6月13日(日) 15:00〜
公園を後にした俺たちはクレープ屋に向かっていた。
クレープ屋に到着した時にはちょうどおやつ時でお店の前には高校生らしき人たちがたくさん並んでいた。
「ここのクレープは美味しいですよ〜」
「食べたことあるの?」
「はい。何度か」
「そうなんだ」
クレープ屋とかに来るところはやっぱり女子高生となんら変わらないな。
「1人で来たの?」
「はい。恥ずかしながら・・・・・・王野さんも知ってると思いますけど、私、友達いませんからね」
そう言った氷室さんは少しだけ寂しそうな顔をしていた。
「でも、今は違うだろ?俺もいるし、あいつらもいる。また今度、あいつらと一緒に来ればいいじゃないか」
「そう、ですね。一緒に来たいです」
「じゃあ、それもやりたいことに入れとこう」
「はい!」
嬉しそうな笑顔を見せた氷室さん。
よかった・・・・・・。
パスタ屋より列はスムーズに進み、気がつくと俺たちの番が回ってきていた。
「どれにしますか!?王野さん!」
「氷室さんのオススメは?」
「そうですね〜。これなんか美味しかったですよ」
そう言って氷室さんが指差したのは、キャラメルバナナのクレープだった。
「美味しそうだな。じゃあ、これに・・・・・・」
「あの!」
「ん?」
「食べてみたいのが2種類あるんですけど、私が王野さんの分も頼んじゃダメでしょうか?」
「別にいいよ。俺は何でもいいし」
「本当ですか!?ありがとうございます!」
嬉しそうに氷室さんが注文したのは、いちごレアチーズケーキのクレープとチョコティラミスのクレープだった。
店員さんから出来上がった2つのクレープを受け取ると、氷室さんは俺にチョコティラミスの方のクレープとを渡してきた。
「はい。どうぞ」
「ありがと」
「帰りながら食べますか」
「そうだな」
クレープを食べながら、氷室さんの家に向かうことになった。
「美味しそうです」
「ワクワクしてるな」
「そりゃあ、そうです!ずっと、食べたかったですから!」
「それは、よかったな」
本当に嬉しいそうな顔を見て、俺も嬉しくなって頬を綻ばせた。
「なんですか?」
「いや、可愛いな〜と思ってな」
「子供扱いしてるでしょ?」
「どうだろうな〜」
「絶対にしてます!」
むぅ〜、と氷室さんは頬を膨らませた。
それこそ、その顔は子供みたいだった。
「そんな王野さんには、私のわがままを聞いてもらいます!」
「どうぞ」
「王野さんのクレープ食べさせてください!」
そう言って氷室さんは口を開けて俺の方を向いた。
そういえば、俺にあ〜ん、させるとか言ってたな。
「ほら、早く〜!」
「わ、分かったよ」
俺はチョコティラミスのクレープを氷室さんの口元に運んだ。
それを氷室さんは、はむっと食べた。
「ん〜。美味しいです!」
氷室さんは幸せそうにほっぺたに手を当てた。
その顔がまた可愛い。
『深紅の瞳を持つ天使』は美味しそうにチョコティラミスのクレープを食べていた。
「王野さんも私のやつ食べますか?」
「じゃあ、もらおうかな」
「どうぞ」
そう言って、氷室さんは手に持っているクレープを俺に向けて差し出してきた。
「食べろと?」
「もちろん!」
「じゃあ、遠慮なく食べるよ?」
「どうぞ」
ここで恥ずかしがったら負け。そう思って俺は氷室さんの差し出したクレープを一口食べた。
か、間接キスだとか気にしてないからな・・・・・・。
「どうですか?」
「うん。美味しい」
「ですよね!2つの頼んで正解でした!王野さん、ありがとうございます!」
クレープを食べ終わる頃には、氷室さんの家の前に到着した。
「今日はありがとうございました。今日も楽しかったです」
「俺も楽しかったよ」
「王野さん。最後に1つわがままを言ってもいいですか?」
「ここまできたら、2つも3つも変わらないよ」
「じゃあ・・・・・・」
氷室さんが俺の耳元に顔を近づけた。
「早く、私のこと思い出してくださいね」
「え・・・・・・」
「では、また明日学校でお会いしましょう」
氷室さんは頭を下げるとマンションの中に入っていった。
何、今の・・・・・・。
「私のこと思い出して、か・・・・・・」
そう呟いて、俺は悶々とした気持ちのまま家へと帰っていった。
☆☆☆
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