『⑦氷室姫香の実家』

「ひ、姫香!?」

「お風呂あがったよ。お父さん」

「分かった。聞きたいことも聞けたし、私はこれで退散するよ」


 雄二さんは立ち上がると、俺の肩をポンと叩いてリビングから出ていた。

 雄二さんと入れ替わるように姫香が俺のもとにやって来た。それも、満面の笑顔を浮かべていた。


「お父さんがあがったら、翔君が入ってください」

「わ、分かった」

 

 姫香が俺の隣に座った。

 ふんわりとお風呂あがりのシャンプーの匂いが香ってきた。

 

「それで、お父さんと何を話してたんですか?」

「それは……まぁ、ちょっと昔話をな」


 どうやら、最後の俺の言葉は聞こえていなかったらしい。 

 俺はホッと胸を撫で下ろした。


「そうですか。私の耳には『しっかり支えます!姫香さんを幸せにします!』という言葉が聞こえてきたんですけど」

「やっぱり、聞こえてたんじゃねぇか!」


 俺は恥ずかしくて顔を逸らした。


「ふふ、私を幸せにしてくれるんですか?」

「そ、そうだよ!幸せにするよ!」


 もう、こうなったら隠しても仕方がないと思い、俺は開き直った。

 

「翔君。私は翔君と再会できた時点でもう幸せをもらってました。そのうえ、翔君と付き合うことができて、今こうして一緒にいられて、私は幸せをもらいすぎてるくらいです」

「それを言ったら俺も姫香からたくさんの幸せをもらってるよ」

「じゃあ、お互い様ですね!」


 そう言って、姫香は俺の腕に抱き着いてきた。


「これからも二人で幸せを分け合いましょうね!」

「そうだな」


 姫香が俺の肩に頭をコテンと乗せた。

 これからもしっかりと支えるからなそう思いながら、俺はそんな姫香の頭を撫でた。

 

 





 

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