第180話 クリスマス編part2 二人で観る映画②

 今日も今日とて姫香はテレビ撮影があるらしくお昼休憩には早退していた。

 

「ねぇ、最近の姫香ちゃん頑張り過ぎじゃない?」

「だよな。俺も思ってた」

「大丈夫なの?」

「姫香は俺たちに心配させないように隠すからな」

「そうなのよね~。あんた、ちゃんと変化に気が付いてあげなさいよ?」

「分かってるよ」


 姫香の微細な変化にもちゃんと気が付いてあげないといけないよな。

 それも彼氏の役目だよな。

 

「それにしても、楽しみだよね!姫香ちゃんが主演の映画!」

「だよね!早く見たいなー!」

「そいえば、二人とも姫香のファンだったな」

「そうよー!五回は見に行くつもり!」

「行きすぎじゃないか?」

「何言ってるんだ、翔?これでも少ない方だぞ?DVDがでたらもっと見るからな」

「翔だって姫香ちゃんのテレビとか見てるんでしょ?」

「それは……」


 図星を言い当てられ視線を彷徨わせると、真美がニヤッと笑って追い打ちをかけてきた。


「可愛いもんね~。姫香ちゃん」

「……」

「ほんとに天使だよね~」

「……」

「あんな子の彼氏はさぞかしカッコいいんだろうな~」

「……」

「毎日イチャイチャ……」

「ああ、もう、そうだよ見てるよ。悪いかよ」


 姫香と一緒にいる時は見せてくれないから、姫香を家まで送り届けた後にこっそりと姫香が出演したテレビを確認している。

 自分の彼女がテレビに出てたらそりゃあ気になるだろ。

 どんなことを言われてるのかとか、俺の知らない姫香の一面を知れたりするから、見ないわけにはいかないのだ。

 もちろん、可愛い姫香を見たいという理由もある。


「別に~。見るなって言われる方が無理よね~」

「俺たちも見てるもんね~」

「視聴率に貢献してるようで何よりだよ」


 恥ずかしさを隠すように俺はそう呟いた。

 今日もおそらく姫香は仕事終わりに俺の家に来るだろう。

 教えてくれないだろうけど、疲れてないか聞いてみるか。

 午後の授業のあいだ、俺は姫香のことしか考えられなかった。

 

☆☆☆


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る