『⑧氷室姫香の実家』

 雄二さんの次にお風呂に入り、後は寝るだけの状態となった。

 とはいえ、お風呂上がりですぐには眠れないので、俺は眠くなるまで本を読もうと思いリビングに向かった。

 リビングに入ると姫香がソファーに座っていた。


「姫香。起きてたんだ」

「はい。翔君を残して一人で寝るわけないじゃないですか」

「そっか」

「お風呂どうでしたか?」

「うん。気持ちよかったよ」

「よかったです」


 俺は姫香の隣に座った。

 早速本を読もうと思ったが、なぜか姫香がさっきから俺の頭をジーッと見ている。


「な、何?」

「髪の毛、乾かさないのですか?」

「え、あぁ、めんどくさいからな」

「ダメですよ!ちゃんと乾かさないと」

「でもな〜」

「もぅ〜、仕方ないですね。私が乾かしてあげますよ」

「え?」


 姫香は「ちょっと待っててください」と言ってリビングから出て行った。

 すぐに、ドライヤーを片手に戻ってきた姫香は俺の後ろに立った。


「じゃあ、乾かしますよ?」

「う、うん」


 温かな風が頭に吹く。

 姫香が俺の頭をわしゃわしゃとする。

 なんか、気持ちいい・・・・・・

 ある程度乾いてきたら、次は冷たい風が吹く。

 

「はい。終わります」

「ありがとう」

「どういたしまして」


 俺の髪を乾かし終わった姫香は再び隣に戻ってきた。


「まだ、寝ないですか?」

「うん。もう少し起きてるかな」

「なら、少しお話ししても?」

「いいよ。なに話す?」

「私がモデルになった理由でも・・・・・・」

「あぁ、そういえば、朝言ってたな」


 姫香が姿勢を正し、俺の方を向いた。


「そんな大層な話ってわけではないんですけどね」


 そう前置きを置いて、姫香は言った。


「私がモデルになった理由は翔君と再会するためです」

「え?そうなの?」

「はい。だから、翔君と再会できた今、もうモデルをやる必要はないんですよね〜」

「だから、辞めるって言ってたのか」

「はい。来年、映画が公開されて、既に決まってるファッションショーに出たら、辞めるつもりです」

「そっか」

「いい、ですよね?」

「いいんじゃないか。それを決めるのは姫香だろ」

「そうですね」


 まさか姫香がそんな理由でモデルやっていたとは

予想もしていなかったな。

 言えないよな。気づいてなかったなんて。


「なので、来年からはもっと一緒にいれます!」

「そっか。それは楽しみだな」


 その後、俺たちは眠くなるまで話をして、それぞれの寝床へと向かって行った。

 

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る