『①四人で海』
8月24日(火)
「やってきたよ!海~!」
目の前に広がる大海原に向かって真美が叫んだ。
「やっほ~!」
続いて歩が叫ぶ。
「それは山でやるやつだろ」
「いや、もしかしたら誰か返してくれるかもしれないなと思ってな!」
確かにこれだけ人がいたら一人くらいは……
「って、返ってくるわけないだろ。むしろ、変人だと思われるぞ」
俺たちは四人で海にやってきていた。
いつだったか、姫香と一緒に行った海だ。
あの時はまだ海開きをしていなかったから人はあまりいなかったが、今は絶賛夏休み中。家族連れから高校生まで水着姿の人であふれかえっていた。
「やっほ~!」
「お!山びこならぬ、海びこが返ってきた。って、真美かよ!」
「よかったな変人がもう一人いたぞ」
「私たちを変人扱いするな~!」
「違うのか?」
「「違うわ!」」
『バカップル』の息の合った突っ込みに隣でいた姫香がくすくすと笑っている。
「本当にお二人は仲がいいですね」
「そういう二人こそ、会わない間になんだか距離が縮まってない?」
「そうですか?」
「そうよ!だって、私たちに見せつけるように手を繋いでるし!」
「人は変わるものですよ?真美さん」
「何その大人の回答!何があったのか教えなさい!」
「別に何もないですよ?」
「もしかして、大人の階段上った?」
「の、上ってませんから!?」
その意味が分かっているのか、姫香は顔を真っ赤にして否定した。
「な~んだ。上ってないのか~」
「そんなことでがっかりしないでください!」
「ちぇ~。からかえると思ったのにな~」
「からかわないでください!もぅ、着替えに行きますよ!」
子供のように唇を尖らせていた真美を置いていくように、俺の手を引っ張って姫香はすたすたと更衣室へと向かっていた。
「待ってよ~」と言いながら真美が追いかけてくる。
更衣室の前で姫香達と別れ歩と一緒に中に入った。
更衣室に入るなりすぐに歩が聞いてきた。
「で、本当は何があったんだ?」
「はぁ?」
「なんか二人の距離感が変わったなって思ってな」
「そんなに変わってるか?」
「まぁな。言いたくないならこれ以上は追及するつもりはないけど、学校が始まったらほどほどにしとけよ。周りのやつらが溶けちまうからな」
「お前がそれを言うのかよ」
「あはは、ちげえねぇや」
歩は他のお客さんに迷惑にならないように笑うと着替えをさっと済ませた。
俺もそれに続くようにさっと着替えを済ませて、姫香達が出てくるのを待った。
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