6月9日(水) 12:00〜

 お昼休憩。 

 今日も屋上に向かった。

 教室にいたらご飯をゆっくり食べることもできなさそうと感じたからだ。ただ、昨日と違う点がある。


「うふふ。なんだか楽しいですね」

「そうか?」

「はい。こうやって、誰かと一緒にご飯を食べるのはワクワクします」


 今日は昨日と違って俺1人ではないということだ。

 俺の隣に氷室さんがいて、前には『バカップル』かいる。

 そういえば、氷室さんはいつも1人でお昼ご飯を食べていたな。

 仕事のせいもはあるだろうけど、一番大きいのは『氷姫』っていうあだ名だろうな。

 そのあだ名はたしかに氷室さんにピッタリだった。氷室さんは俺以外の生徒と話すときは基本的に冷たい表情と態度だった。

 それはもう、側から見てて可哀想になるくらいにそっけない態度だった。

 だから、俺にだけ笑顔を見せてくれるギャップがヤバい・・・・・・。


「今まで仕事ばかりしてきましたから、こういった青春みたいなこと、あんまりしてこなかったですから」

「そうか。なら、これからしたいけばいいだろ。俺でいいならいくらでも付き合うし」

「本当ですか!?」


 氷室さんの顔にパァーッと花が咲いて、キラキラとした深紅の瞳が俺のことを見上げていた。

 その笑顔で他の生徒と接したら、すぐに友達できるだろうに。

 

「氷室さんの期待に応えれるかは分からないけどな」

「大丈夫です!王野さんとなら、楽しい青春ができます!」


 なぜかそう言い切る氷室さん。

 嬉しいような、責任重大なような。期待してくれているからにはその気持ちに応えてあげたいな。


「なになにー?2人でなんの話ししてるのー?」

「氷室さんが青春をしたことないって話をしてた」

「ちょ!?王野さん!?それは言わないでくださいよぅ・・・・・・」

「えー!そうなの!?いいじゃん!氷室ちゃん!青春は大事だよ!高校時代は1度しかないからね!」

「てことで、2人も協力よろしく」

「もちろん!」

「おぅ!任せとけ!」


 氷室さんは何か言いたそうな顔で俺のことを見ていたが、前を歩く『バカップル』の勢いに押されて、恥ずかしそうに俯いてしまった。


「ならさ、早速この後ご飯食べながら、何したいか話し合おうよ!」

「せっかくなら4人でどっか行きたいよな〜」

「だよね!私、氷室ちゃんとお出かけって夢だったんだ〜!」

「2人で盛り上がるのはいいけど、ちゃんと氷室さんの意見も聞いてやれよ?」

「分かってるよ〜!」


  そういえば、この2人は『深紅の瞳を持つ天使』の大ファンだったな。

 本物のと一緒にお出かけとか、そりゃあファンからしたらテンション上がるか。


「そうと決まれば、まずはお昼ご飯だー!」


 真美が屋上に続くドアを開けた。

 『バカップル』の後に続いて俺も屋上に出ようとしたが、不意に服の裾を氷室さんに掴まれて足を止めた。


「どうした?」

「・・・・・・王野君のバカっ・・・・・・」

「ん?」


 氷室さんが何かボソボソと言っていたが、何言ってるのか聞き取れなかった。


「もぅ、いいです!早く行きますよ!」

「お、おう・・・・・・」


 なんだか、よく分からなかったが、俺たちも屋上へと出た。

 そして、4人でご飯を食べ終えた後は、歩と真美が青春とはなんたらかを語っていたせいで、結局何も決まらないままお昼休憩が終わった。

 

☆☆☆

週間ランキング16位✨

今までで最高です!!

ありがとうございます😆

来週からは月、水になりますが

今週は今まで通り投稿します!

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