第194話 大晦日&新年編part1 四人で過ごす大晦日前日

「もう今年も終わりか〜」


 ソファーにだらしなく座っている真美が言う。

 その隣には姫香が座っている。 

 

「真美さんたちとお友達になってからの六ヶ月はあっという間に過ぎた気がします」

「だね〜。楽しい時間はあっという間に過ぎるっていうのは本当のことだね。この調子だとずくにおばあちゃんになりそう」

「ですね〜」

「これからもずっと友達でいてね?」

「もちろんです。私の方こそよろしくお願いします」


 なんて永遠の友情を誓い合う二人。

 そんな二人の様子を見ながら、俺は先日のクリスマスの日のことを思い出していた。

 このままずっと姫香と一緒にいることができるのだろうか。

 何年か先に婚約指輪を渡して、結婚して、子供ができて、おじいちゃんになって、死ぬまで、姫香と一緒にいられるのだろうか。

 人生に絶対なんてないのだ。

 人生に永遠なんてないのだ。

 もちろん、生涯を共にするなら姫香がいい。

 でも、関係性なんて頭容易く崩れてしまう。

 ちょっとしたすれ違いで簡単に終わってしまうことだってある。

 

「不安しかねぇな」

「ん、どうした?悩み事か?」


 俺がボソッと呟いた声に歩が反応した。


「どうやったら、いつまでも姫香と一緒にいられるかを考えてた」

「なんだそんなことか。そんなの簡単だろ。姫香ちゃんとたくさん話し合って、些細なことで喧嘩しあって、その後に許し合って、互いのことをちゃんと知って、信頼を裏切らないことだな」

「歩たちも喧嘩なんかするのか?」

「あたりまえだろ。しょっちゅうしてるぞ」

「そうなんだな」


 学校では『バカップル』として有名な二人でも喧嘩するんだな。

 

「まぁ、二人は喧嘩とかしなさそうだけどな!」

「なになに〜。二人でなんの話をしてるのー?」

「ん、翔と姫香ちゃんはいい夫婦になるだろうなって話」

「同感!同感〜!絶対に素敵な夫婦になるよね!」


 二人のそんな言葉に俺と姫香は顔を見合わし、互いに恥ずかしそうに笑った。

 

「結婚式には絶対呼んでよね!」

「もちろんそのつもりです」

「なんなら友人代表挨拶的なやつも私がやってあげる!」

「いや、真美はやめといた方がいいだろ」

「なんでよ!?」

「いや、だって真美が姫香のこと語り出したら式が終わらなくなるだろ」

「それもそうだな。真美なら何時間でも姫香ちゃんのこと話そうだもんね」

「むぅ!そこは一時間くらいしか話さないようにするから!」

「一時間でも長すぎるからな」


 俺がそう言うと真美は不満そうに頬を膨らませて「分かったわよ。三十分で我慢してあげるわよ」と言った。


☆☆☆

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