6月19日(土) 15:00〜
午後は初めの1時間を国語と次の1時間を英語という感じで勉強してした。
どうやら、氷室さんは文系教科には強いらしい。俺が手助けしたのは1回だけだった。
2時間集中して勉強をしていると、あっという間におやつ時になっていた。
「小腹が少し空いてきたと思ったら、もうこんな時間か」
「じゃあ、あれ、食べますか?」
「そうだな」
「持ってきますね」
氷室さんが冷蔵庫からケーキを持ってきた。
「コンビニじゃなくて、ケーキ屋で買ってくればよかったな」
「別に気にしませよ。コンビニのモンブランも美味しいですから」
「次はケーキ屋で買ってくる」
「また買ってきてくれるのですか?」
「あぁ、次があればだけど……」
「もちろん、あるに決まってるじゃないですか。というか、一緒に行きましょうよ!」
「そうだな。一緒に行くか」
勉強を挟んだからなのか、さっきのぎこちなさはどこかに行ってしまっていた。
2人でソファーに座り、ケーキのふたを開けた。
もちろん、俺がショートケーキで、氷室さんがモンブランだった。
「美味しそうです」
「食べるか」
「はい。いただきます」
ケーキにフォークを入れて、一口食べた。
疲れ切った頭に糖分が染みわたった。
俺はチラッと隣に座っている氷室さんを見た。
「ん~。美味しい~」
氷室さんは、ほっぺたに手を当てて、幸せそうな笑顔をしていた。
買ってきてよかったな。その顔を見て俺は心の底からそう思った。
俺は、氷室さんのことが……。
「どうかしましたか?」
「いや、幸せそうに食べるなと思ってな」
「何をおっしゃいますか。さっき、王野君も幸せそうな顔で、鮭のマヨネーズ焼きを食べていたじゃないですか」
「そりゃあ、美味しかったしな」
「美味しいものを食べたら幸せになりますよね」
「そうだな。美味しいもの食べたら幸せになるな」
「だから、私は今とても幸せです。しかも、王野君が私のために買ってきてくれたっていうので、幸せ倍増です!」
「そっか。買ってきてよかったよ」
「ありがとうございます!」
氷室さんはそう言うと、もう一口モンブランを口に運んだ。
「ところで、王野君はショートケーキがお好きなのですか?」
「いや、特にそんなことはないな」
「じゃあ、なぜ、ショートケーキを?」
「特に理由はないけど……」
「そうなんですね。じゃあ、何ケーキがお好きですか?」
「う~ん。タルト系?」
「ざっくりですね」
俺の答えを聞いて氷室さんはくすくすと笑った。
「まぁ、ケーキなんて誕生日の時くらいしか食べないからな」
「え、もったいない。こんなに美味しいのに」
「氷室さんはよく食べるのか?」
「月に2~3回は食べますかね」
「へぇー。好きなんだな」
「甘いものは何でも好きです!」
「それは初知りだな」
「まだまだ、王野君の知らない私はたくさんいますよ」
そう言って氷室さんは悪戯っ子の笑みを浮かべた。
「なので、これからたくさん知っていってくださいね?」
「まぁ、氷室さんが教えてくれるなら……」
「どんどん教えちゃいます!その代わり、王野君のことも教えてくださいね?」
「俺のことか~。ちなみにどんなことが知りたい?」
「じゃあ、手始めに王野君の誕生日、教えてくださいな」
「誕生日か。俺の誕生日は8月15日だよ」
「もうすぐじゃないですか!」
「そうだな。氷室さんは?」
「私は12月1日です」
「12月か。なんか、ぽいな」
「そうですか?」
なんとなくだけどそう思った。
安直だけど、真っ白で雪のような髪の毛のせいだろうか。
「まぁ、そんなことはいいです。王野君の誕生日しっかりと祝いますから楽しみにしておいてくださいね」
そう言って、氷室さんは俺の口にモンブランを運んだ。
☆☆☆
次回更新14時!
残り10日・・・・・・。
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