『③四人で海』スイカ割り

「もうちょっと右だよー!」

「違う違う、左だって」

「違います。真っ直ぐです!」


 俺は一体どの声を信じればいい?

 海で泳ぎつかれた俺たちはいったん陸に上がてスイカ割をしようとうことになった。 

 そして、今、俺は目隠しをスイカを割る役になっていた。 

 三人の声を頼りにスイカのもとまで行きたいのだが、三人とも違うことを言うので俺は絶賛混乱中だった。

 普通なら、姫香の言葉信じればいいのだろうけど…… 

 さっきの真美の番のことを思うとそうもいかなかった。

 俺の前にスイカを割る役を真美がやったのだが、その時、姫香は嘘の証言をいくつかして真美を混乱させて楽しんでいた。


「俺は誰を信じたらいい?」

「もちろん。私じゃないですか」

「いや、俺を信じろ!」

「私を信じてよ!嘘は言ってないから!」


 声で誰が嘘をついているのか分かればよかったのだが、俺にそんな凄技はない。

 恋人である姫香を信じるか?

 親友である歩を信じるか?

 友達である真美を信じるか?

 結局、この三択なら間違えなく姫香を選ぶべきんだろうな。

 そう思いながら、俺はその場に立ち尽くしていた。

 そして、どうすればスイカにたどり着くかを考える。 


「スイカまであと何歩くらいだ?」

「あと、十歩くらいかな」

「あと、二十歩です」

「あと、十五歩だよ~」

「なるほど」


 どっちにスイカがあるか分からないが、あと十~二十で到着するらしい。

 歩数が絞れたところで方角が分からないと意味がないんだがな。

 とりあえず、一個ずつ潰してくか。

 まずは、歩のやつから。

 確か、方角は左。歩数は十歩だったよな。

 そう思いながら、俺はその通りに動いてみた。しかし、足にスイカが当たる気配はなかった。

 ということで、それとは逆の行動をしてもとの場所に戻る。

 次は真美だな。

 確か方角は右。歩数は十五歩だったな。

 歩の時と同様に動く。やはり、こっちにもスイカはありそうになかった。

 ということは姫香が本当のことを言っていたのか?

 最後に姫香。

 確か方角は真っ直ぐ。歩数は二十歩だったな。

 同じように歩いていくと、ぐしゃっと音が鳴った。

 これは……スイカの下に敷いたブルーシートの音だな。

 ということは、姫香が当たりか。 

 結局最初から姫香のことを信じていればよかったというわけか。

 俺は、そう思いながら棒で近くにあるであろうスイカの位置を探った。 

 

「あった」


 そう呟くと俺は棒を振り上げスイカめがけて振り下ろした。

 確かにスイカにあたたった感触があった。


「凄いです!綺麗に真っ二つです!」

「くそ~!騙せると思ったのに~!」

「悔しい~!」


 姫香の嬉しそうな声と悔しがる『バカップル』の声。

 俺は目隠しを外して足元にあるスイカを見た。

 確かに姫香の言った通りスイカは真っ二つに割れていた。


「やりましたね!翔君!」

「そうだな。姫香のおかげだな」

「その割には迷っているように見えましたけど?」


 そう言って姫香は顔をグイッと寄せてきた。


「それは……姫香が真美に嘘の発言をするからだろ」

「だって、翔君に割ってほしかったんですもん」

「そっか」


 俺と姫香はしばらく見つめ合った。


「お二人さん?二人の世界に入らないでくれる?」

「あ、ごめんなさい」

「ほら、見つめてないで、冷えてるうちにスイカ食べるよ!」

「そ、そうですね!食べましょう!」


 姫香は恥ずかしさを誤魔化すように微笑んだ。   

 その後、日陰に座って四人でキンキンに冷えたスイカを食べた。

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