第210話 新生活編part10 四人で花見④

 二人がそんな会話をしているとは露知らず俺と姫香は真美のサンドイッチを堪能していた。

 

☆☆☆


 その後も楽しくワイワイとお昼ご飯を食べた俺たちはレジャーシートと弁当を片付けて、公園内にある桜並木を歩くことになった。


「私たちももう大学生~」

「来年には大人の仲間入りですね」

「そうだね~。姫香ちゃんはお酒飲む?」

「どうでしょうか。真美さんは飲みますか?」

「私は飲んでみたいかな!酔った時の自分を見てみたいかも!」


 そう言った真美に俺が「真美は酒癖悪そうだな」と言うと、こちらを振り返り睨みつけてきた。


「うっさい!絶対に翔の方が悪いし!」

「俺はお酒は飲まないから」

「そう言う人に限って酒癖悪いんだよ!」

「飲まないから分かんないな」

「いつか絶対に飲ませてやるんだから覚悟しときなさい!ね、姫香ちゃんも翔が酔ったところ見てみたいよね?」

「そうですね。酔った翔君はどんな感じになるのか気になりますね」


 前を歩いていた姫香がこちらを振り返って俺のことを見た。

 その深紅の瞳には期待の色が浮かんでいた。

(真美のやつ余計なこと言いやがって……)

 俺は真美のことを睨みつけた。

 

「姫香ちゃん怖い~!翔が睨みつけてくる~!」


 真美は姫香の後ろに隠れる。

 はぁ、と俺はため息をつく。と同時に隣の歩が言う。


「俺も翔が酔ったらどうなるか気になるな~」

「お前もかよ」

「だって、気になるじゃんか。普段、冷静な翔がお酒を飲んだらどうなるのか!」

「歩もそう思うよね!これはもうこっそりと飲ませるしかないよね!」

「真美さん。翔君がいる前でそれを言ってはこっそりと飲ませることができませんよ」


 真美の天然に姫香がクスっと笑う。


「あっ!そうだった!翔、今のは聞かなかったことにして!」


 それは無理だろと、思いながら俺も笑みを溢した。

 いつどこでお酒を飲まされるか分からないから警戒しとかないとなと思いつつ、こんなほのぼのとした日常がいつまでも続けばいいなと俺は思った。

 桜並木を抜けると、俺たちは満開の桜を背に公園を後にした。


☆☆☆


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