6月26日(土) 12:00〜

 電車に揺られること1時間、到着した駅は初めて降り立った場所だった。

 

「この駅は初めて来たな」

「そうなんですか?」

「うん。氷室さんは来たことあるの?」

「何度かあります。この近くに海があるんです。そこによく行ってました」


 そう言われて空気を吸い込むと微かに潮の香りがした。

 

「じゃあ、その海に行くのか?」

「よくお分かりで。ですがその前にある場所に寄ります」

「了解」


 駅を出て、氷室さんお案内のも、そのある場所に向かった。

 だんだんと海に近づいているのか、潮の香りが強くなっている気がした。

 駅から歩くこと数分。

 氷室さんが言っていたある場所に到着した。


「ここです」

「ここは?」

「お弁当屋さんです」

「そうなんだ」


 ある場所の正体はお弁当屋さんだった。

 しかし……。


「まだ閉まってるみたいだな」

「見たいですね。少し早く来すぎたみたいです」

「どうする?」

「う~ん。少し歩きましょうか」

「分かった」

 

 弁当屋さんがオープンするまで、この辺を散歩することになった。

 近くに商店街があり、そこに行くことになった。


「この辺は初めて来ます」

「そうなんだ」

「いつも海の方にしか行かないので」


 商店街にはいろんなお店があった。

 八百屋にコロッケ屋に美容室に居酒屋。

 そんないろんなお店の中に気になるお店があった。


「氷室さん、ここ行ってもいい?」

「本屋さんですか?」

「う〜ん。少し違うかな。古本屋さん。見るだけだから」

「もちろんいいですよ。行きましょう」


 氷室さんと一緒に古本屋さんの中に入った。

 俺は大きく息を吸う。

 いい匂い・・・・・・。

 俺はこの本の独特な匂いが好きだった。

 新品の本の匂いも好きだけど、年季の入った古本の匂いも好きだった。

 ゆっくりと本棚を1つずつ見て行った。

 氷室さんはそんな俺の姿を微笑ましい顔で見ていた。


「楽しそうですね」

「うん。めっちゃ楽しい」

「王野君が楽しんでくれて、私は嬉しいです」

「付き合わせて悪いな」

「いいえ。もっと楽しんじゃってください」

「じゃあ、お言葉に甘えて」

「どうぞ」


 氷室さんの言葉に甘え、その後は完全に本に夢中になっていた。

 時間はあっという間に過ぎていき、お弁当屋さんの開店時間になろうとしていた。


「満足」

「もう、いいのですか?」

「うん。ありがとう。お弁当屋さんに行こっか」

「行きますか。時間的にもちょうどいいですし」


 もと来た道を帰り、弁当屋さんの前まで戻ってきた。

 さっきは人がいなかったのに、今は数人のお客さんがお店の前に並んでいた。


「私たちも並びましょう」

「そうだな」

「ここのお弁当屋さんは人気のお店なんですよ。何度かテレビに取り上げられてて、差し入れとかでも食べたことがあるんです」

「へぇ〜。それは期待大だな」

「それは、任せてください!美味しさは保証します」


 お店が開店し列が進む。

 氷室さんのオススメのお弁当を買うと海へと向かって歩き始めた。


☆☆☆

次回予告14時!

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