第186話 クリスマス編 part8 四人で過ごすクリスマス・イブ②

 姫香と近場のスーパーに行って、二日分の食材を買い込むと家に戻った。

 二人の両手には、パンパンに詰まったスーパーの袋。

 今日は四人分の昼食と夕食を作らないといけないので、いつもの倍以上の食材を買い込んだ。 

 

「それで、今日の献立は?」

「もちろん、クリスマスっぽいものを作ります!」

「俺も手伝うから指示してくれ」

「はい。よろしくお願いします。作るのはもう少し後ですけどね」


 現在時刻は十時半。

 二人がやって来るのは十一時半ごろ。

 残り一時間か。 

 あまり早く作り始めても料理が冷めるだけからな。

 

「了解」

「ということで、それまでまったりしましょう。あっ!ケーキを買うの忘れました!」

「そういえば、そうだな」

「どうしましょう。クリスマスなのに……」

「あいつらに頼んどくか。明日の分は明日買いに行けばいいだろ」

「そうですね。私から頼んでおきます」

 

 そう言うと姫香はすぐに真美にメッセージを送ったようだった。

 ソファーに移動して肩が触れ合う距離で座った。

 

「買ってきてくれるようです」

「あいつらのことだから大量に買ってきそうだな」

「大丈夫なんじゃないですか……たぶん」

「どうだろうな。去年もあいつらと一緒にクリスマス会をしてけど、その時は三個も食べさせられたからな」

「そうなんですか!?」

 

 姫香は目を見開いて驚いていた。

 あの二人はそういう突拍子もないことをするやつらだからな。

 流石に一日に三つは食べれなかったので、二日に分けて食べたくらいだ。

 ちなみに、あの二人は超甘党なので、その日のうちに三つのケーキをペロッと完食していた。


「だから、今年もそのくらい買ってくるかもな」

「三つですか……食べれるでしょうか」

「別に無理して食べなくてもいいからな。というか、一個でいいって連絡しといてくれ。たぶん、無駄だと思うが」

「分かりました。しておきます」


 姫香も一日に三つのケーキは厳しいらしく、すぐにメッセージを送っていた。

 それでもきっとあいつらは買って来るんだろうな。

 だって、あいつらは『バカップル』だから。


「連絡帰って来たか?」

「はい。『分かった』って返ってきました」

「信用できない。『分かった』だな」

「少しは信用してあげてくださいよ」

「姫香よりはあの二人と付き合い長いからな」

「そういえば、お二人とはいつから友達に?」

「初めて話したのは中一の時だな。友達になったのはいつだろうな。その瞬間は覚えてないな」

 

 友達になった瞬間というのはあまり覚えてないものだ。

 気が付けばあの二人とは友達だったな。

 あの二人とここまで親密になったのにはきっかけがあるけどな。

 

「友達になる瞬間ってあまり覚えてないだろ?」

「確かにそうかもしれませんね」


 姫香にも心当たりがあるようで頷いていた。


「そう考えると友達っていう関係は不思議ですよね」

「そうだな。人間関係ってのは本当に不思議だな」


 友達という関係には簡単になれる。

 だからこそ、簡単に断ち切ることもできる。裏切ることもできる。こっちがどれだけ信頼していても、向こうは信頼してないかもしれない。

 相手の心までは分からないのだから。

 そう考えると、姫香と恋人関係になれたのは奇跡に近いんだろうな。

 互いに心が通じ合って初めてなれる関係。

 その関係になれるのは友達になることの何倍も難しいことだろう。

 

「姫香。俺に不満があったらいつでも言ってくれていいからな。我慢するなよ?」

「どうしたんですかいきなり。私が翔君に不満なんて持ってるわけないじゃないですか」

「今はそうかもしれないが、いずれは不満に感じることが出るかもしれないだろ?」

「その時はちゃんと言いますよ?遠慮はしませんからね?」

「それでいいよ。遠慮はしないでほしい」

「もちろんそれは翔君もですからね?私に不満があったらいつでも言ってください。改善できるように努力しますから。翔君も遠慮はダメですからね」


 そう言って俺の肩に姫香は頭を預けてきた。

 料理ができて、家事ができて、しっかり者で、たまに子供っぽくて、俺のことを好きでいてくれる。

 そんな姫香に不満があるわけがない。

 きっとこれから先も不満に思うことはないのではないだろうか。

 

「俺は姫香と一緒に居れるだけで幸せだから。不満なんてないよ」

「本当ですか?」

「ああ、嘘はつかないよ」

「それならいいんですけど。私も翔君と一緒に居れるだけで幸せなので、翔君に不満なんて一切ありません」

「そっか」

 

 俺が姫香の頭を優しくゆっくりと撫でると、姫香は嬉しそうに微笑んで幸せそうな顔をしていた。


☆☆☆


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