第149話 体育祭編part3
放課後、俺の家にて・・・・・・。
体育祭のメンバー選出を終えたのも束の間、歩と真美は次の行事、文化祭のことで頭を悩ませていた。
文化祭は体育祭の1ヶ月後に開催されることになっていた。
準備期間が1ヶ月あるといえ、体育祭と違って文化祭はいろいろと決め事が多い。
そんな文化祭を仕切るのも、目の前で頭を抱えている『バカップル』だった。
「出し物何にしよー」
「1ヶ月って長いようで短いのよね〜」
「だよなー」
「しかも、ステージとクラスで二つ考えないといけないのよね〜」
「去年も悩んだよなー」
「お二人は去年も文化祭実行委員をされたのですか?」
「うん。去年も決めるのにかなり時間かかったのよねー。姫香ちゃん、何かやりたいこととかない?」
そんなに悩むなら文化祭実行委員なんてしなければいいのにと思うのだが、この二人は目立つことが好きなので、それは無理な話ってもんだな。
真美に何をやりたいかと聞かれた姫香もそんなにすぐにいい案が思いつくわけもなく、一緒に頭を悩ませることになった。
そんな三人のために俺はコーヒーでも淹れてあげることにした。
「翔君。私がやりますよ?」
「大丈夫だよ。姫香はあの二人と一緒にやりたいこと考えてきな。去年は参加できなかったんだろ?体育祭も文化祭も」
「ですが、いいアイデアは思い浮かびそうにないので・・・・・・」
そう言った姫香は少し悔しそうにしていた。
「それに、コーヒーを淹れていたら何か思いつくかもしれませんし」
「そっか。じゃあ、お願いするよ。姫香の淹れるコーヒーは美味しいからね」
なんでもマネージャーさんがコーヒーが大好きで、去年、美味しい豆を教えてくたらしく、それ以来、その豆でコーヒーを飲むことにハマった姫香はいろいろと勉強したらしい。
最近では俺の家でもコーヒーを淹れてくれていて、その豆や手動のミル機も新しいものを買って置いていた。
そんな姫香が作るコーヒーは美味しく、俺も作り方を教えてもらったが、まだ姫香のように深みや味を出すことはできなかった。
俺はコーヒーを淹れるのを姫香に任せてソファーに戻った。
「どうだ?何か案は浮かんだか?」
「翔ー!知恵を貸してくれ!」
歩はそう言って俺に抱きついてこようとしてきた。この様子を見るにどうやら案は浮かんでないらしい。
「ていってもな。俺だって案なんてないぞ。俺がそういうのに興味ないの知ってるだろ」
「でも、案くらいは出せるだろ。『超人』なんだから」
「それはお前らが勝手に言ってるだけで、俺は普通の人だよ。てか、真美。また姫香に余計なこと言っただろ」
「な、なんのことかな〜?」
「別に姫香ならいいけどさ。他の人には言うなよ?」
「分かってるよ。翔の凄さを知って他の女どもが群がってきても嫌だし。翔にはずっと姫香ちゃんのそばにいてあげてほしいし」
もちろん姫香のそばから離れるつもりもないし、誰かに譲るつもりもない、ないが、その当の本人が俺に目立ってほしいといっているのだから、困ったものだ。
「とにかく、ペラペラと喋るなよ」
「とか言ってさー。本当は姫香ちゃんにカッコいいところ見せたいんでしょ?百メートル走、出るんだもんね?」
「そ、それは・・・・・・姫香がそれがいいって言ったから・・・・・・」
「本心は?」
まるで俺の本心を見抜いているかのように真美はニヤニヤと笑っていた。
そりゃあ多少はカッコいいところを見せたいと思わなくもないが・・・・・・学校で目立つことを避けることと天秤にかけるとまだ少しだけ目立つことを避けることの方が勝っている。
それすらも見抜かれているのか真美はそれ以上何も聞いてこなかった。
「まぁ、いいや。どうせ姫香ちゃんと付き合えるのなんて翔ぐらいしかいないし。ずっと一緒にいれば自ずとそんな機会は訪れるだろうしね」
そう言って真美は話を文化祭のこと戻すように手をパンと叩いた。
「ということで、文化祭の案を考えるわよ!姫香ちゃん以外にあんたの凄いところ暴露されたくなかったら手伝いなさい!」
「脅しやがって・・・・・・分かったよ。考えるよ」
俺は真美の脅しに負けしぶしぶ頷くと文化祭の出し物を考える。
三人が頭を悩ませても出ないものを俺が簡単に出せるわけがない。
10分ほど頭を悩ませて考えていると姫香が「お待たせしました」と四人分のコーヒーをおぼんにのせて戻ってきた。
「みなさん、少し休憩しましょう。コーヒー淹れたのでこれで一度リセットです」
「わぁー!姫香ちゃんが淹れてくれたの?」
「はい。最近コーヒーを淹れることにハマってまして」
「そうなんだ!いい香り〜」
真美はコーヒーカップを持つとコーヒーの香りを嗅いでいた。
「コーヒーか・・・・・・」
俺もコーヒーカップを持ち姫香の淹れてくれたコーヒーの香りを楽しんだ。そして、一口飲んで言った。その時、一つのアイデアが頭に浮かんだ。
「なぁ、こんなのはどうだ?」
☆☆☆
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