第172話 文化祭編part4 文化祭当日①

 朝から校内は賑わっていた。

 それは俺たちの教室も同じで、準備に追われてた。

 教室を可愛らしく装飾したり、テーブルを並べたりと大忙しだった。


「それはこっちにお願い~」

「はい」

「それはそっちね~」


 指示を出していた真美は的確にクラスメイトに指示をしていた。

 見る見るうちに教室が可愛らしく装飾されていった。

 

「翔も見てないで手伝って!」

「何をすればいい?」

「それくらい自分で考えなさいよ!」


 何故か俺には指示をくれなかった真美である。

 さて、何をしようか。

 教室内を見渡してできることを探してみた。 

 体育祭以降、姫香と話しやすくなったのか、姫香はクラスメイト達と楽しそうに準備をしていた。

 歩はステージ出し物のダンスに出るので今も練習中。

 俺にできることといえば……。


「テーブルを運ぶくらいか」

 

 そう呟いて俺はテーブルを運んでいる生徒たちのもとに向かった。


「何か手伝えることはある?」

「あ、王野君。じゃあ、この机を運ぶのをお願い」

「了解」


 体育祭の一件以来、クラスメイト達の態度も変わっていた。

 別に今までも挨拶程度なら交わしていたが、こんな風に会話を交わすことはあまりなかった。しかし今ではそれなりに会話もするようになっていた。

 俺は頼まれた机を指定の場所に運んだ。


「ここでいいか?」

「うん。ありがとう」

「他にも手伝えることがあったら言ってくれ」

「じゃあ、あの机も運んでほしいかも」

「了解」

 

 女子生徒が指差したその机を運び終えると真美が声をかけてきた。


「いいわね~。私が見たかったのはそういうのよ!」

「どういうのだよ?」

「翔が私たち以外のクラスメイトと仲良くしているところよ!」

「それはよかったな」


 真美は口角を上げて満足気な笑みを浮かべていた。

 

「その調子でいろんな生徒と仲良くなってね!あ、でも姫香ちゃんを嫉妬させちゃダメだよ?」


 そう言い残すと真美は残っている作業に戻って行った。 

 再び手持無沙汰になった俺は姫香のことを見た。

 すると、俺の視線に気が付いたのか姫香も俺のことを見返してきた。

 そして、楽しそうに笑うと俺に淹れたてのコーヒーを持ってきてくれた。


「味見お願いします」


 そう言われ、姫香の淹れたコーヒーを啜った。

 

「うん。いつも通り美味しいよ」

「よかったです!」


 相変わらずの美味しいコーヒーを飲んだ俺は「今日は大盛況で忙しいんだろうな」と笑みを溢した。


 

☆☆☆


 


 

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