第181話 クリスマス編part3 二人で観る映画③

 そして、夜。

 予想通り仕事終わりの姫香は俺の家にやってきた。


「ただいまです」

「おかえり」


 もはや、姫香も俺の家が自分の家であるかのように「ただいま」と言って入ってくるようになっていた。

 玄関先で姫香を出迎える。

 姫香から仕事用のカバンを受け取って一緒にリビングに向かう。

 その途中、姫香の顔色をチラチラと見ていたが、その顔は少し疲れているように見えた。


「どうかしましたか?」

「こんなこと駆け引きしてもしょうがないから素直に聞くけど、疲れてないか?」

「私ですか?」

「そりゃあ、姫香しかいないだろ」

「急にどうしたんですか?」

「最近ほら、忙しそうだから、大丈夫かと思ってな」

「私を心配してくれるんですね」


 姫香はやんわりと微笑んだ。


「ありがとうございます。ですが、大丈夫ですよ」

「ほんとか?」

「はい。私はこの通り元気ですよ」


 そう言って、くるっと一回転をすると前屈みになり俺のことを見上げてきた。

 その顔は元気に見えるが、本当のところは分からなかった。

 もしかしたら、元気の仮面をつけているだけかもしれない。

 まあ、姫香が元気というからにはそれを信じるのも彼氏としての役目なのかもしれない。

 そう思い、一緒にリビングに入ってソファーに座った。


「今日はどんな番組の収録だったんだ?」

「今日はクイズ番組でした」

「へぇ、解答できた?」


 姫香は頭がいいからそれなりに解答できたんじゃないだろうか。


「まぁまぁですかね。やはり、プロの人には勝てませんね」


 そんな雑談をしながら、まったりとした時間を過ごした。

 三十分くらいしたところで、姫香は俺の肩に頭を預け、すやすやと寝息をたてながら眠りについていた。


「まったく、何が疲れてないだよ」


 俺は姫香の頭を自分の膝の上に寝かせた。

 

「ゆっくりとおやすみ」


 姫香の頭をそっと撫で、そう呟くと俺も目を瞑った。


☆☆☆

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