『④4人で海』ビーチバレー

「いっくよー!」

「どこからでもどうぞ」

「えいっ!」


 真美が綺麗なサーブを打った。

 そのボールを姫香がレシーブする。

 それを俺がトスして姫香がアタックを打つ。

 

「任せろ」

 

 姫香がアタックしたボールは歩の方に向かっていった。

 ボールの着地点に素早く入って歩がレシーブを上げる。

 真美が打ちやすいようにトスを上げ、真美がアタックを打つ。

 その見事なコンビネーションはさすがだった。

 しかし、俺たちも負けるわけにはいかない。何しろ、負けたチームには罰ゲームが待ってるからな。


「俺が取るよ」

「お願いします」


 真美のアタックは思ったより早かったがしっかりとアンダーレシーブをした。 

 こちらも『バカップル』に負けず劣らずのコンビネーションで相手陣地に俺がアタックを打ち込む。

 

「そこは取れねぇよ」


 俺が打ったボールは二人のちょうど真ん中に決まった。

 そんなこんなで試合は進んでいき俺たちのチームのマッチポイントとなった。


「これで決めます!」

「絶対に取る!」


 姫香がサーブを打った。

 それを綺麗に真美がレシーブする。

 ということはアタックを打つのは真美だな。

 予想通り真美がアタックを打ってきた。


「これを決めてデュースにするんだ!」

「絶対に拾います!」


 真美のアタックを姫香が拾うが、当たり所が悪かったのか、かなり遠くの方へ飛んで行ってしまった。


「翔君。ごめんなさい」

「大丈夫任せて」

 

 しかし、その程度は余裕で拾えた。

 俺は姫香が打ちやすいい位置にトスを上げた。


「姫香頼んだ!」

「翔君が繋いでくれたこのボール絶対に決めます!」


 今日一番速い姫香のアタックは真美めがけて飛んでいった。


「絶対に取る……あっ、ごめん」


 真美も当たり所が悪くボールは歩がいる位置からかなり離れたところに飛んで行った。


「絶対に繋ぐ……」


 そう意気込んで走る歩だったが、あと一歩間に合わずボールが地面に落ちた。


「くっそ~!」

「負けた~!」


 『バカップル』が悔しそうに声を上げた。

 

「やった!勝ちましたよ!翔君!」

「そうだな」


 姫香が俺に抱き着いてきて喜びを顕にした。

 俺も喜びたかったが正直それどころではない。薄い布(水着)越しに伝わってくる柔らかな感触に耐えるので精一杯だった。

 さらに追い打ちをかけるように見上げてくる姫香。深紅の瞳がキラキラと輝いていた。

 さすがにこれ以上はまずいと思って、俺はお互いの体に隙間が空くように少しだけ離れた。

 

「やりましたね!最後、翔君がボールを拾ってくれたから勝てました」

「あれを拾える翔はやっぱり『超人』だな」

「ほんとだよ~!あれを拾っちゃうのはずるい」

「さて、お二人さん。覚えてますよね?」

「な、何のことかな~」

「とぼけてもダメですよ?負けたチームは勝ったチームに奢るという約束です」


 そう。俺たちはお昼ご飯代を賭けて戦っていた。

 

「分かったわよ!奢ればいいんでしょ!」


 よほど俺たちに勝てると思っていたのか真美は本当に悔しそうにしていた。

 

「次は絶対に負けないからね!」

「いつでも挑んできてください。次も私たちが勝ちますから」

 

 勝って上機嫌の姫香は得意げにそう言った。

 そんな姫香と負けて悔しそうな『バカップル』と一緒にお昼ご飯を食べるために海の家へと向かった。

 

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