第216話 新生活編part16 翔の秘密①

 三人に誕生日を祝ってもらった翌日、俺はある場所に向かって一人街を歩いていた。

 

「まだ募集してるかな」


 ある場所とは少し古びた古本屋だった。

 先日その古本屋に足を運んだ時にバイト募集の張り紙をしてあったのをたまたま見かけた。

 今日の目的はそれだった。

 バイト……。

 人生で初めての経験。

 古本屋に到着してお店の中に入り、店主を探した。

 先日来た時に店主と話をして仲良くなっていた。

 

「あ、いた。すみません」

「ああ、この前の……いらっしゃい」

 

 人当たりのいい笑顔を向けてくれたこの人はこの古本屋のオーナーの塩見さん。

 ここは塩見さんが定年後に趣味で開いたお店らしい。

 本の種類は豊富だった。

 かなり古い本もあれば最新の話題本まで置いてある。

 そのほとんどが塩見さんの私物だという。


「今日も何かお探しかい?」

「いえ、今日は本を買いに来たわけじゃなくて……あの張り紙を見て……」


 俺はお店の入り口の扉に貼られいたバイト募集中の貼り紙を指差した。


「バイト募集中なんですよね。よかったら僕を働かせてくれませんか?」

「ふむ。一つ聞いてもいいかな?」

「はい」

「君は何のためにバイトをしようと思ったんだい?」

「それは……」


 俺がバイトをしようと思った理由。

 それは……。


☆☆☆


〈姫香視点〉


 最近、翔君の様子が少し変です。

 何か私に隠し事をしているような気がします。

 翔君の誕生日から一週間。

 翔君の様子がおかしくなったのは、誕生日の三日後。

 

「そういえば、誕生日の次の日に一人でどこかに行っていたような……」


 それを思い出し、私は一人リビングのソファーに置いてあるハートのクッションを抱える。

 今日も翔君はどこかにお出かけしてます。

 

「一体どこに行っているのでしょうか……」

 

 聞くのが一番早いのでしょうけど、正直怖いです。

 もちろん、翔君のことを信頼てないわけではありません。

 翔君がそんなことをしないことは私が一番よく分かってます。

 でも、ほんの少し、ほんの少しだけ、そんな思いが頭をよぎるのは仕方のないことだと思うのです。

 本当に翔君のことを愛してるから、好きだから、疑いたくはないと思っても疑ってしまうのです。

 

「ダメです。ダメです……翔君のことを疑っては……でも……」


 こんな気持ちのままではダメですね。


「決めました。これは名探偵姫香ちゃんの出番のようです!」


 翔君には申し訳ないですけど、これも疑いを晴らすため。

 翔君を信じるためです。

 私は明日の大学帰り翔君の後を追うこと心に決めました。

 ちょうど、そう思った瞬間に玄関の扉が開いて「ただいま」と翔君の声が聞こえてきたので、私はソファーから立ち上がって玄関まで出迎えに行くと「おかえりなさい」と笑顔で翔君に抱きつきました。

 翔君の首元には私が誕生日に上げた星のネックレスが綺麗に輝いていました。

 

☆☆☆

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