6月14日(月) 6:30〜
週明けの月曜日。
若干の憂鬱を抱えながらも、俺は午前6時に起床した。
先週の金曜日に誤差ではあったが、氷室さんに勝った。正直、あの日はどっちが勝ってもおかしくないくらいの誤差だった。だから、今度はしっかりと勝ちたい。そう思って6時に起床した。
「それにしても、この土日はいろんなことがあったな」
俺は学校に行く準備をしながら、土日に起こったことを思い出していた。
本当に色々あった。濃すぎるくらい濃厚な土日だった。
いきなり、映画撮影に参加させられるし、わがままな氷室さんがいたし、美味しいものも食べた。
そんな中で俺は、
ーーー早く、私のこと思い出してくださいね。
昨日の氷室さんとの別れ際に言われたこの言葉がずっと頭の中に引っかかっている。
あれは、どういう意味だったのだろうか・・・・・・。
1つだけ思い当たることがあるとすれば・・・・・・。
「いや、ない、よな・・・・・・」
だって、「ひろくん」は男のはずだ。
俺はずっとそう思って「ひろくん」と遊んでいた。
でも、もしも「ひろくん」が女の子だったとしたら・・・・・・。
「ひろくん」と氷室さんには共通する部分がある。
それは、あの白い髪の毛と深紅の瞳だ。
あんな特徴的な容姿はそうはいないだろう。
もしも、本当に氷室さんが「ひろくん」だったとしたら・・・・・・。
「やべ、そろそろ行かないと負ける」
そこまで考えて、俺は一旦家を出た。
とりあえず、もう少し様子を見よう。
俺は自転車に乗って急いで学校に向かった。
6時20分。
学校に到着した。
自転車小屋に自転車を置いて、急いで教室に向かった。
いないでくれと、思いながら階段を駆け上がる。
教室の前に到着し、中を覗いた。
やはり、あの日はたまたま勝てただけだったらしい。教室の中には勉強をしている氷室さんがいた。
「やっぱり、勝てないな〜」
俺はそう呟いて、教室の中に入った。
「おはよう。氷室さん」
俺が挨拶をすると、勉強をしていた手を止めて、氷室さんはこっちを向いた。
「おはようございます。王野君」
満面の笑みを浮かべ、氷室さんは挨拶を返してきた。
『深紅の瞳を持つ天使』は朝日の恩恵を浴びて神々しく輝いていた。
まさしく天使・・・・・・。
ん?
待て・・・・・・今、王野君、と言わなかったか・・・・・・。
気のせいか?
「どうしたのですか?王野君?」
気のせいじゃない!?
たしかに、氷室さんは俺のことを「王野君」と呼んだ。
氷室さんにそう呼ばれたことがなんだかもの凄く懐かしさを覚えた。
やっぱり氷室さんは・・・・・・。
「いや、なんでもない」
「そうですか」
俺は氷室さんと目を合わせないようにして、自分の席に座った。
「ところで、王野さんはテスト勉強されてますか?」
あれ?
今度は「王野さん」に戻ってる。
そのことが気になったが、とりあえず話の返事をした。
☆☆☆
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