第159話 体育祭編part13

 長々と続いた校長先生の話が終わり開会式が幕を閉じた。それぞれの生徒が自分のクラスのテントへと戻って行く。

 自分の椅子に座り秋の涼しい風を浴びる。

 席は出席番号順で座ることになっていたので姫香とは少し離れていた。

 最初の種目に出場する一年生たちが入場門をくぐって校庭の真ん中が集まっていた。


「最初の種目が始まりますね」


 席移動や立って応援することは禁止されてないので姫香が自分の席から離れて俺のところへとやってきていた。

 体操服姿で頭に赤色の鉢巻きを巻いている姫香は髪の毛をポニーテールにしていた。


「髪の毛結んだんだな」

「走るのには邪魔になりますからね」

「ポニーテール似合ってるな」

「そうですか?ありがとうございます!」


 俺がポニーテール姿を褒めると姫香は嬉しそうに笑っていた。

 いつもは髪を下ろしているから、たまに違った髪の毛を見ると新鮮だ。

 

「あ、始まりそうですよ!」


 ポニーテール姿の姫香から校庭に目を向けると、スタート係をしていた歩が体育祭ではお馴染みのピストルを空に向け右耳を手で塞いでいた。

 やがて、パンっという音が校庭に響き、第一走目の生徒たちが走り出し、障害物を一生懸命にこえていた。


「百メートル走は午前の最後の種目ですね」

「そうだな」

「ドキドキしますね」

「緊張してるのか?」

「そりゃあ、してますよ。久しぶりに体育祭で走りますから」

「そっか」


 緊張していると言いつつも、姫香の顔は走りたくてうずうずしているように見えた。


「走らせてもらえませんでしたからね。唯香さんに」

「さすが今をときめく高校生モデルだ。怪我したら大変だもんな」

「それもありますけど、そもそも体育祭にあんまり参加できませんでしたからね」

「今年は走って大丈夫なのか?」

「それはちゃんと唯香さんに許可を取ってあります。それに、あまりお仕事もありませんし」

「姫香の人気がなくなった、とかではないよな?」

「そうですね。唯香さんには来年で仕事を辞めることを伝えてるんです。それで、最近は少しずつ仕事を減らしてもらってます」


 姫香とそんな話をしている間にも校庭ではプログラムがどんどんと進んでいていた。


「去っていく人がいつまでも残ってても仕方ないですから」

「今までお疲れ様」

「それを言うのはまだ早いですよ。ですが、ありがとうございます」


 最初の種目が終わり退場門から退場すると、次の種目に出場する生徒が入れ替わりで校庭に出てきた。

 時間は止まってはくれない。 

 プログラムはどんどんと進んでいき、真美が出場することになっていた借り物競争が始まろうとしていた。


☆☆☆

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