第13話 エピローグ





ーー Hero of the Dungeon 34階層 西条 英作 ーー





「オーガ7体! 」


「多い! 」


「新見さんオーガの足を狙って一度に相対する数を減らしてくれ! 僕は突っ込む! 援護を! 」


「わかったー! 」


「英作の両サイドは任せろ! 行くぞ四郎! 」


「おうよ! 」


Hero of the Dungeonのアップデートが終了して4日が経ち、僕達は今34階層まで来ている。トップの大学生は35階層の中ボスのレッドオーガで苦戦しているらしい。

31階層からオーガが現れるようになりそのパワーとスピードに僕達は苦戦を強いられた。新見さんが弓職に転向した事もあり、僕達は二日間31階層で新たな連携の練習と弓の習熟訓練をした後に下層階へと下りることにした。その甲斐あって昨日と今日の土日をフルに使ってなんとか34階層迄来れたけど、現れるオーガの数が酷い……デスペナこそもらってないけど、中ポーションの消費が激しくて破産しそうだった。


「ぐっ……強い……ハアッ! 『シールドバッシュ』 」


「ギャーーーHPがヤバイ! 足だ! 足を狙え!うおおおお!『スラッシュ』 」


「ぐあっ! 蹴り飛ばされる! 速い! 多い! 」


「ちょっと! ちゃんと防いでよ〜弓職は短剣しか持てないんだから〜」


「鈴木君に戸田君! 文句言ってないで動きを止めなさい! ヤッ!『三連撃』 」


正面から現れたオーガ7体に対し新見さんが弓を放ち3体の動きを遅らせたけど、4体を同士に相手をしなければならなかった。僕は二体をスキルシールドバッシュで吹き飛ばし剣を差し込み、勝と四郎はそれぞれ一体ずつ相対したが、途中から遅れてきた三体が合流して苦戦していた。

そこへ大月さんがフォローに入り、その事で射線を得た新見さんが弓を放ちなんとかオーガを処理する事ができた。


「う〜ん、34階層はまだ無理かな。33階層に戻って宝箱探しをして弓職スキルを探そう」


「そうね、ポーションもあと僅かだわ。ゴールドも貯めないとね。三歩進んで二歩退がる感じで悔しいけど、佐藤さんも急ぐ者は早死にするって言ってたしね」


「確かにこの階層の数はキツイな……やっとレベル32になったのに、死んでレベル下がるともっと厳しくなるし戻るか」


「もう一人欲しいよね〜 。ねえねえ他のクラスの子なんだけど、パーティの男の子に言い寄られていて居づらくなってるみたいなの。うちに誘ってみる? 剣士なんだけど」


「いいんじゃないかな? 6人パーティまで組めるしここから先は人数いないと厳しそうだし」


確かにこの先は5人じゃ厳しいかも知れないな。6人いれば少しは余裕ができるし増やさないといけないかも知れない。


「それって陽子の事かしら?彼女ならいいと思うわ」


「大月が大丈夫だって言うならいいんじゃないか? 」


「俺も異議なーし 」


「わかった。それなら声かけてみるねー」


「頼むよ。それじゃあ戻って宝箱探ししようか。狙いは弓職スキルだよ」


「二連射とかのスキルがあったら大分楽になるよな〜」


「31階層から『復活の宝玉』ってアイテムも宝箱に入ってるんだろ? 死んでもレベル下がらないってやつ」


「それはかなり激レアアイテムらしいわよ? スキルの巻物の方が出やすいくらいよ」


「でもそれがあれば助かるよね〜」


「もし見つかったら一番レベルが高い人が持つ事にしようか? そうすればパーティでのレベル差が無くなるし」


「そうね。その方がいいわね」


「マジで? 今一番レベル高いの俺じゃん! よーし宝箱バンバン開けようぜ! 」


「そうだった。今一番レベルが高いのは勝だった」


「鈴木君とか復活の宝玉手に入れたら間違いなく無理して突っ込みそうだよねー」


「私もそう思うわ」


「僕もそう思う」


勝にアイテム持たせたら半日持たずに使いそうだよね。大月さんにしておこうかな。


「何言ってんだよお前ら! 俺は前衛だぞ? 突撃してナンボだろ」


「わかったよ。じゃあ次のオーガの集団は、勝がワントップで」


「そうね、突撃してもらいましょう」


「勝! 背後は任せろ! 」


「鈴木くんが死んでレベルが下がったら戸田君と並ぶもんねー」


「え? ちょ、それは無理だ! 英作がいるの前提だから。っておい! なんでみんな俺の背後に!? 」


「前方の角からオーガ8体! 来るわ! 」


「ええーーー!? 無理! 英作! ちょ、おいっ!そっちじゃねーって! 背後に盾構えてどーすんだよ! 」


「嘘よ〜」


「ぎゃはははは! 勝超焦ってんの! 」


「アハハハハ。鈴木君おもしろーい」


「ははは。勝、良かったね嘘で」


「委員長マジ勘弁してくれよ〜ワントップとか踏み潰されて終わるって」


「ふふふ、ゴメンね。鈴木君やる気満々だったからついね。西条君はすぐ気付いて見事なボケしてくれて面白かったわ」


「英作はなんだかんだでノリがいいよな〜」


「いきなり後ろに盾を構えるんだもん笑った〜」


「だってリアラの塔じゃないのに魔力探知なんてできる訳無いだろ? 大月さんが言ってすぐ気付いたよ」


「ああー! そうだった! ここはプロジェクターの魔獣だったー! あまりに自然だったから騙された! 」


「ずっといつやろうかタイミングを待ってたの。やっとできてスッキリしたわ。ありがとう鈴木君」


「委員長狙ってたのかよ」


「さすが優子ドSだわ……」


「大月さんのそういうところがお茶目で可愛いよね」


「「「「!? 」」」」


え? あっ! しまった!


「えーいーさーくーくん! 」


「英作やるな〜」


「え? か、可愛い?……私が……」


「西条君。これは女神の島の時の返事と受け取っていいんだよね!? 」


「いや、そうじゃ無くてただ素直にそう思っただけで別に変な意味じゃ……」


「ふむふむ。心から素直に委員長が可愛いと思ったと。なるほどな」


「スゲー! 英作スゲー! ジゴロだスゲー 」


「心から私を可愛いだなんて……ああ、どうしよう美香」


「え? 天然? 西条君ヤバくない? 優子落ち着いて。あのタイプは一級フラグ建築士だってママが言ってたわ。付き合うと苦労するらしいから気持ちはわかるけど落ち着いて! 」


酷い言われようだ……ここは変に何も言わない方がいいよね。

僕は口をつぐみ、笑顔でいれば窮地から抜け出せると母さんが言っていた通りニコニコしている事にした。


それが余計誤解を生む事になるとは知らずに……


こうして僕達のHero of the Dungeon攻略は、今日も仲間と楽しく過ぎていった。












ーー 横浜自宅 佐藤 光希 ーー







「弓職を導入して全体的に攻略速度が上がったみたいだな」


「うん! この4日間で上層で行き詰まってた人達も中層に行けるようになったよ。レディースコースにも弓職だけのコースを導入するんだって」


「そうか、でもオーガは難しいだろうな。しばらくは時間が稼げそうだ」


天照大神との約束の日を翌日に控え、俺は並行世界に連れて行くサキュバス三姉妹にHero of the Dungeonの件で話があり二階の執務室に呼んだ。

今回弓職を導入し、レベルはそのままで転職できる事から多くの人が弓職へと転職した。その結果プレイヤーの底上げに成功したようだ。これで夏から利用可能にする探索者達を受け入れられる余裕ができた。ちなみに冒険者の利用は今後も不可にしたままにする。ゲームしてる暇があるなら上級ダンジョンに挑めという事だ。


「そうだね〜オーガにはトッププレイヤーも苦戦してるみたいだよ。それにこの先たとえ40階層のオーガキングを倒せても、41階層からのトロールはまだまだ無理じゃないかな」


「フルパーティで階層プラス5レベルに、二つ目のスキルとSRランク以上の装備でギリギリかな。魔法使い導入迄はクリアできる者はいないだろう。魔法使いのテストはもういいのか? 」


「うん! 後はシステム的な物だけだからボクの身体は空いてるよ? 夜のご奉仕もできるよ! 」


「ミ、ミラッ! な、なんて事を言うんだ! 光魔王様に夜伽のお誘いをするなんて不敬だぞ! 」


「そうですミラ姉さん。抜け駆けはいけませんわ」


「あ〜そうか……夜伽は間に合ってるから遠慮しておくよ。ユリの方は救護係は引き継ぎできたのか? 」


俺はミラの誘惑になんとか耐えて話を進めた。最近ミラは露骨にパンチラや胸チラして来たり、抱き付いてきたりでスキンシップが激しくて正直揺れまくってる。チラニズム攻撃なんてどこで覚えてきたんだよ。


「はい。問題無く後任の者に引き継ぎました。その者も光魔王様と一緒に行きたがっておりましたが……」


「サキュバス達は留守中の家の守りをダークエルフ達としてもらわないといけないからな。会社の総務でも外せないしそんなに連れて行けないな。残った者達には好きな物を報酬としてやると伝えておいてくれ。何があるかわからないから前払いをしてから行く」


「ありがとうございます。その様に伝えておきます。より一層職務に励むと思います」


「リムの巡回チームは問題無さそうだな。獣人達をよく育てたな」


「ハッ! 問題ございません」


「それで……オーストラリア大陸は動きはあるか? 」


「いえ、ダーリントン山地の氾濫以来何も動きはございません。例の件は人員を増やし調べさせている所です」


「そうか……インキュバスの遊覧飛行の添乗員をしている者は確かヤンだったか? またダーリントン山地に氾濫が発生したら、エメラを連れて氾濫を鎮圧する様に伝えておいてくれ。エメラには俺からヤンの言う事を聞く様に言っておく。その他留守中に自衛隊や政府から出動を求められたら対応するように言っておいてくれ」


正統オーストラリア共和国は動き無しか……まあ確実な証拠が無いと動けないし時間を掛けて待つしか無いな。取り敢えず被害を拡大させないようにエメラを送っておくか。岩竜が出てきてもエメラなら速度で勝てるから大丈夫だろう。


「ハッ! 純血種のヤンであれば問題ないかと存じます」


「確かヤンは40代後半だったな。20年程若返らせておくか。アイツはなかなか使えるしな」


「ハッ! ありがとうございます。ヤンもより一層職務に励むと思います」


「それとこれがお前達の新しい防具だ。ビキニアーマーなんて作った事が無いからホビット達が四苦八苦してたぞ? 」


俺は中位の黒竜の革で作ったビキニアーマーをアイテムボックスから取り出してリム達に渡した。

他のサキュバス達には、富良野ダンジョンで仕留めた下位竜の亜種であるネッシーラの革で作ったビキニアーマーを黒く染めた物を用意した。ネッシーラは中位竜に勝るとも劣らない防御力があるから丁度良かった。

インキュバスには同じ素材で革鎧を作ったからそれを渡すつもりだ。


「キターーーー! 竜革! ドラゴンアーマーだー! 」


「これほど貴重な素材で私達の防具を……光魔王様のお心遣いに感謝致します」


「光魔王様ありがとうございます。このお尻の布の面積が姉さん達と違うのは、光魔王様の好みという事でしょうか? 」


「ん? ああ、ま、まあな。リムとユリのお尻は大きいからな。全部を覆うよりV字の方が魅力的だろうと思ってな。ミラは形の良いお尻だから覆った方が見ていて綺麗だからな」


くっ、気付かれたか……流石ユリだな。

そうさ、俺はユリのパンツはほぼTバックに、リムのはお尻がハミ出るようにV字に、ミラにはその丸く可愛いお尻を覆うようなデザインをホビットに注文していたさ。


「こ、光魔王様の好み……」


「うふふふ。嬉しいです光魔王様」


「ボクのお尻はリム姉さんやユリみたいに馬鹿デカく無いからね! 光魔王様は程々がいいんだよね! 」


「ば、馬鹿デカイとはなんだミラ! 」


「ミラ姉さんはわかってないですね。大きなお尻の方が男性は後ろから見下ろした時に征服感を感じるんですよ? 」


「まあまあ、大きさなんて別に関係ない。それぞれがそれぞれに良い所があるんだ。デザインに関してはそれくらいにして、他のサキュバスやインキュバスにホビットの所へ装備を取りに行くように伝えてくれ。付与はもうしてある。素材の関係でリム達には中級結界、他の者には初級結界しか付与できなかったけどな。元が竜革だから十分な筈だ」


「ヒャッホーウ! 防具にも結界だー! これで無双できる! スフィンクスにリベンジするんだ」


「け、結界の付与までされてるのですか! 私達には特別に中級結界を……こんなに大事に思って貰えているなんて……」


「中級結界という事は私達の竜革は中位竜以上の……ありがとうございます光魔王様。このお礼は今夜この身体で……」


「ユリはブレ無いな。残念だが遠慮しておく。ほらっ!リムが睨んでるぞ」


「ね、姉さん……冗談です……」


「さあ、それじゃあ出発は明日だ。渡したアイテムバッグには持っていくものをもう詰めたか? ミラはゲーム機とソフトばかり持って行くなよ? ちゃんと着替え持っていけよ? 」


「光魔王様酷いや〜! ちゃんと着替えは持って行くよ! ゲームばかり持っていかないってば」


「光魔王様。ミラのバッグは私が管理しておりますのでご心配には及びません」


「ミラ姉さんはお菓子とゲームしか入れてなくてリム姉さんに怒られてましたから」


「ちょ、ユリ! バラさないでよ!ユリだって変なブルブル震えるおもちゃいっぱい入れてたじゃん! 」


「なっ!? ミラ姉さん見てたのですか! あ、アレは肩凝りを治す医療器具です……」


「えーホントかなぁ? あんなに小さいやつがー? そんなに威力無さそうだけどな〜」


「ま、まあまあ! それぞれ必要と思える物を入れておいてくれ。それじゃ解散! 俺はドワーフの所に行ってくるから」


俺はミラに質問されるのを恐れてとっととその場を離れた。

ユリがまさかそんな物を持っていたなんて……

俺は色々と想像してムラムラするのだった。



それから俺はドワーフ達の所に行き大量に頼んでいたクナイや手裏剣の他、黒鉄混じりの剣や盾に矢などを回収した。

そしてホビットの所にも寄り量産型の革鎧もあるだけ回収してきた。

食糧はこの5日間でトラックと船から輸送してもらった物を大量にアイテムボックスに入れてある。それでもたかが2千トン分だ。節約して使っても一千万人を2日しか食べさせられない量だ。俺はこれを子供の為だけに用意した。大人は方舟で戦って手に入れろという事だ。中には粉ミルクもあって何を誤解したのか日本政府とアメリカ政府からお祝いのメッセージとベビーベッドが贈られてきた。日本とアメリカ政府の情報網も中々だよな。でも違うから!


その他にも木炭に沖縄の米軍に頼んで売ってもらった燃料とタンクもある。ハマーの魔改造も終わり上級結界を五重に掛けれるようにした。装甲は上位黒竜の鱗で覆ったし、防御力は上位竜を超えたな。

グリ子達のお見合い相手も無事見つかってグリフォンは6頭になった。あ、うん。予定より二頭多いよねわかってる。グリ子達のお見合い相手を捕獲した帰りに番のグリフォンを蘭が見つけてさ、最初から夫婦なら赤ちゃんもそれだけ早く産まれるだろうと思って捕まえちゃったらしい。まあ蘭に頼んだんだからこれくらいは誤差だよ誤差。


この6日間で作れるだけのスクロールを作ったし、準備は万端なつもりだがなにせ大所帯だ。

末期世界なんて何があるかわからないから薬の素材などもダークエルフに言って女神の島に大量に取りに行かせたし、市場で買えるものは買った。ポーションもニーチェ達の頑張りのお陰で売るほどある。よし! 大丈夫だ。


俺は明日からの未知の世界への旅立ちに備え出来る限りの準備を行なったのだった。


でも行きたくないな〜



第5章 Hero of the Dungeon 完





作者より


明日から第6章 ー光の悪魔 彼の地にて 斯く戦えりー がスタートします ٩(๑>∀<๑)وー


エルフとハマーをイメージしたら不思議と天からこの章名が降ってきました ⸜(* ॑꒳ ॑* )⸝⋆*


なんとか別の世界に行っても皆さまに楽しんで頂けるよう書きたいと思います <(_ _)>ペコッ




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