『⑤四人で海』海の家
海の家に近づくと焼きそばを焼く音と匂いでさらにお腹が減ってきた。
「お腹すきましたね」
「そうだな」
「何を奢ってもらいましょうか~」
「お願いだからそんなに食べないでね!」
ビーチバレーで負けて俺たちに奢ることが決まっていた真美が言った。
「分かってますよ。焼きそばにかき氷にそれから……」
「そ、そのくらいにして~!」
「うふふ、冗談ですよ。真美さんに奢ってもらうのは焼きそばだけにしておきます」
「ありがとう~」
真美は姫香に抱き着いた。
四人で海の家の中に入る。
「翔君は何にしますか?」
「カレーライスにしようかな」
「いいですね。かき氷は食べないんですか?」
「そうだな。姫香は何味にするんだ?」
「私はいちご味にします」
「じゃあ、俺はメロンにしようかな」
前に座っている二人も食べるものを決めたらしく店員を呼んで四人分の注文をした。
「本当は、あのお弁当屋さんに連れて行きたかったんですけど、今日は定休日みたいでした」
「美味しいお弁当屋さんだっけ?行きたかったなー!」
前回姫香と一緒にこの海に来た時に食べたお弁当屋さんは今日は定休日だということを到着してから知った。
「でも、そこの弁当を奢ることにならなくてよかったな。あそこのお弁当は高かったぞ」
「え、マジ!?」
「あぁ」
「今日はあんまりお金持ってきてなかったからよかった~」
真美はホッと一息ついた。
「また今度一緒に行こうよ」
「そうですね!次はちゃんと定休日を調べておきますね」
カレーライスが二つと焼きそばが二つテーブルに運ばれてきた。
「それじゃあ食べよう~!」
「ですね」
四人でいただきますをしてそれぞれの料理を食べ始めた。
俺もカレーライスを一口食べた。
スパイスの効いた少しピリ辛なカレーライスだった。
大きめの具材も噛み応えがあって美味しかった。
「カレーライスは美味しいですか?」
「うん。美味しいよ」
「一口ください」
「いいよ」
俺はカレーライスを一口スプーンで掬って姫香の口元まで運んだ。
もう、すっかりとあ~んをすることに慣れてしまって、今では恥ずかしくもなんともなくなってしまっていた。
姫香がパクっとカレーライスを食べた。
「ん~。辛いです」
「辛いか?」
「辛いですよ!よく食べれますね」
「これくらい普通だと思うけど……」
どうやら、姫香には辛いらしい。
俺はもう一口カレーライスを食べた。
「やっぱり辛くないな」
「わ、私にももう一口ください」
「いや、無理に食べなくてもいいんだぞ?」
「いえ、食べます!食べれるようになってみせます!」
姫香はそう言うと俺のスプーンを使ってカレーライスを食べた。
やっぱり辛いらしくひぃひぃと口を動かしていた。
「可愛いね~」
「ほんとにな。すっかりと翔に骨抜きにされてるな」
「あの『氷姫』がね~」
「懐かしいな。その呼び名も」
「ね~」
そんな俺たちの様子を見て『バカップル』は、そんな話をするのであった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます