6月15日(火) 12:00〜
「なんかさ、あの2人仲良くなってない?」
「俺も思った。なんか、雰囲気が今までと違う」
少し離れたところで『バカップル』が何かを言ってるような気がするが、それどころではなかった。
「ほら、王野君。遠慮せずに食べてください」
「いや、だからいいって」
氷室さんは卵焼きを箸で掴んで俺の口元に運んでくる。
今日も今日とて、学校に行く途中で買わせてもらったサンドイッチを食べていたら、それを見かねた氷室さんがこうやって自分のおかずを食べさせようとしてくるのだ。
俺はそれを懸命に回避していた。素直に食べればいいのだろうけど、あの2人の前では絶対に嫌だ。何を言われるか分かったもんじゃない。
「もしかして、あの2人付き合いだしたんじゃ・・・・・・」
「それなら、納得かも・・・・・・」
『バカップル』は『バカップル』でそんな俺たちの様子を見て盛り上がっていた。
しかも、ニヤニヤしながら見てくるから、その視線が鬱陶しい。
「どうしたのですか?恥ずかしいのですか?」
「当たり前だろ!あの2人がいるんだぞ!」
「じゃあ、いなかったら食べてくれるので?」
「そ、それは・・・・・・考える」
あの2人がいなかったら、正直食べたい・・・・・・。だって、氷室さんの弁当美味しそうなんだもん・・・・・・。
「なら、あの2人には退散してもらいましょう!」
「いくらなんでも、それは、可哀想だろ」
「そう、ですね・・・・・・」
氷室さんはしょんぼりとした顔で下を向いてしまった。
あーもう!仕方ないな・・・・・・。
俺は氷室さんが箸で持っていた卵焼きをパクっと食べた。
「王野君・・・・・・」
氷室さんは目を丸くして、俺のことを見ている。
「ん、美味いな」
「え、なんで・・・・・・どうして?」
「食べたらダメだったか?」
「いえ、そんなことないですけど・・・・・・さっきまで、あんなに嫌がってたのに」
「いいだろ。ただの気まぐれだ」
照れ隠しに俺は空を見上げた。
梅雨の時期の空は少し灰色がかっていた。
雨、降らないといいな・・・・・・。
なんてことを思っていたら、不意に2人の顔で視界が覆われた。
「なんだよ」
「いや〜。青春だな〜と思ってな」
「私たちに隠してることあるでしょ?」
2人はニヤニヤしている。
その顔がうるさい・・・・・・。
「ないもねぇよ」
「絶対に嘘だ〜」
「ないって・・・・・・」
絶対にこの2人には言わない。
まぁ、氷室さんから真美には伝わるかもしれないけどな・・・・・・。
2人が顔をどかすとポツポツと雨が降ってきた。
☆☆☆
次回更新6/25(金)
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