第160話 体育祭編part14 真美の借り物競争

(藤井真美視点) 


 私の名前は藤井真美。

 借り物競争に出場するために入場門の前に並びながら、姫香ちゃんと仲良くなった四ヵ月のことを振り返っていた。

 まさか、自分があの『深紅の瞳を天使様』と仲良くなれるなんて思ってもいなかった。同じ学校に通っていることも、同じクラスにいることも知っていた。だけど、声をかけることができなかった。

 普段の私なら誰だろうと気軽に話しかけるのに、姫香ちゃんだけは無理だった。だって、大ファンだったから、大好きだったから。簡単に話しかけることはできなかった。それが今では気が付けば友達のように話すことができている。


「ほんと、夢のような話よね……」


 私は笑みをこぼし立ち上がった。

 前の生徒の後に続いて校庭の真ん中に向かう。

 ふと、自分のクラスのテントに目を向けると、姫香ちゃんと歩、それに翔がこっちを見ていた。

 私の視線に気が付いたのか、姫香ちゃんと歩は手を振ってくれている。翔は相変わらず。そんな三人に手を振り返すと、ピストルの音が鳴った。

 第一走目の生徒が少し前方に置かれているカードを一人一枚ずつ手に取っていく。そこに書かれている物や人と一緒にゴールを目指す。借り物競争はいたって簡単な競技だ。カードは体育委員が自ら手書きで作った。だから、どんなカードが入っているのかはだいたい把握してる。 


「あのカードを引きたいな」


 私には引きたいいカードがあった。もしも引くことができたなら、私は姫香ちゃんのもとに行く。 

 そして、順番が回ってきた。

 スタートラインに立ってピストルの音と同時に目の前のカード目掛けて走り出す。


「これは……」


 手に取ったカードを見て私はニヤッと笑い、すぐに姫香ちゃんのところへと走って行った。


「姫香ちゃん!一緒に来て!」

「え、私ですか!?」

「うん!そう!」


 私は戸惑っている姫香ちゃんの手を握った。


「二人とも頑張れ~!」

「行ってくる!」

「翔君、行ってきます!」

「いってらっしゃい」


 私の大好きな姫香ちゃんと一緒にゴールを目指した。

 他の生徒は探すのに手こずっているらしく、一着でゴールすることができた。


「やった!一位だよ姫香ちゃん!」

「ですね!」


 姫香ちゃんとハイタッチを交わした。

 満面の笑みを浮かべている姫香ちゃんを見ることができて私は幸せな気持ちに包まれていた。

 

「ところで、真美さん。お題は何だったのですか?」

「お題は……」


 私は自分が引いたカードを姫香ちゃんに見せた。


「親友、ですか?私と真美さんが……親友……」

「うん。私にとって姫香ちゃんは親友だから!」

「親友、初めてできました……嬉しいです!」

「これからもよろしくね姫香ちゃん!」

「はい。よろしくお願いします!」


 きっと私はこの日のことを一生忘れることはないだろう。

 私は満面の笑みを姫香ちゃんに向けた。


☆☆☆

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