第251話 番外編『膝枕(大人編)』
ハニートーストを食べ終えた俺たちはあの時と同じように千本桜道を歩いていた。
ただし前回と違うところが一つある。
それは……。
「あ~桜が咲いてる~。綺麗~!」
そう。満開の桜が咲いているということだ。
今回はあの時より少し遅い時期だったので桜が咲いていた。
しかも満開の桜が。
「綺麗ですね~」
「ねぇねぇ! 写真撮って!」
満開の桜にテンションの上がった美姫が言った。
美姫は桜の木の下に移動して、早く写真を撮ってと言わんばかりにポーズを決めていた。
「姫香も行ってき来たら? 俺が写真撮るよ」
「それじゃあ、私も行ってきますね」
「あぁ」
姫香は美姫の隣に行くと同じようにポーズを作った。
「ここに来るって分かってたらちゃんとしたカメラを持ってきたのにな」
スマホしかないのが残念だった。
まぁ、最近のスマホは性能が良いから綺麗な写真は撮れるが、せっかくならカメラで撮りたかった。
「また来ればいいじゃないですか」
「そうだな」
俺は二人にスマホを向けた。
「それじゃあ、撮るぞ」
「うん!」
満面の笑みを浮かべている美姫と少し恥ずかしそうに笑っている姫香。
本当に二人とも可愛いな。
俺はシャッターを切って二人の姿をスマホに収めた。
「可愛く撮れた〜?」
「撮れたぞ」
「見せてー!」
今撮ったばかりの写真を美姫に見せた。
美姫は嬉しそうにその写真をしばらく眺めていた。
「美姫ちゃん。次はパパと撮ったら?」
そんな美姫に姫香が提案した。
「撮る~! パパ一緒に撮ろ!」
美姫に手を握られた俺は桜の木の下に移動した。
「撮りますよ~。笑ってくださいね」
姫香の掛け声で俺と美姫は笑った。
こんなに可愛い天使に手を握られて笑顔にならないわけがない。
「いい写真が撮れましたよ」
「見る~!」
姫香が美姫にスマホを手渡した。
さっきと同じように美姫は写真を嬉しそうな顔で眺めていた。
「美姫は写真が好きだよな」
「そうですね」
「自分が可愛いってこと分かってるんじゃないか?」
「そうかもしれませんね」
姫香はふふっと笑った。
「ママ! パパ! 次はママとパパが撮る番だよ!」
そう言って美姫は俺と姫香の背中を押した。
背中を押されるがままに俺たちは桜の木の下に立った。
「二人で写真を撮るのは久しぶりですね」
「そうだな。美姫が生まれてからは三人で撮ることが多かったもんな」
「そうですね」
俺のスマホを持って美姫は少し後ろに下がるとこっちに向かって手を振ってきた。
「ママ、パパ! 撮るよ~! 笑ってね~!」
美姫がそう言うと姫香が俺の腕に抱き着いてきた。
「たまにはいいですよね?」
「そうだな」
「それじゃあ、撮るよ~!」
久しぶりに姫香と恋人らしいことをしてからか、美姫が撮った写真に写った俺の顔は照れくさそうだった。
桜の木の下で撮影会をした後、家に帰ると歩き疲れたのか美姫はすぐに寝た。
「寝ちゃいましたね」
「寝たな」
「翔君は眠たくないですか?」
「眠たいって言ったら膝枕でもしてくれるのか?」
「覚えてましたか」
姫香はソファーに座っていた俺の隣に座った。
「覚えてるだろ」
忘れられるわけがなかった。
初めての膝枕の感触を。
「てっきり忘れているのかと思ってました。あれ以来、翔君一度も膝枕してほしいって言ってこなかったので」
「いや、だって……」
自分から言うのは恥ずかしいから遠慮していた。
遠慮していたら十数年が経っていた。
「久しぶりにやりますか? 膝枕」
そう言って姫香は自分の膝をポンポンと叩いた。
「遠慮しなくてもいいのですよ?」
「……分かったよ」
姫香から誘われれば断る理由もなく、俺は姫香の膝の上に久しぶりに寝転がった。
さすがに今の姫香はあの頃のように露出多めの服を家で着ていない。
とはいえ、後頭部に伝わる柔らかな感触は変わらない。
それに目の前の二つの山はあの頃よりも大きくこちら側からでは姫香の顔が見えない。
「膝枕されてると寝てしまいそうだな」
膝枕をされた瞬間、自然とあくびが出てしまった。
「寝てもいいですよ。美姫ちゃんも寝てますし、翔君が寝るなら私も寝ます。みんなでお昼寝しましょう」
「それなら、膝枕じゃない方がよくないか?」
「それはそうですね」
俺と姫香は笑い合った。
「でも、もう少しだけ姫香の膝枕を堪能してもいいか?」
「もちろんです。好きなだけ堪能してくださいな」
十数年ぶりの姫香の膝枕を堪能した後、俺たちは寝室に移動して美姫と三人で川の字になって昼寝をした。
☆☆☆
また書きたい話が見つかったら戻ってきます(笑)
クラスの有名モデルの氷姫をナンパから助けたら、好きオーラが半端ない!? 夜空 星龍 @kugaryuu
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