第215話 新生活編part15 翔の誕生日④

 

「たしか一輪のバラの花言葉は……」

 

 なんて、バラの花言葉を考えていると姫香達が料理を持ってキッチンから戻って来た。


☆☆☆


 サイドテーブルの上に色とりどりの料理が並んでいく。

 どれも俺の大好物の料理だった。


「さぁ、たくさんあるのでたくさん食べてください!」

「ありがとう。どれも美味しそうだな」

 

 サイドテーブルを囲むようにして俺たちは座ると各々好きな料理に手を伸ばして食べ始めた。

 もちろんどの料理も最高に美味しい。

 ワイワイと楽しく食事をしていく。

 ほとんどご飯が無くなったところで真美が立ち上がり何かを取りに行った。

  

「翔!はいこれ!私たちからの誕生日プレゼント!」


 そう言って真美が紙袋を手渡してきた。

「ありがと」と言って受け取った紙袋はずっしりと重たかった。


「中に入ってるのは本か?」

「正解!持ってるやつもあるかもしれないけど、最近私たちが読んで面白かった本が入ってるから時間があったら読んでみて~!」

「サンキューな。また後で見るわ」


 二人は大学生になってから本を読み始めたらしく、俺が何冊かおすすめ本を教えるとすっかりと読書の面白さにハマり、今では立派な読書家になっていた。

 最近ではよく俺と読んだ本の感想を言い合っている。

 

「じゃあ、次は私ですかね」


 そう言った姫香は自分の部屋に向かった。

 すぐに戻って来た姫香は長細い箱を手に持っていた。


「はい翔君。お誕生日おめでとうございます」

「ありがとう。開けてもいい?」

「はい。喜んでくれるか少し心配ですけど……」


 姫香からのプレゼントに喜ばないわけがないだと思いながら、俺はその箱のふたを開けた。

 中には……。


「ネックレスか」

「はい。翔君はそういった類のものは付けないので、どうかと思ったんですけど、これを見た時にこれがいいと思ってしまいまして……」


 俺の様子を窺うように姫香がチラチラと見てくる。

 確かに姫香とお揃いで買ったピンキーリングも俺はあまり付けていなかった。

 別に付けるのが嫌とかではない。ただ、無くしたりしたら嫌だと思って大事にしまってあるだけだ。 

 箱の中からネックレスを取り出して、じっくりと見る。

 星形のネックレスで、真ん中には青色の石が埋め込まれていた。


「カッコいいな。さっそく付けてもいいか?」

「はいっ!」

「じゃあ、姫香が付けてくれ」

「任せてください!」

 

 パッと顔を明るくした姫香が俺の後ろに回った。

 その姫香に俺はネックレスを渡す。

 姫香が俺の首にネックレスを付ける。

 

「どうだ?」と姫香の方を振り向くと「カッコいいです!」と嬉しそうに笑った。


「そっか。これなら無くす心配もないだろうし、毎日付けれそうだな」

「気に入ってくれましたか?」

「もちろん。てか、姫香からのプレゼントに喜ばないわけがないだろ?」

「だって……クリスマスの時にお揃いで買ったこのピンキーリングはあまり付けてくれてなかったじゃないですか」

「それは、無くしたら嫌だと思って付けてなかったんだよ。姫香との大事な思い出の品だからな」

「そうだったんですね」


 俺がピンキーリングを付けていなかった理由を知ってホッとしたのか、姫香は嬉しそうに微笑んだ。

 

「てっきり嫌だったのかと思ってたので、ホッとしました」

「ちゃんと言っておけばよかったな。ごめんな」

「いいんです。大事にしてくれてるのが分かったので」

「このネックレスも大事にさせてもらうよ。ありがとな姫香」


 そう言って俺のは姫香のことを抱き寄せた。

 姫香も嬉しそうに俺の体に手を回して抱きしめてきた。

 

「あーあ。完全に二人の世界に入りきってるよ」

「俺たちは完全に蚊帳の外だな~」

「ま、いっか!幸せそうな二人を見れて私たちも幸せだし!」

「だな!」


 こうして世界一幸せな誕生日は幕を閉じた。

 首元の星のネックレスが綺麗に煌めいていた。

  

☆☆☆


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