6月26日(土) 14:00〜
歩くこと十数分。
目の前には広大なオーシャンブルーが広がっていた。
「到着です」
「・・・・・・」
その海のあまりの綺麗さに俺は言葉を失っていた。
地元にこんな綺麗な海があったなんて初めて知った。
「・・・・・・綺麗だな」
ようやく口から出た言葉はそんなありきたりな言葉だった。
「ですよね。私のお気に入りの場所です。さ、行きましょう!」
氷室さんに手を握られ、砂浜に足を踏み入れた。
サラサラな砂だった。
手に掴んだら、指の隙間から零れ落ちていくタイプの砂。
「はぁ〜。気持ちいい風」
氷室さんの言った通り、潮風は冷たくて気持ちがよかった。
真っ白な髪が潮風で靡く。
海の輝きと日の光と氷室さんの美しさが相まって、氷室さんは神秘的な雰囲気を醸し出していた。
「さて、海で遊ぶのは後にして、先にお弁当食べましょう」
「そうだな」
俺たちは砂浜にある休憩所らしき場所に移動した。
椅子に座って、氷室さんオススメの弁当の蓋を開けた。
氷室さんオススメの弁当はエビフライ弁当だった。
大きなエビフライが2本、真ん中にドンっと存在感を放っていた。
その他にもポテトサラダやスパゲティや卵焼きが入っていた。
いただきますをして、エビフライに齧り付く。
サクッとした衣とプリッと身の引き締まったエビ。噛んだ瞬間に広がる風味。
「美味しい」
エビフライはその一言に尽きた。
それ以上の感想はいらないくらい美味しかった。
「よかった。このエビフライ美味しいですよね」
そう言って、氷室さんもエビフライをパクッと一口食べた。
何回か噛んだ後、幸せそうにほっぺたに手をあてた。
「やっぱり最高!」
「ゆっくりと味わって食べたいな」
「ですね。時間はありますし、ゆっくり食べましょう」
美味しいものは、しっかりと味わいたい。
人生で食べれる食の数は決まってるからな。こればっかりは時間を使ってもいいだろう。無駄なことじゃないしな。
それから、30分くらいかけて、エビフライ弁当を完食した。
「美味しかった。ごちそうさまでした」
「また、食べに来ましょう!今度は別のお弁当食べてみたいですし」
「そうだな。また、来よう」
満腹状態でなかなか動くことが出来ず、俺たちはその場で気持ちのいい潮風を浴びて安らいでいた。
本当に気持ちがいい。
さらに、波の心地のいい音も聴こてきて、心が浄化されていくみたいだった。
次第に少しずつ眠くなってきた。
「なんだか、眠くなってきましたね」
「俺も同じこと考えてた」
「少し寝ませんか?」
「そうしたいけど、寝れそうなとこないよ?」
「こうすれば寝れますよ」
そう言って氷室さんは俺の座っている椅子に移動してきた。
そして、俺の肩に頭を預けてくる。
「え・・・・・・」
「ほら、王野君も」
いやいや、無理に決まってるだろ?
できるわけがない。汗だってかいてるし・・・・・・。
てか、匂い大丈夫かな・・・・・・。
「いや、無理だから・・・・・・」
「えー。なんでですか。別に私は気にしませんよ?」
「いや、俺が気にするから」
「じゃあ、いいです!私1人で寝ますから。その代わり、ここ貸してもらいますからねっ!」
そう言って、氷室さんは俺の膝の上に寝転がった。
いや、そっちの方がヤバいんだが!?
俺の膝の上に寝転がった氷室さんの深紅の瞳が俺のことを捉えて離さなかった。
その顔はほんのりと赤みを帯びていた。
「顔が真っ赤ですよ?」
「それは、氷室さんもだろ」
「ですね。勢いでやったはいいものの少し恥ずかしいです」
「じゃあ、どいてくれてもいいんだぞ?」
「それは、それでもったいないような気がするので、もう少しだけこのままで」
いや、1秒でも早くどいてくれ!?
そして、顔は絶対に動かさないでくれ!?
もう少しだけこのままでと言った、張本人は数分後には眠りについてしまった。
「本当に寝やがったし・・・・・・どうすんだよ・・・・・・」
とりあえず、冷静になるために俺は深呼吸をした。
海の香りが体の中に入ってくる。
俺は出来るだけ無心で、氷室さんが起きるのを、可愛らしい寝顔を見ながら待つことにした。
☆☆☆
次回更新18時!
次回いよいよ・・・・・・。
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