムに空軍機の殲滅状況を聞いた。
『ハッ! 全機撃墜しました! 』
『うっ……ううっ……ひどいや……ボクがいるのに魔法攻撃するなんて……うわあああん 』
『ミラ姉さんお手柄ですわ。姉さんのおかげで楽に撃墜することができましたわ』
『あーうん、お疲れさん。ミラ、良くやったな。帰ったら何かご褒美やるから九州方面も頼むぞ? 』
『ううっ……え? ご褒美くれるの!? やったー! 何をもらえるんだろう? 楽しみだなー! 魔法の槍とかいいかも! 』
『光魔王様はミラに甘すぎです』
『そうです! ミラばかりズルいです! 私もご褒美欲しいです。子種とか子種とか! 』
『ははは、帰ったら皆の槍に付与してやるよ。さあ九州方面に行って次は南朝鮮と中華の船を沈めるぞ! 』
『『ハッ! 』』
『やったー! 槍から魔法を出せる! 魔力も節約できる! 無敵モードが長くなる! グーリー! 次も頑張ろ! 』
キュオォ……
グーリーは凄く嫌そうだな。ミラを乗せる時嫌がってたもんな。その結果が味方からフレンドリーファイアとか悲惨だよな。
俺は味方の攻撃に巻き込まれて泣いてたミラを憐れに思い慰めたつもりだったが、グーリーにも何かご褒美をあげなきゃなと考えていた。
「あ〜こっちはロシアの比じゃない数だな。既に何隻かに上陸されてるが、次々と反応が消えてるから以蔵たちが頑張ってるみたいだな」
「うわ〜すっごいなこれ! こんな広範囲で来られたら防げないよな」
「ほんとなにこれ!? 大型の船に一体何隻の木造船が曳航されてんのよ……」
「これは完全に撃沈されるのを前提とした物量作戦ですね……」
「日本の戦闘機が飛んでないわね。燃料と弾薬切れかしら?」
「蘭はこんなにたくさんの船を始めて見ました」
「さすが命の軽い人余りの独裁国家だな。日本の10隻程度の艦隊じゃこれは防げないな」
俺たちが九州沿岸に辿り着くと、南朝鮮の旗や中華国の旗を掲げた船が暗い海の上を灯りをつけながら広範囲から押し寄せてきていた。数百隻はありそうなその船を暗視で確認すると、大型の船に数十隻の木造船が一列に曳航されていたり、小型の漁船らしきものが陣形を組んで向かってきていたりと様々だった。日本の艦隊はミサイルが切れたようで、機関砲の届く範囲を攻撃するのが精一杯のようだった。そうしている間に数の暴力に呑み込まれ、至近距離から対戦車砲を撃ち込まれでもしたのか中破している駆逐艦も見受けられた。
『リム! 日本艦隊に近づく船と海岸に上陸しようとしている船を沈めろ! 俺は後方の大型船の群れを北から南へ一掃する! 』
『『『ハッ! 光魔王様の為に! 』』』
「セルシア! せっかく飛べるんだ、リムたちと一緒に暴れてこい! 」
「わかった! 旦那さまの役に立つ女だってことみせてやるよ! 行ってくる! 」
「ああ、行ってこい! あとは凛、夏海。撃てるか? 」
「ええ、もう大丈夫よ。私にはダーリンがいるから」
「大丈夫です。心の整理は終わりました。光希のおかげです」
「そうか……動けなくするだけだと潮の流れで日本に辿り着く可能性がある。夜だから探知を全開で掛けて必ず沈めろ! 侵略して人間を奴隷にするような国に情けはかけるな! 」
「「「「はい! 」」」」
俺はそう言ってクオンを木造船を曳航している大型客船や巡洋艦の群れに突っ込ませた。
大型客船や巡洋艦は俺たちが近づくとその全ての船が動揺したのか針路をバラバラに変え、船同士で接触して大破したり、曳航されていた木造船が転覆したりしていた。
そこへクオンが容赦なくブレスを吐き、大型客船は派手に爆発し木造船は盛大に燃え上がった。俺はクオンにそのまま低空飛行で船が密集しているところに向かって飛ぶように言い、魔法障壁を最大限に利用して体当たりをさせ次々と薙ぎ払わせた。それと同時に俺たちは周辺の船に魔法を放っていった。
『轟雷』
『狐月炎弾』
「シルフ! 思いっきりやってちょうだい! 『シルフの鉄槌』 」
『豪炎』
「天津青雷刀よ……『天津天雷』 」
「クオン! 次は西に行ってから南だ! 」
クォォォォン!
「ミサイルとかほとんど飛んでこないわね」
「機関砲ばっかりね。これなら結界が無くても余裕だったわね。あ、シルフ! あそこの小型船群を転覆させて! 」
「ロシアに比べると装備が古いですね」
「中華じゃこんなもんだろ。もともと海上戦力は少ない国だからな。東南アジアとオーストラリアへ侵攻ができたのは、戦後の混乱期に奇襲したというのもあるがロシアのおかげだろう」
「あんなボロ船で日本海を渡ってこれたのは奇跡ね」
「途中で数十隻は脱落してそうよね」
「沖縄に台風が近づいてきているらしいので急いだのでしょうね」
「なんでもいいさ、ここで駆逐艦一隻を残してその他全ての船が海の藻屑となるんだからな。二度と他国に侵攻できないようにしてやるさ」
船も港も全て破壊すればしばらくはおとなしくなるだろう。明るくなったら首都に挨拶にも行っておくかな。あの国のことだから政府幹部は全員攻略したフィールドに宮殿でも建ててそこにいるんだろうがな。中華人じゃないから中に入って殺せないのは悔しいな。
俺は中華国やロシアの権力者に何もできない悔しさを感じながら、その後も作業のように船を沈めていった。
そして二時間ほど経過し、海上にいる船は逃げていく一隻の駆逐艦を除き全て沈めたのだった。
俺はクオンを海岸へと向かわせセルシアとリムたちと合流し、以蔵に無線で指示をした後に福岡の門へと向かった。
《 おっ! 来たぞ! 教官だ! 》
《 凄い戦いだったな…… 》
《 あのドラゴンは初めて見るが巡洋艦の対空砲火がまったく効いてなかったよな 》
《 海岸にいた以蔵さんたちもヤバかったらしいぞ? 上陸した南朝鮮の奴らを皆殺しにしていたと報告があった 》
《 あーあの人たちは容赦ないからな。首チョンパしてたんだろうな 》
《 すっごい美人なのに、訓練の時にクナイでオーガの首を飛ばしたのを見て俺は諦めたよ…… 》
《 おいっ! 教官が降りてきたぞ! 》
《 整列! 佐藤殿に敬礼! 》
俺たちが福岡の門の近くに着陸すると、門を守っていた第一方舟攻略師団の奴らが直立不動で敬礼していた。別に訓練に参加していなかった連隊長までなんで敬礼してんだよ……
「よう、しばらくぶりだな。俺たちは政府からの要請に従い札幌に向かっていたロシア艦隊を殲滅した後に、ここ九州に上陸しようとしていた中華と南朝鮮のボロ船を沈めてきた。もう日本の領海には一隻の船もいない。お前らもご苦労だったな」
「「「「「うおおおおおお! 」」」」」
《 マジか! ロシア艦隊もか! 》
《 やべえ、教官たちだけで中露艦隊全滅させたとかやべえ! 》
《 さすが教官たちだ! 世界最強なだけはあるな 》
「あちゃ〜教官! 俺たちやる気満々で来たんですよ? 上陸した奴らを全滅させるつもりだったのに少しは残しておいてくださいよ」
《 おいっ! あの馬鹿を黙らせろ! 》
《 あいつは第三連隊のお調子者で有名なやつだ! 》
《 訓練の時は泣き喚いてたくせにあの野郎いらんことを! 》
《 教官の性格だとやばいぞ! 早く黙らせろ! いや殺せ! 》
「ほほぅ……そうか。それは悪いことをしたな。そうかそうか戦いたいのか。お前は確か第三連隊の槍士だったな。さすが第三連隊はやる気が有り余っているな。わかった!ちょうど門もあることだしこれから第三連隊には特別に訓練をしてやろう! 中世界草原フィールドで6時間連続狩り放題ツアーをやってやる! 」
あいつは確か泣きながら槍を振ってた奴だったな、変われば変わるもんだ。なかなかやる気に満ちていていいな。これは教官としてしっかり応えてやらないとな。
「へ? え? いや、そういう意味ではなくて……」
「「「「「ぎゃーーー! 」」」」」
《 吉田!テメー何やってくれてんだよ! ふざけんな! 》
《 そうよ! 戦いたいならあんただけ戦いなさいよ! なんで巻き込むのよ! 》
《 やだよーもうあんな地獄はやだよー 》
《 おいっ! 中華の奴らまだいるだろ? いるなら早く来いよ! 中世界でよりお前たちと戦いたいんだよー 》
《 良かった……第三連隊だけでよかった…… 》
《 いいか! うちの連隊は喋るなよ! 静かにやり過ごせ! これは命令だ! 》
「せっかくだし第三連隊長も一緒にどうですか? Bランクですし部下の成長を見てみたいでしょう? 」
「え? いや、私はこれから師団長に報告が……うおっ! ……い、行きます」
おや? 中隊長を始め一斉に隊員たちが連隊長に鋭い眼差しを向けているな。よほど連隊長に訓練の成果を見て欲しいとみえる。部下に慕われてるんだな。
《 連隊長だけ逃がしてなるものか 》
《 俺たちに訓練をつけるように教官に頼んだ癖に最初の訓練に参加してなかったくせにな 》
《 あの地獄を連隊長にも味あわせてやる…… 》
「そうですか。それでは訓練の成果を見てもらうためにとりあえず千の魔物と戦わせますよ」
「「「「「えええええ!? 」」」」」
「え? なに? できないの? なら前と同じメニューがいいかな」
「「「「「できます! やります! 」」」」」
「そうか? なら行こうか。蘭とリムたちだけ付いてきてくれ。凛たちは今日はここで以蔵たちを待って野営していてくれ。朝までには俺も戻るから」
「ダーリンもサービス精神旺盛ね。わかったわ。ほどほどにしてあげてね」
「コウったら楽しそうね。いいわ、もう夜だしゆっくり待ってるわ」
「ふふっ、第三連隊は運がいいですね。また強くなれますね」
「よしっ! リム! 連隊のケツ叩きを頼むぞ! 」
「ハッ! 聞いたから貴様ら! ちょうど良かった、第三連隊は鍛え足りないと思っていたところだ。今回は光魔王様のご好意で補習訓練を受けられることになった幸運をしっかり噛み締めて死ぬ気で戦え! 」
「「「「「………… 」」」」」
「なんだその絶望したような顔は! 強くなれるのだぞ! もっと嬉しそうにしろ! そんなに絶望したいならオーガの群れに一人ずつ投げ込んでやろうか? 」
「「「「「 こ、幸運に感謝します! 」」」」」
「笑え! 」
「「「「「 りょ、了解! 」」」」」
「よしっ!いい笑顔だ。連隊長! 号令を! 」
「は、はひっ! だ、第一中隊より駆け足で門へ! 」
うんうん、いい感じだ。皆が嬉しそうに門へと入っていく。リムの言う通り第三連隊はちょっと物足りない仕上がりだったんだよな。特に隊長クラスの能力の伸びが他の連隊より悪かったんだ。今回は指揮官クラスを前にどんどん出していくかな。
こうして中露連合の侵攻をあっさりと迎撃した俺は、敵の港への攻撃はより恐怖感を煽るためにも明るくなってからやることにして、第三連隊を鍛えに中世界草原フィールドへと向かうのだった。
連合は脱退したしな。もう堂々とやるとするか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます