6月15日(火) 6:00~『氷室さんと向かう学校』
昨日の夜、電話の後、氷室さんが送ってきたメッセージにより、俺は午前六時に氷室さんの住んでいるマンションの前で氷室さんが出てくるのを待っていた。
そのメッセージの内容が一緒に学校に行きたいというものだった。
氷室さんが「ひろくん」だということが分かって、俺はどんな顔をして会えばいいのだろうか。映画撮影をした時よりも緊張していた。
数分待っていると、氷室さんはやってきた。
「お待たせしました。おはようございます」
「お、おはよう」
やばい……直視できない。
見慣れたはずの制服姿の氷室さんのはずなのに、なんだか、いつも以上に可愛く思えた。
いや、いつも可愛いんだけどな!?
俺が一人そんな葛藤をしていると氷室さんがクスクスと笑われた。
「な、なんだよ?」
「いえ、朝から面白い顔をされているなと思いまして」
「バカにしてる?」
「してませんよ。可愛いなと思っただけです」
「やっぱりバカにしてるだろ」
俺はプイっとそっぽを向いた。
「ごめんなさい。機嫌直してください」
「別に怒ってるわけじゃないよ」
ただ、どんな顔をして会えばいいかわからなかったから、ちょうどよかったなんて言えないよな……。
「なら、こっち向いてくださいよ」
「それは、無理……」
「なんで?」
「何でもだ!?」
「それだと話ができないじゃん」
「できてるだろ」
「私は王野君の顔を見ながら話したいの!」
そう言って、頬をぷくっと膨らませた氷室さんが俺の正面に回り込んできた。
「やっと目が合いましたね」
少し前かがみになって、俺のことを見上げている氷室さん。
一度、そうだと思ってしまったら、そうとしか見えなくなってしまった。
今、俺の目の前にいる、真っ白な髪の毛と深紅の瞳を持っている女の子は、あの頃一緒にサッカーボールを一緒に蹴っていた男の子と同一人物にしか思えなくなていた。
「な、なぁ、1つ確かめてもいいか?」
「はい」
「本当に、氷室さんがあの頃一緒に遊んでた「ひろくん」なのか?」
「そうですよ」
氷室さんはなんの迷いもなく、即答してきた。
「そ、そうか」
「驚きましたか?」
「そりゃあ、驚くだろ……」
ずっと男の子だとおもっていたのが、まさかの女の子だったっていうのもそうだけど、まさかそれがずっと話してみたいと思っていた女の子だったなんて、どんな奇跡だよ……。
驚かない方が無理だろ……。
「私も知ったときは驚いたので、お相子ですね」
「氷室さんも驚いたんだ」
「当然ですよ。もう、一生会えないと思ってましたから」
「でも、会えたな……」
「そうですね。会えました……本当は少しだけ期待してたんですけどね」
「え?」
「学校、行きましょうか。送ってくれるんでしょ?」
「あ、あぁ、そうだな。てか、氷室さんが一緒に行きたいって言ったんだだろ」
氷室さんを自転車の荷台に乗せて、学校に向かった。
その間、氷室さんは俺にしがみついてきて、胸の感触がずっと背中にあった。
☆☆☆
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