第197話 大晦日&新年編part4 二人で過ごす大晦日②
それからベッドの傍で本を読むこと数時間。
午後一時。
姫香が目を覚ました。
「翔……君」
「どうした?」
「傍にいてくれたんですね」
「言ったろ。傍にいるって」
「ありがとうございます」
目を細めて安心したように姫香は弱弱しく呟いた。
「食欲はありそうか?」
「どうでしょう。多分あると思います」
「じゃあ、食べやすい物作ってくるけど、食べるか?」
「翔君の手料理はなんでも食べます!ゴホッゴホッ」
そう言って体を起こした姫香は咳こんだ。
「無理するなって。ほら、横になって」
姫香をゆっくりとベッドに寝かす。
「じゃあ、ご飯作って来るから安静にしてろよ」
「はい。待ってます」
俺はリビングに向かい、卵入りうどんを簡単に作ると、自室に戻った。
「お待たせ」
「美味しそうな匂いです」
床にうどんを置いて、体を起こした姫香の隣に座って、姫香の体を支えた。
「ありがとうございます」
「ゆっくり食べればいいからな」
「食べさせてください」
「え?」
「翔君に食べさせてほしいです」
深紅の瞳をうるうるとさせ、俺のことを見つめてくる姫香。
そんな瞳で見つめられたら、やるに決まってるだろ。
「仕方ないな。甘えん坊なお姫様のために食べさせてあげる」
「ふふ、ありがとうございます」
嬉しそうに目を細めて微笑んだ姫香にうどんを食べさせる。
美味しそうにうどんを食べる姫香についつい見惚れてしまったのは、いつもより色っぽく見えたからだろうな。
こんなに弱ってる姫香は久しぶりだな。
前に一度、姫香のことを看病したときのことを思い出していた。
「翔君の手料理を食べるだけで元気が出ますね」
「そりゃあ、よかった。早く元気にならないとな。明日は初詣行くんだろ?」
「絶対に行きます!今日で治してみせます!」
「まぁ、無理はしないようにな。初詣はいつでもいけるんだから。今は体調を治すことが優先だ」
「分かりました。翔君。安静にしてますので、その私が寝るまで手を、握っててくれませんか?」
だからその顔はズルいって。
「もちろんだよ」と頷いて俺は姫香の手を握った。
「ありがとうございます。これで安らかに眠れそうです」
「なんだか死ぬみたいな言い方だな」
「こんなことで死にませんよ。死んでる場合ではないです。まだまだ翔君とたくさん楽しい思い出を作らないといけませんから。それに翔君の子供だって欲しいですし」
「な、何言ってんだよ!?」
「いつか作りましょうね。私たちの子供」
「熱で頭でもおかしくなった?」
「なってませんから!翔君は欲しくないんですか?私たちの子供」
「そりゃあ……欲しいに決まってる」
「ふふっ。きっと翔君に似てカッコいい子になりますね」
「それなら姫香に似て可愛い子になるんじゃないか」
「楽しみです」
姫香はそう言うとゆっくりと目を閉じた。
しばらくすると姫香は安らかな顔で眠りについた。
そんな姫香の寝顔を見て、いつか訪れる未来に期待を膨らませた俺も少しだけひと眠りすることにした。
☆☆☆
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