6月14日(月) 20:00〜

 午後8時。

 お風呂から上がって、勉強をしていると氷室さんから電話がかかってきた。


「もしもし」

『もしもし。こんばんは』

「お仕事お疲れさん」

『ありがとうございます』

「一昨日も働いて、今日も働いて、人気者は大変そうだな」

『まぁ、そうですね』 


 なんだか、氷室さんの声が元気ないように聞こえる。

 何かあったのだろうか・・・・・・。


「どうした?仕事で何かあったのか?」

『王野さんは、本当によく気付きますね』

「そりゃあ、いつもと声が違ったら分かるだろ」

『そんなに違いますか?』

「声に元気ないな」

『そんなことに気がつくなんて、王野さんは、よほど私のことが好きなのですね?』

「なっ!?何言ってんだよ!?」

『うふふ、驚きすぎです。ありがとうございます。王野さんのおかげで少し元気出ました』

「そ、そうか・・・・・・」


 心臓の音が半端ない・・・・・・。

 ドキドキ言って鳴り止まない。

 いきなり、好き、なんて言うなよな・・・・・・。


『ちょっとだけ、愚痴ってもいいですか?』

「あぁ」

『ありがとうございます。実は私・・・・・・モデル辞めようと思ってるんです』

「え・・・・・・」

『やっぱり、驚きますよね』

「そりゃあな。誰だって驚くだろ』

『ですよね』


 きっと何か辞めたくなった理由があるのだろう。そういえば、先日も似たようなこと言ってたな。

 もう、この映画に出る必要はないとかなんとかって。


「まぁ、氷室さんがそう決めたならいいんじゃないか」

『何も聞かないんですね・・・・・・』

「聞いてほしいなら聞くけど?」

『別に隠しておくようなことでもないんですけど、王野さん次第って言っておきます』

「なんだそれ」

『そのうち分かりますから』


 氷室さんはクスクスと笑った。

 いつもの氷室さんに戻ったかな。

 俺はホッと一安心した。


『そういえば、王野さん、何か私に聞きたいことがあったんですよね?』

「あ、あぁ、そうだったな」

『朝、何を聞こうとしてたんですか?』

「もし違ったら、違うって言ってくれていいんだけど・・・・・・」

『はい』

「俺たちって、昔、会ったことあるか?」

『・・・・・・』


 何その沈黙・・・・・・。

 怖いんだけど・・・・・・。

 数秒の沈黙ののち、氷室さんが口を開いた。


『あるんじゃないですか?』

「それって、つまりどっちなんだよ」

『どっちがいいですか?』

「なぁ、もしかして、俺のことからかってるか?」

『うふふ。バレてしまいましたか』

「からかってないで、本当のことを教えてくれ』

『そうですね。そろそろ、私も我慢できなくなってきてた頃ですし、いいですかね。心の準備はいいですか?』

「あぁ、大丈夫だ」

『そうですか。では・・・・・・。一緒にサッカーボール蹴れて楽しかったよ王野君』

「やっぱり、氷室さんは・・・・・・」

『お、おやすみさない!』


 そう言って、氷室さんは勢いよく電話を切った。

 さっきのって、つまりそういうことだよな・・・・・・。

 氷室さんが「ひろくん」で、「ひろくん」が氷室さんだったってことだよな。

 1番大事なとこを聞く前に氷室さんは電話を切ってしまった。

 

「そっか・・・・・・そうだったのか・・・・・・」


 こっちに帰って来てたんだな。

 そして、女の子だったのかよ・・・・・・。


「なんだ、もうとっくに会ってたんだな」


 俺はベッドに寝転がった。

 明日、氷室さんに会ったら「おかえり」と言おう。

 そう思って寝ようとしたら、氷室さんからメッセージが届いた。


☆☆☆

次回更新

6/24(木)9時!


ついに、氷室さんの正体が・・・・・・!?

この後の2人の展開にお楽しみに〜✨

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