『②四人で海』

 目の前に現れた美女二人。

 一人はシンプルな黒の水着。

 もう一人は可愛らしいピンクの水着を着ていた。

 黒の方が真美で、ピンクの方が姫香だ。

 姫香に関してはプールでの反省を生かしたのか、サングラスに麦わら帽と一応の変装をしていた。特徴的な真っ白は髪の毛はその麦わら帽子の中に隠していた。

 これなら、麦わら帽を脱がない限りはバレないだろう。

 海で泳ぐときはなるべく人気のないところに行かなといけないだろうけどな。


「ちゃんと変装道具持ってきたんだな」

「はい。プールでは囲まれてしまいましたからね」

「それでも、不安は残るがないよりはマシか」

「泳ぐ時は脱がないとですけどね」

「そうだな。その時はあんまり人のいないところに行けばいいだろ」

「ですね」


 姫香は自然に俺の手を握ってきた。


「それじゃあ、翔君行きましょう!」

「お二人さん?私たちのこと忘れてませんか?」

「あ、忘れてました!」

「って、姫香ちゃん!?」

「冗談ですよ。ちゃんと覚えてますよ」

「もぅ〜。姫香ちゃんが意地悪になった気がする」

「気のせいでは?」

「まぁ、それだけ真美に心開いてるってことだろ」

「そうなの?」

「そうですよ!ほら、行きましょう」



 どうやら、海に来て1番はしゃいでいるのは姫香らしい。 

 姫香の楽しそうな姿を見て俺も自然と笑みが溢れた。


「やっぱり、あの二人何かあったよね?」

「だろうな。まぁ、そっとしておいてやろうぜ」

 

 後ろを歩く『バカップル』何コソコソと何かを言っていたが、姫香に気を取られて何を言っているのか聞き取れなかった。

 とりあえず、俺たちは場所取りをすることにした。

 これだけ人がいると場所を取るだけでも大変だ。

 場所を取るだけでも十分もかかってしまった。

 ちょうどよく日陰の場所があったので俺たちはそこを陣取った。


「よ〜し!これで思い切り泳げるね!」

「だな!行くか!」


 海に向かって走っていく『バカップル』はそのままバシャンっと飛び込んだ。

 

「姫香は行かないのか?」

「そう言う翔君こそ行かないので?」

「場所取りに疲れたからちょっと休憩」

「じゃあ、私もここにいます」

「そっか」

「はい」


 俺たちはのんびりと波の音を聞いていた。


「こういうのもいいですね」

「だな。泳ぐだけが海じゃないもんな」

「ですね。波の音が心地いいです」


 もう少し波の音を聞いていたかったが、どうやら『バカップル』それを許してはくれないらしい。


「二人も早くきなよ〜!気持ちいいよ〜!」

「翔〜!どっちがあの岩場まで早く着くか競争しようぜ〜!」

「分かった。今行く。せっかく、休憩してたのに」

「まぁまあ、いいじゃないですか。行きましょう」

  

 海に向かって走り出した姫香の後に続いて俺も向かった。

 夏の暑さを吹き飛ばしてくれそうなほど、海は冷たかった。


 

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