第150話 体育祭編part4

「コーヒーか・・・・・・」


 俺もコーヒーカップを持ち姫香の淹れてくれたコーヒーの香りを楽しんだ。そして、一口飲んで言った。その時、一つのアイデアが頭に浮かんだ。


「なぁ、こんなのはどうだ?」


☆☆☆


「もしかして何かいい案が思いついた?」


 姫香の淹れてコーヒーが少し苦かったのか歩は顔を顰めていた。

 それに気がついた姫香が「ミルクとお砂糖持ってきますね」とキッチンに向かった。


「案っていうか提案?」

「どっちも一緒だろ」

「まぁ、そうなんだけど・・・・・・」

「なんだよ。もったいぶらずに早く教えろって」


 姫香がミルクと砂糖を持って戻ってきて、渉に「はいどうぞ」と渡した。 

 渉はそれを「ありがとう」と受け取ると急かすように俺に聞いてきた。


「で、何を思いついたんだ?」

「翔君、何かいい案を思いついたのですか?」


 隣に座った姫香はコーヒーを飲もうとしていた手を止め、興味津々といった目で俺のことを見ていた。


「ああ、思いついたのは教室でやる出し物。もし、これをやるにしても姫香さえよければって感じだな」

「私、ですか?」


 俺は「うん」と頷いて、手に持っていたコーヒーカップに視線をやった。


「これを出すってのはどうだ?」

「これって、コーヒーですか?」

「そう。正確には姫香の淹れたコーヒーだけどな」

「私の・・・・・・淹れたコーヒー」

「どうだ?姫香がやりたいっていうならだけど・・・・・・」

「私は・・・・・・」

 

 姫香はコーヒーカップに口をつけて迷っている様子だった。

 

「すぐに決めなくてもいいさ。まだ時間はある。それに、他のクラスメイトたちがなんて言うか分かんないしな。もしも、姫香がやりたいっていうなら、そこは二人がなんとかしてくれるだろうけどな」


 そう言って二人のことを見ると頼もしい笑顔を浮かべ頷いていた。

 それを見て決意を決めたのか姫香がコーヒーカップから口を離して言った。


「もし、やってみたいっていったら手伝ってくれますか?」


 そして少し不安そうな顔で俺たちを見た。

 そんな不安を消しとばしてやるように俺は笑顔で頷いた。


「そんなの当たり前だろ?」

「そうだよ!私たち友達でしょ!手伝うに決まってるじゃん!」

「そうだねー」

「皆さん、ありがとうございます。私、やります!」

「じゃあ、決まりだねー!楽しくなりそう!」

「せっかくだから、俺たちも淹れ方を教えてもらわない?そしたら、ここにいる四人で回せるし」

「いいねー!姫香ちゃん、私たちにもコーヒーの淹れ方教えて〜!」


 それだと『姫香の淹れたコーヒー』にならないのではないかと思ったが、姫香も二人も楽しそうに笑っているので、まあそれでもいいかと思った。

 

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