6月26日(土) 9:00〜『氷室さんとデート3回目』

 氷室さんとの3回目のデート当日の朝。

 俺はアラーム通りに目を覚ました。

 準備をすませて、30分前に家を出て、目的地の駅に向かう。

 駅には15分前に到着した。

 氷室さんはまだ来ていないようだった。

 駅の中にあるベンチに座って氷室さんを待つことにした。

 氷室さんを待つこと数分。

 突然、目の前が真っ暗になった。


「だ〜れだ?」


 その声はもちろん聞き覚えがある。

 

「氷室さんだろ」

「正解です!」


 視界が開かれ、横を向いていれば、俺の顔の真横に氷室さんの顔があった。

 深紅の瞳が俺の目を見つめている。

 俺は少し照れながら挨拶をした。

 

「おはよう」

「おはようございます」


 氷室さんは前に回ってきた。

 今日の氷室さんの服装は花柄のワンピースだった。肩にはピンク色のショルダーバック。

 やはり、変装は眼鏡だけ。それ以外はまんま『深紅の瞳を持つ天使』だった。

 それはそうと・・・・・・。  


「髪型いつもと違うんだな」

「気づいてくれましたか。嬉しいです。どうですか?可愛いですか?」 

 

 そう言って氷室さんはお団子ヘアを見せつけてきた。


「・・・・・・うん。似合ってる」

「ありがとうございます」


 いつもと違う雰囲気に思わず見惚れてしまった。

 氷室さんが恥ずかしそうに顔を逸らし、「切符買いに行きましょうか」と言ったので、券売機に向かった。

 

「それで、今日の目的地は?」

「ここです」


 そう言って氷室さんが指さした駅はここから5つ先の駅だった。

 その駅の切符を2枚買って駅員さんに判を押してもらって改札を通った。

 階段を登って駅のホームで電車が来るのを待つ。


「俺たちがのる電車が到着するのは5分後みたいだな」

「みたいですね」


 黄色い線の内側に立って電車が来るのを待つことにした。

 駅のホームにはチラホラと人がいた。


「やっぱりさ、もう少し変装したほうがよくないか?」

「そんなに心配なのですか?」

「あたりまえだろ」


 もう少しちゃんと変装をしたらナンパになんかあわなくてすむだろうに。

 眼鏡だけだと氷室さんの可愛さは隠しきれていない。


「また、ナンパにでもあったらどうするんだよ」

「そうしたら、王野君が守ってくれるんでしょ?」

「そりゃあ・・・・・・守るけど」

「なら、問題ないですね」


 氷室さんは屈託のない笑顔でそう言った。


「あのなぁ・・・・・・俺が一緒にいない時はどうするんだよ」


 そこで電車の到着を知らせるアナウンスが駅のホームに響いた。

 俺の言葉は氷室さんの耳には届かなかった。

 3両編成の電車が駅のホームに到着した。 


「行きましょう!」

「そうだな」


 俺たちは2両目の電車に乗り込んだ。 

 電車の中にはあんまり人がいなかったので、席に座ることができた。

 長椅子に氷室さんと横並びで座る。

 電車がゆっくりと動き出した。

 その拍子に氷室さんと肩が触れ合う。

 なんだかむず痒いような幸せなような甘酸っぱい感覚。この時間が永遠と続けばいいなと思った。

 電車は順調に進んでいき、目的地に到着した。


☆☆☆

次回更新7/4(月)9時!



前回の話の集合時間を8時から9時に変更しました。

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