第49話 楽園







オーストラリア人が中華国政府に反旗を翻し独立した日から数日が経過した。


もう夏真っ盛りなはずなのに辺りには緑生い茂る木々は無く、蝉のあのうるさい鳴き声も聞こえないただ暑いだけの夏がやってきた。



オージーたちの訓練にアメリカへの報復、そして中華国への復讐の手伝いとフル稼働だった俺たちは全員休暇を取ることにして皆には好きに過ごしてもらった。

ドワーフやホビットたちは教え子である日本の職人たちのところに遊びに行き、ダークエルフたちは休めと言っているのに日本語と英語の勉強と自主訓練に励んでいた。サキュバスとインキュバスは、交代で休みつつ資源フィールドで探知の魔法の練習をしていた。

俺と恋人たちとセルシアにイスラとニーチェは沖縄の海に行って遊んで過ごしたりした。


その間世界はというと、オージーたちにより党の幹部をことごとく殺された中華国は予想通り大混乱となっていた。真田大臣の予想ではとりあえずは各門の管理を任されていた者と、攻略済みフィールドの管理を任されていた者に軍の生き残りで話し合いが行われ、新たな党幹部が決まるだろうという事だった。ただ、もともと下級党員だった者同士の上に軍の人間もいる。恐らくは三つの勢力または国に分かれるのではないかと予想しているようだ。その過程でかなり激しい争いが起こる可能性もあるらしい。

俺は中華国が今後どうなるか興味も無かったので、大変だなぁくらいにしか思わなかった。


それと真田大臣がロシアの外相と接触したらしく、ロシアは俺たちと平和条約を結びたいらしいと言っていたらしい。俺はまず日本に侵攻したことに対しての謝罪と賠償と、東南アジア人の解放と彼らへの謝罪と賠償をしたら停戦協定を結んでもいいと言った。嫌なら定期的に首都にドラゴンで遊びにいくし、東南アジアの人を見つけ次第鍛えて中華国と同じ末路を辿らせてやると伝えてもらうよう頼んだ。

大臣は凄くいい難いことを私に言わせるんだねと声が震えていた。

そうかな? 圧倒的上位の実力を持つ者から出すならこの程度の要求は普通だと思うけどな。


というか俺より先に日本に謝罪と賠償だと思うんだよね。相変わらず日本は舐められてるよな。まあ真田大臣もずっとロシアを無視してたみたいだけどね。それでも日本が既に強国だという自覚が日本にもロシアにもまだ無いみたいなんだよな。自力で小世界フィールドを10個攻略したのにね。


そうそう。シドニーから帰った時に留守番のマリーから、日本軍が小世界の森4つと山3つに海3つを攻略したと聞いたんだ。期限ギリギリだったらしいが死者を出さず攻略したらしい。他国と数度戦闘になったが圧倒したようだ。まあ当然だよな、ランクも装備も技量も全然違う上にこっちには中級ポーションまであるんだから。

まあとりあえずは目的は達したので攻略師団のやつらも休ませてやっている。今はな。


んでアメリカだが、俺が設定した期限を待たずに全面的に詫びを入れてきた。ただ、詫びを入れてきたのはローランドとかいう白人至上主義の大統領ではなく、ヒスリー・クリキントという女性大統領だった。この人は元は副大統領だったらしい。まあつまりローランド大統領は死んだってことだ。


日本政府の協力者の情報によると、 俺がアメリカで愛のあるTシャツを着て警告したあと、国民の怒りは全て大統領に向かった。大統領は方舟の特別エリアにこもりながら色々と国民に言い訳したり、日本政府を通じて俺にアポイントを取ろうとしていたらしい。しかし日本政府はこれを拒絶。一切とりあわなかった。

そうこうしている間に地上では、ホワイトハウスと財閥の役員など上流階級の者の家が連日怒り狂った国民に包囲され、それを抑える軍も警察もやる気なく対応するほど政府と権力者は信頼を失ったようだった。


ほぼ引きずり出されるように方舟の特別エリアから国民の前で釈明せざるを得なくなった大統領は、方舟攻略で殉職した者の慰霊祭に出席し全てを国民に話すことになった。それまでに与党議員の家が暴徒に襲われるなどして事態を収拾せざるを得なかったからだ。この時大統領は辞任を決意していたらしい。

しかしその慰霊祭の最中に日本でいうハンター集団の襲撃により殺害された。火魔法による攻撃だったらしい。犯人は特定できていないらしく、しかも未だ逃走中で見つかっていないそうだ。


あのアメリカが大統領をみすみす殺害された上に犯人を取り逃がす? SPは皆高ランクの者たちなのに? 俺は与党の有力者か財閥の人間が、自身の保身のために早く事態を収拾したいからやったんだなと疑ったね。

大統領は最後まで日本に全面的に謝罪をする事を渋ってたらしいからな。馬鹿な男だよな、頭なんかいくら下げても減るもんじゃないのにな。人種差別なんかするから命を失うんだよ。


まあそんなこんなで副大統領が臨時で大統領に就任して、今回の拉致事件は前大統領の独断で行ったことであり、日本国には心から謝罪するということ。今回のことで命を失った者たちには誠心誠意謝罪と賠償を行うと声明を出したので俺は矛を収めることにした。白人至上主義者の前大統領に謝罪させたかったけどな。死んだなら仕方ない。


俺が謝罪を受け取ったことを聞いた米国はホッと胸をなでおろしたようだがあの米国のことだ、力で敵わないなら搦め手でくるに違いない。方舟のフィールドを次々と攻略していく今の日本は出る杭だからな。米国の味方をする国はいくらでもいる。次からは外交的に日本を追い詰めてくるだろうな。

いくら小世界フィールドでも世界各国で決めた上限人数を撤廃されて、日本以外の国で協力して参加人数増やされたら攻略は難しくなるだろうな。

俺たちが手伝えば余裕だが、なるべく日本人だけでやらせたい。

まずはどういう出方をしてくるか様子見だな。



とまあここ数日の世界の動きはこんな感じで、俺はいま12名のダークエルフたちを訓練するために沖縄の離島に来ている。かなり特殊な訓練をするので恋人たちには留守番をしてもらっている。蘭と凛は笑っていたけどな。もしかして勘付かれたか?


「よしっ! 全員着替えたな。それではこれよりお前たちを一流のくノ一にするための訓練を行う! 」


「「「「「 はっ! ありがたき幸せ! 」」」」」


「うん、皆なかなか似合ってるぞ! 雪乃はそれを選んだのか。なかなか大胆だな。しずくは黒にしたのか、うんうん素晴らしい! 」


「は、はっ! お、お褒めいただき嬉しく思います」


「あ、ありがたき幸せ……あの……お屋形様? 」


「ん? どうした雫。なにか質問か? 」


「はっ! あ、あの……くノ一の訓練をするのになぜ水着姿なのでしょうか? 」


「ああそうだな。くノ一の訓練に水着。疑問に思うのは仕方ないと思う。そうだな、雫は忍者とはどういう存在だと思っている? 」


「はっ! 忍者とは隠密行動に長け、ひとたび命あらばお屋形様の刃となり敵を打ち砕く存在でございます! 」


「そうか。それでは雪乃、隠密行動とはどういうものだ? 」


「はっ! 闇に紛れ敵の情報を収集し、または撹乱することでございます」


「違うな。闇だけではない、光の下でも隠密行動を行うのだ」


「ひ、光の下での隠密でございますか? か、影があれば闇精霊を駆使してできなくもないですが……」


「そうじゃない。闇精霊など使わなくても隠密行動はとれる。ようは敵に間者だと気付かれなければいいんだ」


「な、なるほど……」


「しかしお前たちにはそれはできない。つまり忍びとして、くノ一として半人前だということだ」


「「「「「 !? 」」」」」


《 わ、我らが半人前…… 》


《 そ、そんな……あれほど修行をしたというのに……》


《 し、しかし本物を知る日本人のお屋形様がおっしゃるのだ……悔しいがそうなのであろう…… 》


《 お屋形様がおっしゃるのなら我らは半人前だ。現実を受け止めよう 》



「一人前の忍びに、くノ一になりたいか? 」


「「「「「 はっ! なりたいです! 」」」」」


「わかった。お前たちを一流のくノ一にしてやろう」


「「「「「 はっ! ご指導お願いいたしますお屋形様! 」」」」」


よしっ! うまくいった! 俺はそっと紫音に親指を立てた。それに気付いた紫音も無表情でピースサインを送ってくれた。いや、口元が少しニヤついてるな。

今日この日のために恋人たちには内緒で紫音と計画をした甲斐があるというものだ。

そう、俺は今日夢を叶えるために未婚でフリーのダークエルフの女の子たちを連れてこの離島に来た。どうやって未婚とフリーのダークエルフのみを集めたのかはわからないが、紫音はいい仕事をしてくれた。


いま俺の目の前には紫音と桜を含め大胆な水着を着たスタイル抜群の女の子たちが12人もいる!

紫音は黒のかぎ編みニットの水着というかもうほとんど裸姿で、桜は白のマイクロビキニを着てあまりの露出の多さに顔を真っ赤にしている。きっと紫音に着せられたのだろう。

雪乃はその真っ白な髪をまとめ上げてパープルのワンショルダーの水着を身に付け、Hはありそうなその胸がはみ出しそうだ。雫なんてほとんどヒモにしか見えない黒の水着を着ている。普段大人しそうなのになかなか大胆だな。そのほかの女の子たちもほとんどビキニにTバックだ。これはたまらん!おっと、興奮してる場合じゃないな。訓練訓練。


「わかった。それではこれより訓練を行う! まずは今回自分で選んだ水着を見ろ。みんなとても綺麗で魅力的だぞ? 普段から忍び装束を身にまとっているからこんなにみんなが魅力的だとは知らなかった」


《 え……私が綺麗? 》


《 魅力的? 》


《 お、お屋形様のお褒めにあずかるなど……そんなに? 》


《 し、紫音! わ、私が魅力的だって! 》


《 …………嬉しい 》


「光の下で隠密行動を行うには風景に溶け込む必要がある。つまり周りの女性と同じくおしゃれをしなければ逆に目立つ。わかるな? 」


「「「「「 はっ! 」」」」」


《 確かにお屋形様のおっしゃる通りだ 》


《 さすが本物を知るお方よ…… 》


《 忍び装束では確かに目立つな 》


「次にお前たちの話し方だ! そんな堅い口調ではすぐに間者だとバレるぞ! もっと柔らかく見た目通り女の子らしい話し方をしろ! これは普段から心掛けよ! 」


そうだ、堅苦しい言葉遣いをやめるんだ! そしてグッと距離を縮めるんだ!


「「「「「 はっ! 」」」」」


《 お、女の子らしい言葉とは……こ、こんな感じかしら? 》


《 そ、そうじゃないか? ていうか〜って感じ? 》


《 それは些か若すぎではないか? 凛奥様のような感じでよいのでは? 》


《 し、紫音! お、女の子らしい話し方ってどういうものだ? わ、私は女の子らしくないのか? 》


《 ……桜は男っぽい……お姉ちゃんもちょっと自信ない 》


「まあ、そこは蘭やシルフィに凛をよく観察しておけ。次に俺とお前たちだけでいる時は、お屋形様とは呼ばず光希様と呼べ! これはいかなる身分の者が相手の時も親しくなり情報を得るための練習だ。必ず実行しろ! 」


「「「「「えっ!? 」」」」」


《 お、お屋形様をな、名前で呼ぶなど無礼では? 》


《 わ、我ら……私たちの主人を名前で呼ぶなんて…… 》


《 …………みんな。私は既にそう呼んでいる……わ 》


《 な、なんですって!? 紫音様が既に!? 》


《 紫音様がそれでお怒りを買わないのなら、私も光希様とその……呼びたいわ 》


《 わ、我…私も…… 》


《 紫音は確かにそう呼んでいた……わ。それなら私も…… 》


「さあ、どうした? これができないなら一流にはなれんぞ? 」


「は、はっ! こ、光希……様」


「「「「こ、光希様」」」」


キターーーー! やっと壁を越えたぞ! イイ! このまま一気にいくぞ!


「そうだ! よくできたな! さあ次は女の子らしい遊びを覚えるんだ! まずはビーチバレーに海に入ってから波との戯れだ!その前に日焼けをしないようにオイルをみんなで塗りっこなんてのも女の子らしいぞ。俺も塗ってやる。さあ、みんなであのパラソルの下で実技訓練だ! 」


「「「「「はいっ! 光希様! よろしくお願いします 」」」」」


「ああ、さあ行こう! 紫音は俺が塗ってやる。ご褒美だ」


「…………んふっ♪ 隅々まで塗ってください」


「ああ、見本をみせないとな」



俺ははやる心を抑えながら紫音の手を取りパラソルの下に寝かせ、水着をずらしてオイルを塗った。それを見たほかのダークエルフたちはお互いにオイルを塗りあっていた。俺は紫音のたっての希望で前も塗ってやることにして、水着を脱がせその豊満でぱつんぱつんの弾力がある胸にオイルをこれでもかと塗りたぐった。

紫音は俺の指が胸の中央に引っ掛かるたびに「んっ」と声を漏らし、それが堪らなく興奮した。


紫音にオイルを塗ってあげたあとは桜に塗り残しがあると因縁をつけ、そのマイクロビキニの隙間に手を入れオイルを塗ってあげた。桜は恥ずかしいのかずっと両手で顔を抑えていた。それを見たほかのダークエルフたちも俺に塗り残しが無いか確認して欲しいと言ってきて、俺は全員に合法セクハラの限りを尽くした。


それからは皆でビーチバレーをしたりスイカ割りをしたりと楽しみ、海では一人づつ俺が飛翔の魔法で上空に運び飛び込みなどをして楽しんだ。一人づつ抱きしめて上空に飛んだもんだから俺の興奮度はMAXだったね!

そして昼には皆でバーベキューをし、かなり打ち解けて俺の腕に抱きついてくる子なんてのも出てきた。それから俺が目隠しして鬼になる鬼ごっこをした。もうみんなキャーキャー言ってさ、これだよこれ!って俺は大満足だったよ。


そんなこんなで夕方になって皆で拠点に帰ることになった。


「うん! みんないい顔になった! とても可愛いよ。これでもう一流のくノ一だな。拠点に帰ったら男のダークエルフたちはびっくりすると思うぞ。今日はとても楽しかった。訓練とは別にまた海に来よう! 」


「「「「「はーーい! 」」」」」


《 キャー! 光希様に可愛いって言われたわ! これはこんな私にもチャンスがあるかも! 》


《 わ、私も! 光希様がいいわ 。この身体は光希様に戻していただいた身体で……もともと光希様の物なの 》


《 雫は光希様にくっつきすぎよ……私だって光希様にもっと触って欲しかったのに…… 》


《 ずっと命を懸けて仕える主と思って接していたのにこんなに身近に感じるなんて……あの凛々しいお顔の光希様に私は不釣り合いだけど……でも運命を感じるわ 》


《 我……私も男性としてではなく仕える主として見ていたわ。だってあんなに理想のお顔をされている方が私になんて見向きもしないと思っていたもの。でもこんな私を見つめて優しいお声を掛けてくださって……胸が熱いの…… 》


《 ああ……もう里の不細工な男なんて目に入らないわ…… 》


《 私たちをあの地獄から救ってくださって、いつも私たちを気に掛けてくださって……もしも恋人になれたら…… 》


《…………しまった……これは誤算…… 》


《 どうしたん……の? 紫音……それより私、光希様にとっても恥ずかしいところいっぱい触られちゃった……もう光希様にしか触れられたくない……わ 》


《 …………桜うるさい……帰ったら男どもとなんとかしてくっつけなきゃ……》



「それじゃあ帰ろうか。『ゲート』 」


いや〜みんな女の子らしい顔になったな。遊んでる最中にスキンシップしながら話し方とか色々教えた甲斐があったよ。しかし12人中7人も男と付き合った事が無いって言うんだからびっくりだよな。やっぱあの閉じ込められていた40年は大きかったんだな。この子たちには普通の女の子として幸せになって欲しいな。

元の世界に帰ったら留守番組の女の子たちも訓練しなきゃな。んでまたビーチに来て今度はもっと大勢のダークエルフの女の子たちと……あ〜早く帰りたい。


俺はなにやら深刻な雰囲気を醸し出している紫音を不思議に思いながら、夢の第一段階を達成したことに大満足をしていた。帰ったらこの溜まりに溜まったムラムラを、寂しい思いをさせてしまった恋人たちをたくさん愛することで発散しよう。


あ〜幸せだな〜



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