第185話 クリスマス編 part7 四人で過ごすクリスマス・イブ①

 朝から雪が降っていた。

 今日はクリスマス・イブで、四人でクリスマスパーティをすることになっていた。

 寒空の下ベランダに出て雪を眺めていると、家のチャイムが鳴った。

 おそらく、姫香が来た。

 玄関の扉を開けると予想通り姫香がいた。

 

「いらっしゃい」

「おはようございます。寒いですね」

「そうだな。雪、降ってるもんな」

「ですね。ホワイトクリスマスですね!」

「嬉しそうだな」

「当たり前です!雪が降ってるんですよ!テンション上がるな決まってるじゃないですか!」


 まるで子供のようにウキウキとしている姫香を見て可愛いと思ってしまった。

 そんな姫香の服装は態度と違って大人っぽかった。

 白色のハイネックニットに黒色のガウチョパンツ、頭には赤色のニット帽を被っていて、首元に緑色のマフラーを巻いていた。

 その服装を見て俺はクリスマスらしい服装だなと思った。

 

「翔君はテンション上がらないのですか?」

「もちろん。上がってるよ」

「それならよかったです。ところで、何か気が付きませんか?」


 そう言って姫香はくるっと一回転した。

 

「気が付くことか……そうだな。クリスマスっぽい服装ってくらいか」

「正解ですっ!」


 当ててもらったことがよほど嬉しいのか姫香は満面の笑みを浮かべていた。


「気合が入ってるな」

「そりゃあ、楽しみにしてましたから!今日のクリスマス会!」

「そっか。あいつらが来るのは昼前だぞ?」

「知ってますよ。せっかくなのでご飯を作って待ってようかと」

「材料ないけど?」

「一緒に買いに行きましょう」

「了解。じゃあ、準備するから待ってて」


 姫香を家に上げると、俺は着替えをするために自室に入った。

 手短に着替えをすませて姫香の待つリビングに向かう。

 しかし、姫香はリビングにいなかった。

 リビングから出れるベランダに出て雪を見ていた。


「雪を見てるのか?」

「あ、翔君。はい。雪を見てました」

「雪、好きなのか?」

「好きですね。見てるとワクワクしてしまうくらいには好きです」

「それはかなり好きだな」

「ですね」

  

 そんな姫香の隣に立って、しばらく一緒に雪を見た。

 俺が見ていたのは雪ではなく、姫香の横顔だったということは秘密だ。

 

「そろそろ。行くか?」

「行きましょうか」

「この調子だと夜には積もってるかもな」

「明日の分の材料も買っておかないとですね」


 家の中に入り、そんな話をしながら玄関へと向かった。


「そういえば、姫香は泊まるんだっけ?」

「むぅ、忘れてたんですか?」

 

 頬を膨らませた姫香が俺の腕に抱き着いてくる。

 

「忘れてたわけじゃないって、今思い出したんだから」

「それを忘れてたというんです!」

「ごめんって」

「これは、お仕置きが必要ですね」


 何やら不穏なことを言っている姫香。

 俺は聞かなかったことにして靴を履くと先に家を出た。


☆☆☆

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る