6月17日(木) 18:00〜

 再び目を覚ました頃には夕方になっていた。

 部屋の中に氷室さんの姿はない・・・・・・。

 

「帰ったのか・・・・・・」


 急に1人になると寂しいもんだな・・・・・・。

 1人暮らしを始めて1年が経過するが、こういう時に1人っきりでいる寂しさを痛感するよな。

 さっきまで氷室さんがいてくれたから、尚更そう感じていた。


「贅沢は言えないよな・・・・・・」


 氷室さんには氷室さんの用事があるだろうし、学校を早退してまで来てくれたんだ。感謝しないとな。

 そう思って、俺は氷室さんに感謝の趣のメッセージを送った。

 すると、すぐに電話がかかってきた。


「もしもし」

『王野君。起きられたんですね』

「うん。今ちょうど目を覚ましたところ」

『どうですか?体調の方は?』

「うーん。まだ、少し体がだるいかな」

『そうですか。ちゃんと私が戻るまで安静にしていてくださいね?』

「え?」

『何を驚いてるんですか?もちろん今日は王野君の家にお泊まりするつもりですよ?』

「え?」


 驚きすぎて、全く同じリアクションを2回してしまった。


『え?しか言えなくなったのですか?』


 電話の向こうの氷室さんが可笑しそうにクスクスと笑っている。


『当たり前じゃないですか。風邪をひいてる王野君を残して1人家に帰るわけないじゃないですか。今は着替え取りに一旦家に帰るつもりですけどね』


 そっか・・・・・・戻ってきてくれるのか。

 なぜだか、そう聞いた瞬間、涙が零れ落ちた。


『仮に王野君がダメと言っても、私が風邪ひいた時、王野君は勝手にお泊まりしたんですから、私も勝手にお泊まりさせてもらいますからね?』

「・・・・・・」

『王野君・・・・・・もしかして、泣いてるのですか?』

「・・・・・・ありがと」


 泣いているのを誤魔化したくて、俺は氷室さんにお礼を言った。

 しかし、意味はなかったようだ。


『仕方ないですね〜。戻ったら、よしよし、してあげますから、楽しみにしててください』

「こ、子供扱いするな・・・・・・」

『うふふ、照れてるのですか?いつも助けてもらってるので、こんな時くらい思いっきり甘えてくれてもいいのですよ?』


 ダメだ・・・・・・。

 これ以上、氷室さんの真っ直ぐで甘い言葉を聞き続けてたら、下がる熱も下がらなくなる。

 

「もう切るからなっ!気をつけて来いよ!」

『あっ・・・・・・』


 俺はそう言って、電話を切った。

 電話を切った直後に、『なんで切るんですか!』というお怒りと『夕食何が食べたいですか?』というメッセージが届いた。

 俺は『胃に優しいもの』と返事をして、また目を瞑った。

 きっと、次目を覚ました時は氷室さんがいるだろうと思いながら。


☆☆☆

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