第9話 助けられた者達





《アンタ!》


《とうちゃん!》


《エルマ! ロイ! 無事で良かった》


《アニキ!》


《イスラ! 心配してたぞ》


《ニーチェ! よく無事でいてくれた。父さんは毎日毎日心配で……うっ……ううっ》


《……勇者様が助けてくれた……悪魔に囚われた私を……》


《ん? 勇者様? あの彼の事か?》


《うん……コウキ サトウ……》


《そうか、サトウというのか彼は》


クオンに乗って塔の所で降りた俺は、蘭達にはそのままクオンを連れ塔から出てきたと思われる悪魔達を掃討してくるように指示した。その際にサキュバスとインキュバスは見つけたら殺さずに捕らえるように伝え、俺はドワーフの女性達を連れてドワーフとホビットの男達がいる工房に行き彼等を再会させた。


再会を喜ぶ彼らが落ち着いた所で俺は声を掛けた。


《皆さん改めまして俺はSランク冒険者パーティLight mare光の悪魔のリーダーをしている光希 佐藤と申します。冒険者連合より依頼を受け、この女神の島に巣食う悪魔達を殲滅し島を占領する為に来ました》


《Sランクパーティだったのか! 光の悪魔……聞いたことがないな。とにかく家族を助けてくれてありがとうよ》


《Sランク!? そうか、強いはずだ。サトウさん助けてくれてありがとう。この恩は一生忘れねえ》


《光の勇者様……》



《いえ、この島を手に入れる過程での事ですのでお気になさらず。取り敢えず貴方達の置かれている状況を説明しますね。まずここは貴方達がいた世界ではく勇者が生まれ…………》


俺はドワーフとホビット達に、この世界はアトランやムーアン大陸がある世界ではないこと。勇者が生まれた日本がある世界だという事。この世界には彼らの世界から転移して来たダンジョンある事。雑な女神によりその転移に島ごと巻き込まれた事。その他諸々を説明した。そしてこれからこの世界の住人で作った冒険者連合所属の冒険者が来るが、俺がここにいる全員の安全を保証するという事を約束した。


《やはりそうだったのか……しかしここが勇者様の生まれた世界だとは……》


《気候も星の位置も違ったので違う世界だとは思っていましたが、まさか私達の世界から消えたダンジョンが転移して来ているとは……》


《この世界にはダンジョンが元々無かった? 信じられん……》


《しかしリアラ様は本当にもう……お陰で私達は助かったんだけどさ……》


《おかしいと思っていた。ダンジョンが無くなり戦争ばかりして弱体化した人族に、これほど強い人がいる筈がないんだ。それなら納得だ》


《やはり人族は弱体化してましたか。ドワーフの方も魔法書が手に入らないのではないですか?》


《錬金と付与の魔法書は、俺も妹のイスラも幼い時に両親が用意してくれたから初級は覚える事はできた。だが、俺達より後に生まれた者は厳しかったな》


《そうですか。やはりダンジョンが無くなった影響は大きいですね。良くも悪くもダンジョンがある事が前提の社会でしたからね》


《200年後にはもう付与魔法を使える者はいなくなってるだろうな。そんなタイミングでヴェール大陸に魔王が現れれば……》


《そんな状態の世界からこの島まで取り上げるとは……まるでこの世界の神にクレームでも貰って、慌てて対処でもしたかのような無計画で突発的な行動ですね。いや、まさか……ありえるな》


《この世界の神からしたらダンジョンを送られて大迷惑だろう。文句の一つも言って当たり前だろうさ》


俺はこの世界のどの神にかは分からないが、クレームをもらって島の状態を確認する事もなく慌ててこの島を送って来た駄女神の姿がが浮かんだ。


いや本当にありえるな……


《はぁ〜……今は駄女神の話よりも、まずは貴方達の今後の話の方が大切ですね。今後ここで工房を続けてもいいですが、この世界の言語と貴方達の話す言語は違います。その上この世界には複数の言語があります。まずは生活の基盤を整え、この世界に慣れてから仕事を再開するというのはどうでしょう? この世界には貴方達と同じように転移して来たエルフや獣人達もいます》


《それは40年前にダンジョンと共に行方不明になった者達か?》


《ええ、有名どころでは冒険者連合のトップに風精霊の谷のシルフィーナに竜人族のセルシアがいます。ご存知ですか?》


《ああ、街に来た時に見た事はある。Sランク冒険者だからな。そうか生きていたのか……》


《彼女達もこの世界に……》


《不安だったけど同胞がいるなら……》


知っている者がいて安心したのか、彼等はシルフィを頼る事になった。

俺はその場でシルフィに連絡し、受け入れ準備をしてもらえるよう頼んだ。シルフィは同胞達がいる事に喜び、すぐに舞浜の自治区に住居を用意すると約束してくれた。

それを伝えたドワーフ達からは口々に感謝の言葉を言われたが、まだ塔に元々潜っていて外の状況を知らないでいる悪魔達が出てくる可能性がある。気を抜かず、冒険者連合が到着するまでは壊されていない建物の中へいてもらうよう彼らに伝えた。

彼らは確かにと納得し近くの3つの家に分かれた。

俺は各家に結界を張り、絶対に外に出ないように念を押してからその場を後にした。


ドワーフ達と別れた俺は塔の入口がある所まで戻り、蘭達と連絡を取った。彼女達は森に逃げ込んだサキュバス達をクオンと共に狩っている最中らしく、楽しそうにしてたので俺は探知の範囲を広げて各塔の出入口を見張る事にした。

塔の中で死んだのか、ダコンとゲイザーが出入口横の魔法陣から突然現れたのにはビックリした。

本当にゲームみたいだった。俺はそうやって不定期に現れる悪魔達に魔法を放ち殲滅していった。

時折塔の出入口から普通に出てくるインキュバスとサキュバスのパーティにも、雷魔法を放ち気絶させ影縛りで拘束し一ヶ所に纏めた。


しばらくして空も暗くなってきたところで、蘭達がクオンと共に戻って来た。よく見るとクオンの足には縛られたサキュバス達がぶら下がっていた。


「主様。まだ小物が森に潜んでいますが一旦戻ってきました」


「ダーリン楽しかったわ。クオンちゃんも頑張ってくれたわ」


「光希、暗くなる前にと一旦戻りました。インキュバスとサキュバスは拘束してあります」


「お疲れ様。冒険者連合の仕事も残しておいてあげないとな。取り敢えず俺も捕らえたサキュバスとインキュバスがいるから、クオンをここに置いて砦に連れて帰ろう。ゲート登録してあるしね」


「ダーリンのと合わせると15体はいるわね」


「まあ、リムが上手く使うだろう。兵隊は多い方がいいしな。お腹も減ったし砦でテント張って休もう」


「さんせー! お腹ぺこぺこだわ」


「蘭もお腹減りました」


俺達はお腹が減ったので俺達は砦に戻る事にした。砦の最上階を登録しておいたゲートを開き、捕らえたサキュバス9体とインキュバス6体を投げ込んだ。

クオンには塔から出てくるサキュバスとインキュバスは無力化し、それ以外の悪魔は殲滅するように言い俺達はゲートをくぐり砦へと移動した。


《なっ!? く、空間魔法!?》


《いきなりでビックリさせたな。リム! このインキュバス達に契約の説明をしておけ》


《は、ハッ! 同族を生かしておいて頂きありがとうございます》


《まだ殺さないと決まった訳じゃない。仲間を死なせたくなかったら説得しておけ》


《ハッ! 》


「蘭と凛に夏海。奥の元デビルの部屋に行こう。そこで魔導テントを出すよ」


「はい、主様」


「そうね、行きましょう」


「そうしましょう」


俺は新たに捕らえたサキュバス達への説明をリムに任せ、恋人達を連れ奥の部屋へ向かいそこでテントを出した。


「先に入ってご飯を作っておいてくれ。俺は契約をしてくる」


「うん、ダーリンの好きな料理作っておくわ」


「うふふ、みんなで一緒に作りましょう」


「ふふふ、そうですね。美味しい料理を作りましょう」


「ありがとう。楽しみにしてるよ」


俺はそう言って部屋を後にし、サキュバス達が待つ大広間へと戻った。すると大声で叫んでいる男の声が聞こえてきた。


《ふざけるな! 純血種の俺が人族ごときの下につけるか! リム! それにお前達も狂ったか!》


《狂ってなどいない。 我等が種をこの世界で繁栄させるには、あの方に従うのが正しいと思っただけだ》


《そうだよ! お前だって塔から出てきたところで倒されただろ!》


《あれは不意打ちだったからだ! 次はやられはしない! お前達と一緒にするな!》


俺が広間に行くと、インキュバスの男とリムとミラがどうやらモメているようだった。


《リム! 契約を拒否してるのはそいつだけか?》


《ま、魔王様! あ、いえ、これは……い、今説得致しますのでもう少しお時間を》


《必要無い》


『影縛り』


《貴様! さっきはよくも不意打ちをしてくれたな! 人族如きのし……なっ!?》


『冥界の黒炎』


《ガァァァァァ……》


俺は現状把握を全くでいていないインキュバスの足を影縛りで拘束し、冥界の黒炎で燃やし塵にした。


《他に現状把握の出来ていない無能はいるか?》



《諜報活動をさせようと言うのに彼我の戦力差も、自分の置かれている立場も理解出来ないような無能はいらない。リム! 契約を行う。少しでも躊躇う者がいるなら殺す》


《は、はい!…… わかったかお前達! これが魔王様だ! 我々はただ従っていればいいのだ!》



《す、凄い魔力……ドラゴンを従えて雷魔法を操り、そして上級の闇魔法と更に見た事のない空間魔法まで……ハァハァ……堪りませんね。強いオスの匂い……》


《ユリ! ちょっと魔王様の前でなにしてんの!?》


《ああ……申し訳ございませんミラお姉様……つい魔王様の膨大な魔力と強いオスの匂いにあてられて……》


《気持ちはわかるよ、リム姉さんも顔が赤いしね。ボクだって……あの容赦の無さと圧倒的な力に興奮しないサキュバスはいないよ》


《純血種などと優越感に浸っていても、所詮はサキュバスの中で少し強い程度のもの。過去に魔王様の寵愛を受けたサキュバスより産まれた子は、魔将にまでなったと聞きます。アジムに誘われた時は死ぬつもりで拒絶しましたが、魔王様になら……強い子孫を残す為にも》


《た、駄目だよユリ! 魔王様は私達に全く欲情しないし常に警戒した目で見てる。あれは過去にサキュバスに襲われた事がある者の目だよ。誘惑なんてしたら殺されるよ!》


《そうですね。私達を見て全く反応しないどころか、いつでも躊躇いなく殺せる目をしてます。一緒にいた人族の女性達に向ける目はあれほど優しい目なのに……まずは魔王様の為に良い働きをして認めてもらえる事からですね》


《ぼ、ボクもがんばるよ! 死にたくないし強い子が欲しいからね》


《ああ……魔王様が私を見つめています……あの鋭い目、慈悲の欠片も無いその目で私を……ハァハァ》



俺が直立不動の姿勢で一列に並ぶインキュバスとサキュバス達に契約魔法を行使している最中、突然俺の視界でユリが自分の身体を慰め始め俺は動揺していた。

くっ! なんだあの妖艶な表情は! クソッ!集中だ!ユリに……じゃない!魔法に集中だ!クソッ! サキュバスはなんでこんなにいい女ばっかりなんだよ! 思い出せ! ベッドで搾り取られた後に魅了を掛けられ危なく堕ちる所だったあの時を! もうシルフィを失って自暴自棄になっていたあの頃の俺じゃないだろ!蘭と 凛と夏海がいるんだ、耐えろ!


俺はそれでも自分の胸と太ももに手をやり動かしているユリから目が離せないでいた。


短くも長かった契約魔法の行使が終わり、俺はサキュバス達に4階でしばらく生活するように言い広間を後にした。そして内心のムラムラを抑えながら奥の部屋へと向かいテントに入ると、俺を見たエプロン姿の蘭が話があると言って俺を寝室へと誘った。


「どうした?蘭?」


「主様……よく我慢しましたね。辛そうな顔をしてますよ」


「ああ、キツかったよ。蘭、悪いがいいか?」


「はい。蘭を召し上がれ♪ 」


俺は蘭を抱きしめキスをした。そしていつも俺の様子を気に掛けてくれている蘭に感謝しつつ、溜まりに溜まった情欲をぶつけるのだった。


蘭の献身的な行動によりスッキリして落ち着いた俺は、蘭と一緒にリビングへと戻った。


「ダーリンお帰り〜スッキリした? 本当は私達もと思ったんだけど、ご飯作るの遅くなるから蘭ちゃんにお願いしたわ。最初に気付いたのも蘭ちゃんだしね」


「流石蘭ちゃんです。光希の事を全て把握していて、私ではまだまだとても敵わないです」


そんな事を優しい目で言う2人に俺は気恥ずかしくなり、いやぁ〜はははとか適当に言ってソファに座ってご飯ができるのを待った。

妹に隠していたエロゲーが見つかって、お兄ちゃんも男だしね私は分かってるよ。と優しい表情で言われた時ってこんな気持ちなんだろうか……


「ダーリン照れちゃって可愛い♪ 」


「ふふふ、今更なのにね?」


その後皆で夕ご飯を食べ凛と夏海とお風呂に入り、疲れた身体を全身を使った気持ちいいマッサージで癒してもらった。そしてその夜、蘭と凛と夏海はまるでサキュバスに対抗するかの様に代わる代わる上に乗り俺から俺から搾り取るのだった。


「あ……んんっ……ダーリンが……サキュバスなんかに誘惑されないように……ああっ……」


「光希の……好きな後ろを使ってあげますから……んあっ!」


あ、今魅了掛けられたら抵抗できないわ……

俺は恋人達の背中に蝙蝠の翼を幻視し意識を失った。



そして翌朝。昨夜のサキュバスと化した恋人達に搾り取られた俺は、怠い身体を引きずりつつ皆で朝食をとった。

今日は冒険者連合が到着する予定の日なので、地下にいる米兵達を引き渡すためにクオンに乗せ東側の港に送ることにした。


地下に行き丁度朝食を済ませて寛いでいた少尉達に港に行く事を説明し、念のため装備を付けてもらい砦の外まで出てもらった。


《ど、ドラゴンに乗れるのか?》


《ジーザス!》


《本当か!? いいのか!?》


《ええ、その方が早いですから。流石に人数かろ多いので二回に分けますが》


《やった! ドラゴンライダーの気分を味わえるぞ!》


俺は喜ぶ米兵達をクオンに乗せ、東側の港まで送らせた。もっと怖がると思ってたんだけどな、流石米軍の精鋭達だな。


米兵を全て運び終え、港で冒険者連合の到着を待っていると俺の衛星電話が鳴った。


シルフィからの電話の内容は、凛の実家が深夜に襲撃を受けた事を告げるものだった。



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